コモンセージはハーブの一種で、料理やお茶に使われるほか、芳香や薬効もある植物です。
日当たりと水はけの良い場所を好み、寒さにも強いので家庭菜園やプランターで育てることができます。
この記事では、コモンセージの育て方に関する基本的な知識と、実践的な栽培方法を紹介します。コモンセージを自分で育てて、美味しい料理やお茶を楽しみましょう。
コモンセージ栽培に適した環境づくり
地中海地域北部が原産のコモンセージは高温多湿の環境が苦手で、日当たりが良く水はけの良い場所が適しています。ジメジメした水はけの悪い場所では上手く育たないので注意してください。
用土づくり
土壌はよく排水されることが重要です。粘土質の土は避け、砂質または軽い土壌が望ましいです。水はけの悪い土壌では根腐れの原因になります。
水・肥料の与え方
コモンセージは乾燥に強いですが、生育期には定期的な水やりが必要です。土の表面が乾いたら水を与えますが、過剰な水やりは避けてください。
また、過剰な施肥は避けるべきです。生育初期に緩効性の肥料を施すか、植え付け前に有機物を土に混ぜ込む程度で十分です。セージは肥沃な土壌よりも、やや貧しい土壌でより良い香りを放つことがあります。
コモンセージの種まき時期と方法
コモンセージの種まきに適した時期は、春(3月~4月)と秋(9月~10月)です。真夏や梅雨の時期は高温や多湿で発芽率が低くなるので避けるのが無難です。
種まきの手順は以下のとおりです。
- 用土を鉢に入れて平らにし、表面を軽くたたいて固める。
- 種を3~4個ずつ、鉢の表面に均等に重ならないように蒔く。
- 種の上から薄く土をかぶせる。(厚くかぶせると発芽しにくくなるので注意)
- 霧吹きで水を与える。
- 土が乾燥しないように毎日水やりを続ける。
- 鉢を日当たりと風通しの良い場所に置く。
1~2週間程で発芽しますので、発芽したら間引きをして1鉢に1本だけ残し本葉が3枚ほどになったら定植します。(間引いた苗は別の鉢に移植することもできます)
なお、用土は水はけと通気性が良いものを選びましょう。赤玉土と腐葉土を6:3の割合で混ぜたものやハーブ用の培養土などがおすすめです。
地植え時期と方法
コモンセージは、鉢植えだけでなく庭や畑に地植えすることもできます。
地植えにすると、より自然な姿で育ち花壇やハーブガーデンのアクセントになります。
コモンセージの地植えに適した時期は、春(4月~5月頃)か秋(9月下旬~10月頃)です。真夏や梅雨の時期は、高温多湿で根腐れや病気のリスクが高まるので避けましょう。
地植えにする場合は、以下のとおり行います。
- 土壌の調整をする。
- 日当たりと風通しのよい場所を選ぶ。
- 植え付ける場所に穴を掘る。
- 苗の根を崩さずに穴に入れて土で覆う。
- 複数植える場合は株同士の間隔を20~30cm空けて苗を植える。
- 根元を軽く押さえて固定する。
- 植え付け後は鉢底から水が出るくらいたっぷりと水やりをする。
- その後は土の表面が乾いてきたら水やりをして管理する。
鉢植え・プランターで育てる方法
コモンセージは、鉢植えやプランターで育てることもできます。
鉢植えやプランターで育てる場合は、以下の点に注意してください。
鉢植え・プランターの選び方
根が深く張る植物なので、深めの鉢やプランターを選びましょう。鉢やプランターの底には、水はけの良い素材の鉢底石や鉢底ネットを敷いておくと根腐れを防ぐことができます。また、鉢やプランターの素材は、陶器やテラコッタなどの通気性の良いものがおすすめです。
土づくり
市販のハーブ用培養土や草花用培養土を使うことができますが、水はけが悪い場合は砂やパーライトを混ぜて改善しましょう。自分で土をブレンドする場合は、赤玉土と腐葉土とパーライトを6:3:1の割合で混ぜると良いです。また、土質が酸性の場合は、石灰や草木灰を混ぜて中和する必要があります。鉢植えやプランターに土を入れる前に緩効性肥料を適量混ぜておくと、栄養補給に役立ちます。
苗の植え付け方
苗を取り出す前に水に浸して根をほぐしておきます。苗を取り出したら、根元から5cmほど上の茎を切り落としておきましょう。株をコンパクトに保ち、枝分かれを促すことに繋がります。
