キンセンカ(金盞花)はキク科キンセンカ属の一年草または多年草で、地中海沿岸が原産地です。
「カレンデュラ」「ポットマリーゴールド」とも呼ばれることがあり、黄金色の盞のような花を長い花期に咲かせ、太陽に反応し、朝になると開き夕方に閉じる性質があります。
栽培方法は難しいこともなく、食用や薬用などハーブとしての側面もあることで、自宅で育ててみたいという方もきっと多いでしょう。
この記事では、キンセンカ栽培について種まきから収穫までをまとめていますが、中でも尋ねられることが多い種の取り方や耐寒性についても詳しくお伝えしているので、参考にしてみてくださいね。
キンセンカ栽培に適した環境づくり
種まきを行ったらキンセンカ栽培に適した環境づくりをしていきましょう。
キンセンカは、日当たりと風通しのよい場所で育てることが大切です。
環境づくりのポイントを以下にまとめました。
用土づくり | 有機質に富む弱アルカリ性のものが適しており、酸性土壌を嫌います。鉢植えの場合は一般の草花用培養土を使うか、赤玉土と腐葉土を混ぜたものを用います。植えつける前に、苦土石灰や堆肥や緩効性肥料などを元肥として施しておきます。 |
水やり | 土が乾いたらたっぷりと行います。乾燥には比較的強いですが、過湿には弱く根腐れしやすくなります。花壇では、根が張ったら水やりはほとんど必要ありません。 |
肥料 | 鉢植えでは月に1回ぐらい液体肥料を与えます。花壇では、植えつけ時に施した元肥で十分ですが、花が咲き始めたら追肥をするとよいでしょう。 |
種まき時期と方法
キンセンカの種まきの時期は地域や品種によって異なりますが、一般的には9月~11月の間が適しています。発芽適温は15~20℃です。
ただし、北海道などの寒冷地では冬の寒さに耐えられないため、春に種まきをする方が良いでしょう。
種まきの方法は、以下のとおりです。
- トレーなどに草花用の培養土を入れて表面を平らにする。
- 種をまんべんなく蒔く。
- 種は軽く土で覆う程度で深く埋めないようにする。
- 水やりをして土を湿らせる。
- 水はけの良い場所に置き乾燥しないように管理する。
- 約2週間ほどすると発芽する。
- 発芽したら日当たりの良い場所に移す。
- 本葉が3枚ほどになったらポットに移植する。(株間は10cmほど空ける)
ポットに移植した後は苗と同じように育てます。
鉢植え・プランターで育てる方法
キンセンカは、地植えだけでなく鉢植えやプランターでも楽しむことができます。鉢植えやプランターで育てる場合は、以下の点に注意しましょう。
用土 | 水はけと水持ちのバランスがよく、弱アルカリ性のものを選びます。市販の草花用培養土を使うと便利です。苦土石灰を混ぜると酸性を中和することができます |
鉢・プランター選び | 65cm程度のものに4~6株の苗を植えるのが良いでしょう。(株間は20cmほど空けます) |
植え付け時期 | 秋頃(9月~11月)が適しています。寒地では春に植え付けます。 |
水やり | 土の表面が乾いたらたっぷりと行います。夏は1日に1回、冬は2~3日に1回程度が目安です。手で土を触ってみて判断しましょう |
肥料 | 植え付け前に緩効性肥料を混ぜ込んでおきます。窒素分の多い肥料は避けましょう。植え付け後は、生育期(10月~4月)に液肥を10日に1回与えます。 |
病害虫 | ヨトウムシやアブラムシなどがつくことがあるので、早めに駆除しましょう。ウドンコ病や炭そ病も発生する可能性があるのでご注意ください。 |
植え替え時期と方法
鉢植えやプランターで育てる場合、数年に一度は植え替えを行うとより元気に咲きます。
植え替えを行う時期は、秋頃(9月~11月)が適していますが、寒地では春に植え替えます。
なお、植え替える前に、キンセンカの根元を少し乾かしておくこと、根が張りすぎている場合は根切りバサミで切り詰めるのがポイントです。
