フレンチタラゴン(エストラゴン)は、アニスのような甘い香りが特徴のハーブです。
暑さにも寒さにも強いため、正しい育て方をすることで問題なく育てることができるはずです。
また、フレンチタラゴンは種ができない不稔性の植物なので、増やす際には挿し木や株分けを行う必要があります。
フレンチタラゴンの育て方のコツ
フレンチタラゴンを適切に育てるための環境づくりと育て方のコツをまとめます。
日当たりと栽培環境
日当たりの良い場所を好みますが、夏の蒸れに弱いので半日陰に移すことも必要です。
冬は寒さに強く丈夫なので、明るい日陰でもよく育ちます。
水やりのポイント
土の表面が乾いたらしっかりと行います。保水力のある土に植えていないのであれば、水やりの回数は多くても構いません。
肥料の適切な与え方
春から梅雨前 にかけての生育期間に液肥を与えます。真夏は弱るので肥料をやらないようにしましょう。
液肥は ハイポネックスなどがおすすめです。
適した用土の選び方
根腐れを起こしやすいため、水はけには要注意です。天然鉱物のゼオライトがオススメです。
赤玉は崩れた後に保水力が増すため避けるようにしましょう。
鉢植えならばハーブ用の土で植えると良いです。また、パーライトやゼオライトなどを混ぜて透水性を高めると根腐れを防ぐことができます。
鉢植えの選び方
鉢は素焼きの深鉢を選ぶのが最適です。
大きさは5~7号程度、プランターの場合は20リットル程度の大きさのものを選ぶと良いでしょう。
植え替えの方法
フレンチタラゴンは 2年に1回 、春か秋 に植え替えを行います。
植え替えの際には、株分けをして株を更新することが大切です。株をそのまま育てていると香りが鈍くなるため、株分けで若返らせることで香りを良くします。
植え替えの方法は以下のとおりです。
- スコップで株を根ごと掘り起こす。
- はさみや手で株を適当な大きさに切り分ける。
- 根が長くてクルクルと巻いている ので、切り口から少し離れた部分を切る。
- 土に穴を開けて切り分けた株を植える。
- 長い根は丸めながら穴に入れる。
- やさしく土をかけて、しっかりと水やりを行う。
植え替え後は日当たりの良い場所 に置きますが、 真夏は弱るので、半日陰に移すか、日よけをしてあげましょう。
水やりは表土が乾いたら 行いますが、 水切れや湿度の高さ に注意してください。また、土は水はけの良い土を使うことが大切です。
フレンチタラゴンの花が咲く時期と香り・花言葉
フレンチタラゴンは基本的に花が咲かないハーブです。
まれに黄色のつぼみができることがありますが開花することはほとんどなく、 結実することもない ため種ができません。
フレンチタラゴンの花が咲かない理由は、雌しべが退化しているためだと言われています。また、フレンチタラゴンはロシアや中央アジアが原産で寒さに強いので、日本の気候では 開花に必要な温度差が得られないという説もあります。
フレンチタラゴンの花言葉は、「魔法の竜」や「食通のハーブ」です。これは、フレンチタラゴンの別名が「エストラゴン」で、フランス語で「小さな竜」を意味することに由来します。
剪定・切り戻しする方法と目的・時期
フレンチタラゴンは切り戻し剪定という方法で、枝先を切って形を整えることが必要です。
切り戻し剪定の目的としては、
- 植物の見た目を整える。
- 新芽や花の生長を促す。
- 日当たりや風通しをよくして病害虫の発生を予防する。
こうしたことが挙げられます。
フレンチタラゴンの切り戻し剪定の時期は、開花が終わった直後です。多くの場合、 5月中旬から6月にかけて行いますが、この時期に切り戻すことで秋に再び花を咲かせる ことができます。
具体的な剪定の手順は以下のとおりです。
切り戻しの手順 | 目的・ポイント |
剪定ばさみを消毒液に浸して消毒する | 病原菌や害虫の感染を防ぐ ために行います。 |
枝先から全体の3分の1くらいの長さを切り取る | 枝が上に伸びすぎている場合はもう少し深く切っても構いません。切る位置は、枝の外側に付いている 外芽のすぐ上で切る のがポイントです。 |
切り口に癒合剤を塗って保護する | 乾燥や病原菌の侵入を防ぐ役割を果たします。 |
夏越しは根腐れに注意する
フレンチタラゴンは耐暑性が強いですが多湿が苦手なハーブなので、水のやりすぎや多雨で根腐れを起こしやすいので注意が必要です。
根腐れを防ぐためには、以下の点に気をつけましょう。
水やりは乾燥気味に行う | 水のやりすぎや多雨は根腐れの原因になります。 |
土は水はけの良いものを使う | 天然鉱物のゼオライトがおすすめです。赤玉土は崩れて保水力が上がるので避けましょう。 |
耐寒性と冬越しの方法
フレンチタラゴンは耐寒性が強いハーブで、-28℃前後から-35℃まで耐えられると言われています。
冬の間は地上部が完全に枯れてしまうため、一見すると枯れたように感じられますが心配は不要です。春になると新芽が芽吹いてきます。
雪の下で冬を越す雪国の冬でも、春になれば新芽が出てくるでしょう。
フレンチタラゴンの種まきについて
前述したとおり、フレンチタラゴン(エストラゴン)は種まきで増やすことができません。
フレンチタラゴンは不稔性で、花が咲いても種ができない からです。
フレンチタラゴンを増やすには、挿し木や株分けという方法を使います。挿し木は、芽が出ている時期に茎を切り取って土に挿すことで新しい株を作ります。