植え付け時は、苗の株幅の2倍程度の大きさに穴を掘り、苗を穴に入れて土を戻し、根元を軽く押さえて固定します。複数の苗を植える場合は苗との間隔は30~40cm程度空けます。植え付け後はたっぷりと水やりをします。
植え替え時期と方法
コモンセージは、根が深く張る植物なので、鉢植えやプランターで育てる場合は、遥か秋に植え替えを行う必要があります。
植え替えをすることで根詰まりや栄養不足を防ぎ、健康な成長を促すことができます。
春に植え替える場合は新芽が出始める3~4月頃、秋に植え替える場合は花が終わった9~10月頃が良いでしょう。真夏や真冬は、暑さや寒さによって植物がストレスを受ける可能性が高いので、避けた方が無難です。
植え替えの方法は上記の「コモンセージを鉢植え・プランターで育てる方法」と同じですが、鉢植え・プランターのサイズ選びと、苗についている古い土や枯れた根を取り除く点はご注意ください。
剪定(切り戻し・摘心)の目的と方法・時期
コモンセージに必要な剪定には切り戻しと摘心があります、
それぞれの時期と目的、方法についてまとめました。
切り戻し | 摘心 | |
目的 | 傷んだ茎を取り除いたり、茎葉が繁って混み合っている部分を透かすように切って風通しを良くするために行う。 | 脇芽(腋芽、側芽)を出させたり、開花を促したり、一定の高さで止めたりするために行う。 |
時期 | 開花後や株の姿が乱れてきたら行います。適期は開花後6月~7月頃。 | 春か秋が適期。 |
方法 | 不要な枝や咲き終わった花穂をハサミで切り取ります。株全体を均等に切るように注意します。切る位置は葉の付け根や節の上などにします。 | 茎の先端にある頂芽を爪やハサミで摘み取ります。脇芽が出てきたら、必要に応じて再度摘心します。 |
耐寒性と冬越しの方法
コモンセージは地中海沿岸部原産のハーブで、耐寒性が強い植物です。
しかし、強い霜や雪に当たると葉が傷んだり落葉したりすることがあるため、冬越しには適切な対策が必要です。
地植えと鉢植えのケース別に冬越しの方法をまとめました。
冬越しの方法 | |
地植えの場合 | 地植えの場合は、降霜前に地上部を刈ります。茎の1/3程度を残して切り戻すと良いでしょう。刈り込んだ後は、霜よけをしておきます。例えば、枯れ草や落ち葉などを株元に敷き詰めるか、不織布やビニールなどで覆うようにします。ただし、ビニールは直接株に触れないようご注意ください。 |
鉢植えの場合 | 鉢植えの場合は、玄関先や軒下など霜の当たらない場所に移動します。また、鉢底から水が抜けるようにしておきます。水はけが悪いと根が凍ってしまう恐れがあるためです。鉢を高く持ち上げるか、砂利やスタイロフォームなどを敷いておくと良いでしょう |
上記の方法で冬越しができるでしょう。
春になったら、霜よけを外します。落葉していたとしても、茎が生きていれば新芽が出てきます。
その時期に鉢植えの場合は植え替え、地植えの場合は株分けを行って若返らせます。また、肥料を与えて成長を促すと元気に育てることができるでしょう。
北海道でコモンセージは栽培できるのか
耐寒性が強いコモンセージですが、北海道でも栽培は可能なのかと気になる方は多いと思いますが、栽培は可能です。
北海道では、冬に気温が氷点下になることが多く雪も降ります。このような環境では、コモンセージは凍死したり根腐れしたりする可能性が高くなるため、以下の方法によって冬越しをするのがおすすめです。
- 鉢植えの場合は鉢を室内や温室に移動させる。
- 地植えの場合は株元に落ち葉や枯草などを敷き詰めて保温する。(雪が降ったら株元に積もらないように払い除ける)
- 水やりは控えめにして管理する。
以上が北海道での冬越しに必要な対策です。
適切な管理をすれば、北海道でもコモンセージを育てることが可能です。特に特別な対策は必要ないので北海道でもコモンセージの栽培に挑戦してみてくださいね。
室内で育てる際の注意点
コモンセージは日当たりと風通しの良い場所を好む植物なので、室内で育てる場合は以下の点に注意しましょう。
注意点 | 補足 |
光 | 光が不足すると葉の色が悪くなったり、茎が伸びて弱くなったりします。室内で育てる場合は、南向きや西向きの窓辺など、直射日光が当たる場所に置きましょう。また、冬場は日照時間が短くなるので人工的に補光することも必要です。蛍光灯やLEDライトなどを使って朝から夕方まで約6時間程度照らしてあげると良いです。 |