植え替えの方法は、以下のとおりです。
- 元のものより一回り大きい鉢やプランターを用意する。
- 鉢底に鉢底網を敷き、その上に軽石や鹿沼土などの排水材を敷く。
- 新しい用土を用意する。
- 苦土石灰を混ぜて酸性を中和させる。
- 鉢やプランターに用土を入れる。
- キンセンカを植え付けて、根元から1cmほど高くなるように土を盛る。
- たっぷりと水やりをする。
その後は、土の表面が乾いたら水やりを行って管理していきます。
キンセンカの花が咲く時期と香り・花言葉
キンセンカは黄色やオレンジなどの鮮やかな花を咲かせる一年草です。開花期は12月~6月と長く、冬から春にかけて楽しむことができます。
花は日の光を浴びて開き、夜になると閉じる性質があります。香りはほとんどありませんが、花びらは食用にもなります。
キンセンカの花言葉は、「別れの悲しみ」「悲嘆」「寂しさ」「失望」です。これは、ギリシャ神話のアポロンとレウトコエ王女の悲恋に由来しています。
また、キリスト教では黄色い花は迫害者の象徴とされることから、否定的な意味合いが強くなっています。明るい色合いの花ですが、裏腹に悲しい感情を表現する花となっています。
花がら摘みのやり方
花がら摘みとは、咲き終わった花を取り除く作業のことです。花がら摘みを行う理由は、次のようなものがあります。
- 新しい花の発育を促す
- 病気やカビの予防をする
- 見た目を美しくする
花がら摘みのやり方は、基本的にはハサミで切り取る方法と手で抜き取る方法があります。ハサミで切り取る場合は花茎の根元から切ります。手で抜き取る場合は、茎がやわらかい植物に限ります。
どちらの場合も、種や実ができる部分から取り除くことが大切です。
花がら摘みのタイミングは、咲いた花が色あせたり、花びらが丸まったりしたときです。水やり後や気温が適度なときに行うと、植物に負担をかけずに済みます。
花がら摘みを定期的に行うことで、植物の生育を促し美しい花を長く楽しむことができます。
キンセンカの切り花の育て方
キンセンカは春に黄色やオレンジのキラキラとした花を咲かせる一年草です。切り花としても人気があり、花瓶に活けると部屋を明るく彩ります。
切り花にするときは、花が完全に開いた状態で切り取ります。花が閉じているときや、花びらが縮れているときは避けます。
キンセンカの切り花の育て方は、以下のポイントに注意して行います。
すぐに水に浸ける | 切り取ったらすぐに水に浸けます。水切れを防ぐために、茎の先端を斜めに切り落とし葉やつぼみを取り除きます。 |
水の量 | 水の量は茎の半分くらいまで入れます。水は常温で、水道水でも問題ありません。 |
水の取り換え | 水は毎日取り替えます。その際に茎の先端も少し切り落として新鮮な状態を保ちます。 |
花がら摘み | 花がらはこまめに摘み取ります。花びらが散ってしまったらガクごと切り取ります。 |
キンセンカの切り花は、上記の方法で管理すれば約1週間くらい持ちます。色鮮やかな花を長く楽しみましょう。
室内での育て方
キンセンカを室内で育てる場合は、以下のポイントに注意して行います。
置き場所 | 日当たりと風通しの良い場所に置きます。レースカーテン越しの窓際が適しています。直射日光や暖房器具の近くは避けましょう。 |
水やり | 土が乾いたらたっぷりと水やりをします。夏場であれば1日1回が目安です。 |
肥料 | 鉢植えは10日に1度、液体肥料を与えます。家庭菜園用や野菜用の肥料を使うと安心です。 |
花がら摘み | 花がらはこまめに摘み取ります。花びらが散ってしまったらガクごと切り取ります。 |
切り戻し | 花が終わったら、全体の三分の一から半分程度に切り戻しをします。脇枝が生長して花芽がたくさんある株になります。 |
キンセンカは上記の方法で管理すれば冬から春まで長く楽しめます。色鮮やかな花を室内で咲かせましょう。
剪定・切り戻し・摘心する方法と目的・時期