株分けは、根ごと掘り起こして小さく分けて植えることで複数の株に増やします。どちらの方法も春か秋に行うのがおすすめです。(具体的な方法は後述します)
フレンチタラゴンの増やし方
フレンチタラゴンを増やすには、次の2通りの方法が一般的です。
- 挿し木(挿し芽)で増やす方法
- 株分けで増やす方法
それぞれの方法について、詳しくお伝えしていきます。
挿し木(挿し芽)で増やす方法と時期
フレンチタラゴンを挿し木(挿し芽)で増やすのは真夏を避けた冬以外であればいつでもできます。
適しているのは初夏あたりに挿し木をして、しっかりと根が張った状態で冬を迎えるのが望ましいでしょう。
挿し木の方法は以下のとおりです。
- 春か秋 に、10cm程度の芽をカットする
- 下葉を取る
- 水揚げする。(切り取った穂先を水に1~2時間ほどつける)
- 棒で土に穴を空け、挿し穂を入れる
- 軽く土を固める
およそ2~3週間で発根しますので、植え替えをして増やしていけます。
株分けで増やす方法と時期
フレンチタラゴンを株分けで増やすのに適した時期は春か秋です。
手順は以下のとおりです。
- フレンチタラゴンの根ごと掘り起こす
- はさみや手で適当な大きさに切り分ける
- 日当たりと風通しの良い場所 に植える
- たっぷりと水を与える
株は古くなると香りが薄れてくるので、株分けで株の更新をして香りを持続させると良いでしょう。
頻度としては1~2年おきくらいに行うのが望ましいです。
収穫時期と方法
フレンチタラゴンは葉が茂り出す5月から7月、9月~10月が収穫の適した季節です。花が咲く直前が最も香りが高いと言われますが、日本の気候では咲かないことがほとんどなので、7月から8月に収穫するのが目安です。
朝早くに収穫すると香りが強いので、可能な限り早い時間帯に収穫すると良いでしょう。
収穫の方法は簡単で、根本から5cm程度のところで下葉を残して葉のついた茎ごと切り取るだけです。
摘心も兼ねることで脇芽が発生して枝葉が増えるので、収穫量を増やすこともできます。
フレンチタラゴンの育て方に関するQ&A
ここでは、フレンチタラゴンの育て方に関するQ&A(質問&回答)を紹介します。
- 枯れる原因と対策は?
- ロシアンタラゴンの違いは?
- ハイブリッド・フレンチタラゴンとの違いは?
- ハーブとしてのタラゴンはフレンチタラゴンを指す?
上記の問いについて詳しく回答していますので、参考にしてみてくださいね。
枯れる原因と対策は?
フレンチタラゴンが枯れる原因としては、水やりのしすぎや土の保水力が高すぎることが挙げられます。また、日当たりが悪い場所や乾燥しすぎる場所も避ける必要があります。
フレンチタラゴンの生命力は強く育てやすい植物なので、栽培に適した基本的な条件を満たせばそれほど難しいことはなく栽培できるでしょう。
ロシアンタラゴンの違いは?
フランチタラゴンとロシアンタラゴンは、同じキク科ヨモギ属の多年草ですが、原産地や香り、形態などに違いがあります。
フレンチタラゴン | ロシアンタラゴン | |
原産 | 中央アジアからシベリア、ヨーロッパ東部 | 北アメリカやヨーロッパ北部、シベリア |
草丈 | 30cm~80cmほど | 120~150cmほど |
主な特徴 | 葉は細長く花はほとんど咲かず、種はできない | 葉は広く黄色い花を咲かせて種をつける。繁殖力が旺盛で栽培も容易 |
主な用途 | アニスに似た甘い香りで、料理によく使われる | 葉には芳香があり鶏肉や豚肉、卵料理などに使われるほか、酢やドレッシングにも用いられる |
ハイブリッド・フレンチタラゴンとの違いは?
ハイブリッド・フレンチタラゴンとは、フレンチタラゴンとロシアンタラゴンの交配種です。
フレンチタラゴンに似た香りと風味を持ちますが、ロシアンタラゴンよりも強い生育力を持ちます。
また、 耐寒性も高く日本の気候にも適応しやすいです特徴があります。
しかし、フレンチタラゴンほどの香りや風味はなく 、品質が安定しない という欠点もあります。
ハーブとしてのタラゴンはフレンチタラゴンを指す?
タラゴン(エストラゴン)はフランス料理に欠かせない香り高いハーブです。しかし、タラゴンには フレンチタラゴン と ロシアンタラゴン の2種類があり、その特徴や風味は大きく異なります。
フレンチタラゴンは、細長い光沢のある葉に甘く爽やかな香りがあり、料理の臭み消しや風味付けに使われます。ロシア原産で、種ができないため挿し木や株分けで増やします。
一方のロシアンタラゴンは、葉が広くてざらついた感じで、香りや風味が弱くほとんどありません。ロシアや西アジア原産で、種ができるため種まきで増やします。
このように、タラゴンという名前でも全く違う植物で、ハーブとしてのタラゴンはフレンチタラゴンを指すことがほとんどです。ちなみに、タラゴンはエストラゴンとも呼ばれることがありますが、この場合はフレンチタラゴンのことを指します。
まとめ:フレンチタラゴンの育て方のポイント
フレンチタラゴンは、香り高く美味しいハーブですが、種ができないので苗植えや挿し木で増やす必要があります。
苗植えの場合は、排水が良く透水性の高い土に植えて、日当たりの良い場所に置きます。水やりは表土が乾いたら行い、冬は土を覆って保護します。
挿し木の場合は、初夏に新芽が出た枝を切って水に挿し、根が出たら鉢に植え替えます。日当たりと水やりは苗植えと同じです。
フレンチタラゴンを育てることで、自分で収穫した新鮮なハーブを料理に使うことができます。ぜひ挑戦してみてください。