気温と湿度 | 生育適温は15~20℃で、真夏や真冬の極端な温度変化に弱いため、室内で育てる場合は暖房や冷房の効きすぎに注意が必要です。また、多湿にも弱いので、カビや病気の予防のためにも定期的に換気を行いましょう。 |
水やりと肥料 | 乾燥に強い植物ではありますが、水切れには弱いです。室内で育てる場合は、土の表面が乾いたら水やりを行いましょう。水やりの量は少なめにして根元に直接水を与えます。葉に水がかかるとカビや病気の原因になるので避けましょう。肥料は春から秋にかけて月に1回程度与えれば十分で、液体肥料や緩効性肥料などを適量与えるようにします。 |
剪定と摘心 | 室内で育てる場合は特に、定期的に切り戻しと摘芯を行いましょう。 |
夏越しの方法
暖地や温暖地では特に、夏場は梅雨や台風などで多湿になることが多くあります。
このような環境ではコモンセージは根腐れや病気にかかりやすくなるので、暖地や温暖地でコモンセージを夏越しさせるには、以下の方法がおすすめです。
- 鉢植えの場合は、鉢を明るい日陰や半日陰に移動させる。(直射日光が当たると葉が焼けたり乾燥したりする可能性がある)
- 地植えの場合は、午後から日陰になるような場所に植えるほか、株元に落ち葉や枯草などを敷き詰めて保湿する。
- 水やりは土が乾いたらたっぷりと行いますが、水はけの悪い場所では水溜りを作らないように注意する。
- 肥料は控えめにする。(液体肥料を定期的に与える程度で十分)
- 花が終わった花茎は早めに切り取るほか、全体をバッサリと切り戻すことも有効。
- 病気や害虫にかかった場合は、早めに処理する。
以上のように、暖地や温暖地でコモンセージを夏越しさせる場合は、高温多湿対策が重要です。
しかし、適切な管理をすれば、暖地や温暖地でもコモンセージを育てることが可能ですので、暖地や温暖地でも楽しく栽培していただきたいと思います。
コモンセージの増やし方
コモンセージは、種まき以外にも次の3つの方法で増やすことができます。
- 株分け
- 挿し木
- 葉挿し
増やし方を理解すれば、自宅でもたくさんのコモンセージを育てられます。増やし方に適した時期は、植え付けや植え替えを行う時期と同じく、春から初夏にかけてか、秋に行うのが良いでしょう。
それぞれの方法による増やし方の詳細は次のとおりです。
株分けで増やす方法
株分けは、大株になったコモンセージを根とともに分けて複数の株を得る方法です。
株を増やすだけでなく、植物の老化を防ぎ若返りさせる効果もあります。
株分けの手順は以下の通りです。
- 鉢植えの場合は鉢から植物を取り出す。
- 地植えの場合は株の周りをスコップなどで掘る。
- 根球を手で崩しながら、根が絡まっていない部分で株を分ける。
- 根が強く絡まっている場合は、ナイフなどで切り離す。
- 分けた株を新しい鉢や庭に植え付ける。
- 植え付け後は、土をしっかりと固めて水やりをする。
挿し木で増やす方法
挿し木は、若い枝を切り取って発根させる方法です。
挿し木には水挿しと土挿しがあり、それぞれの手順は以下のとおりです。
水挿し | 若い枝を10~15cmほど切り取り、水に浸す部分の葉は取り除きます。水に挿しておき発根を待ちます。 |
土挿し | 若い枝を10~15cmほど切り取り、上から2~3枚の葉を残して切り落とします。切り口を発根促進剤につけて、湿らせた赤玉土やバーミキュライトなどに挿し発根を待ちます。 |
水挿しも土挿しも、風通しがよく日当たりのよい場所に置きます。2~3週間で発根するので、十分に根が出たら鉢や庭に植え替えます。
葉挿しで増やす方法
葉挿しは、葉を切り取って発根させる方法です。葉挿しは、挿し木よりも簡単に増やすことができます。
葉挿しの手順は以下のとおりです。
- 健康な葉を切り取る。
- 葉柄がある場合は、葉柄も一緒に切り取る。
- 切り口を発根促進剤につけて、湿らせた赤玉土やバーミキュライトなどに挿す。
- 風通しがよく日当たりのよい場所に置く。
2~3週間で発根するので、十分に根が出たら鉢や庭に植え替えます。
コモンセージの育て方に関するQ&A
ここでは、コモンセージの育て方に関するQ&A(質問&回答)を紹介します。
- 冬に枯れるのは問題ない?