キンセンカは、基本的には剪定を必要としない植物です。
ただ、茎葉が混み合うようになった場合は、うどんこ病にかかりやすくなってしまうので間引き剪定を行いましょう。
切り戻しは、植物の成長を促してより多くの花を咲かせることを目的に行いますが、カレンデュラは、春になってから草丈を3分の1から半分ほど切り戻すと花芽が多く付きます。
また、摘心しておくと脇芽がでて花数が増えます。摘心で花数を増やしたい場合は、花が咲く前(蕾がつかない段階)に茎の先端を切っておきましょう。
夏越しはできない
キンセンカは、冬から春にかけて咲く一年草です。
夏になると暑さや日差しに弱くなり、花付きも悪くなるため、夏越しはできません。
花が終わったら株を抜いて処分しましょう。
耐寒性と冬越しの方法
キンセンカは寒さに強い一年草です。最低温度は-15℃まで耐えられると言われており、地植えであっても特別な冬越しの必要はありません 。
ただし、雪が降る地域では雪が重くなって株が倒れたり折れたりすることがあるので注意が必要です。雪が降る前に、株を軽く切り戻しておくと良いでしょう。
鉢植えの場合は、日当たりと風通しの良い場所に置きましょう。鉢土が凍らないように、鉢底に砂利や発泡スチロールなどを敷いておくと良いです。
また、鉢を複数並べて密集させると、互いに保温効果があります。水やりは、土が乾いたら少量ずつ与える程度で十分です。肥料は与えないでください。
キンセンカは、冬から春にかけて咲く花です 。12月ごろから開花し始め、3月~5月が最盛期です。花が終わったら、花がらを摘み取って種をつけないようにしましょう。これで長くきれいに咲かせることができます。
キンセンカはこぼれ種でも増える
キンセンカはこぼれ種でも増えていきます。
花が終わった後に種ができるので、それらが地面に落ちて、次の年に発芽することがあります。
ただし、こぼれ種で増やす場合は発芽率が低いこともありますので、確実に増やしたい場合は種を採取して蒔くことをお勧めします
挿し木や挿し芽では増やせない?
キンセンカは挿し木や挿し芽で増やすことはできません。
キンセンカを増やすには、上に記載したとおり種で増やすしかありません。
ヤフー知恵袋でもキンセンカを挿し木で増やす方法に関汁質問が挙げられていて、挿し木の方法が掲載されているというサイトのURLが掲載されていますが、現在のところリンクページは削除されています。
収穫時期と方法
キンセンカは観賞用として植えられるほか、花は薬用や染料としても利用されています。また、ヨーロッパではハーブやエディブルフラワーとして用いられます。
花にはサポニン(calendulaglycoside A-C)が含まれており、利尿、発汗、瀉下、止血、胆汁分泌促進、通経、芳香性健胃作用があります。また、結膜炎に目薬として用いられることもあります。
花は開花したらすぐに切り取っても良いです。収穫時期は品種や栽培環境によって異なりますが、一般的には3月から5月頃です。
収穫方法は簡単で、花が開き始めたら茎の下部からハサミで切り取るだけで完了です。
なお、カレンデュラのハーブティーの効果や作り方についてはこちらのページで詳しくお伝えしています。
キンセンカの育て方に関するQ&A
ここでは、キンセンカの育て方に関するQ&A(質問&回答)を紹介します。
- キンセンカの種はどれ?
- 種の取り方と種取り時期は?
- 多年草ですか?
- カレンデュラのパワーデイジーや冬知らずの育て方も同じで良い?
- キンセンカのスノープリンセスの育て方も同じ?
- アフリカキンセンカの育て方も同じ?
- 花はいつまで咲く?
上記の問いについて詳しく回答していますので、参考にしてみてくださいね。
キンセンカの種はどれ?
キンセンカは花がしぼんで茶色くなった後に種をつけます。
花の中心部分にある黒くてひょろっとした形をしているのが種です。
種の取り方と種取り時期は?
キンセンカの種は、花の中心部分にあるのでピンセットなどを使うと取りやすいです。
種を摘み取るタイミングは、花がしぼんで茶色くなってからゆすって落ちるまでの間です。ゆすって落ちるときに茶色くなっていない種もあるかもしれませんが、それらは発芽率が低いので破棄します。また、緑色の種も同様に発芽率は低いです。
摘み取った種は、新聞紙などに包んで乾燥させた後、空き瓶などに入れて冷蔵庫で保存します。保存するときには乾燥剤を一緒に入れておくと湿気を防げます。保存期間は2~3年ですが、5年以上保存しても発芽することがあります。
多年草ですか?
キンセンカはキク科キンセンカ属 (カレンデュラ属)の植物で、一年草もしくは短命多年草です。一年草とは、種から発芽して花を咲かせ、種を残して枯れるまでのサイクルが一年以内で終わる植物のことです。多年草とは、一度根付いたら何年も生き続ける植物のことです。
キンセンカの中でも、主に栽培されるのはトウキンセンカとも呼ばれるカレンデュラ・オフィシナリス種 (Calendula officinalis)です。この種は一年草で、秋に種をまくと冬から春にかけて花を咲かせますが、夏には枯れてしまいます。しかし、こぼれ種で増えることがあり翌年も花を咲かせることがあります。
また、「冬知らず」という品種はホンキンセンカの和名を持つカレンデュラ・アルベンシス種 (C. arvensis)の一品種で、寒さに強く冬中花を咲かせ続けることから、冬花壇の定番植物として古くから栽培されています。この品種は短命多年草で、数年間生き続けることがあります。
つまり、キンセンカは一年草もしくは短命多年草であり、品種によって耐寒性や寿命が異なります。購入する際には品種名や特徴を確認しておくと良いでしょう。
カレンデュラのパワーデイジーや冬知らずの特徴は?
カレンデュラの「パワーデイジー」は、春夏秋冬途切れることなく花が咲き続ける品種です。
耐寒性と耐暑性ともに優れているほか、うどんこ病に強く改良されています。
花付きもよく、1株に100輪以上の花を同時に咲かせます。
一方の「冬知らず」は、開花期は11月~6月と(積雪地域でなければ)名前の通り冬の寒い中でも濃い黄色の花を咲かせ続ける特徴があります。
冬期は草丈が低めですが2月末くらいから成長速度が高まり50㎝あたりの草丈まで育ちます。陽当たりと風通りよく排水の良い環境で育てると良く育ちます。
キンセンカのスノープリンセス特徴は?
「スノープリンセス」は、キンセンカでは初めてのホワイトカラーの品種です。草丈は30~50cmで切り花にも向きます。
耐寒性があり、春先から秋までと長期間に渡り花が咲き続けます。
アフリカキンセンカの特徴は?
アフリカキンセンカは、草丈が20cm〜50cm程になるキク科の一年草で日本では3月〜5月頃に開花します。
花は品種により異なりますが茎先に径3cm〜6cm程の頭状花序を出します。
花色は黄色〜オレンジ色で花弁基部は紫色を帯びます。また、白やピンク色の花色品種もあります。
花はいつまで咲く?
キンセンカは地中海沿岸原産のキク科の一年草で、黄色やオレンジなどの鮮やかな花を咲かせます。切り花にも適しており、ハーブや食用花としても利用されます。
花期は、秋に種まきをすると12月ごろから開花し、花の最盛期は3月~5月の春です。
花は日が当たると開き、夜間や天気の悪い日には閉じる性質があります。
キンセンカは耐寒性が高く、関東以南では冬越しできますが、夏になると暑さに弱くなり枯れてしまうことが多いため、夏まで咲かせることは難しいです。
つまり、キンセンカの花はいつまで咲くかというと、品種や気候にもよりますが一般的には5月頃までが目安です。6月以降は新しい苗を植え替えるか、秋まで待って種まきをする必要があります。
まとめ:キンセンカ(カレンデュラ)の育て方のポイント
キンセンカ(カレンデュラ)の育て方についてまとめました。
キンセンカは発芽率も高く育てやすい植物ですが、夏越しができないので種まきの時期には注意が必要です。
それ以外はそれほど難しいこともありませんし、管理もしやすいので初心者の方でも気軽に挑戦できる植物と言えます。
ハーブとしての側面もあるので、ハーブティーなどに活用するのも楽しいですよ。