- 木質化したらどうしたら良い?
- 大きさ・背丈はどれくらい?
- コモンセージは多年草ですか?
上記の問いについて詳しく回答していますので、参考にしてみてくださいね。
冬に枯れるのは問題ない?
コモンセージは冬になると枯れてしまうことがありますが、これは問題ないことがほとんどです。
理由としては、コモンセージが枯れたように見えても、春になれば根元から新しい芽が出てくることが多いからです。
ただし、これは適切に冬越しをした場合に限るので、冬越しに失敗した場合は根から枯れて芽吹くことはないのでご注意ください。
木質化したらどうしたら良い?
コモンセージは長く育てると茎が硬くなって木質化することがあります。木質化したコモンセージは、花や葉の量が減り、香りや味も落ちてしまいます。
木質化してしまった場合は、剪定するか挿し木するかの対応をすると良いです。
剪定する場合は、春から夏にかけて花が咲き終わった後に、木質化した部分を切り落とします。切り口は斜めにして水分が溜まらないようにするのがポイントです。
挿し木する場合は、以下の手順で行います。
- 春から夏にかけて、新芽が出たばかりの部分を10cm程度切り取る。
- 切り口の下の方の葉を取り除き、上の方の葉は半分に切る。
- 挿し木用の土を用意する。(赤玉土と腐葉土を半々に混ぜたものがおすすめです)
- 挿し木用の鉢に土を入れて水を与える。
- 土が湿ったら挿し木を鉢に挿す。
- 鉢を日陰に置き、乾燥しないように水やりをする。
根が出るまで2週間ほどかかりますが、根が出たら日当たりの良い場所に移します。
以上のように、コモンセージが木質化したら剪定するか挿し木するかで対処できます。剪定や挿し木をすることで、コモンセージを若返らせて美しく育てることができます。
大きさ・背丈はどれくらい?
コモンセージの大きさ・背丈は、品種によって異なりますが、一般的には30~70cm程度になります。横幅は20~80cm程度に広がります。
日当たりと水はけの良い場所を好み、高温多湿や強い霜に弱いです。肥料は控えめに与え、株分けや挿し芽で増やすことができます。
コモンセージは葉色や斑入りの品種が多く、カラーリーフとしても楽しめます。 代表的な品種には、紫葉のパープルセージ、黄色の覆輪が入るゴールデンセージ、白と紫の斑入り葉のトリコロールセージなどがあります。
コモンセージは多年草ですか?
コモンセージは多年草です。しかし、比較的短命な多年草であり数年に一度株分けを行って若返らせる必要があります。
株分けの方法は「コモンセージの増やし方」の項でご紹介しているので参考にしてみてくださいね。
まとめ:コモンセージの育て方のポイント
この記事では、コモンセージの育て方について、鉢植え・地植えでの栽培や摘心のやり方などを紹介しました。
コモンセージは適切な水やりや日当たり、土壌などを管理すれば鉢植えでも地植えでも元気に育ちます。
また、摘心をすることで枝分かれを促し、より茂りやすく美しい姿にすることができます。コモンセージは、香りだけでなく、花も楽しめる素敵な植物です。ぜひ自宅で育ててみてくださいね。