姫フウロソウは、フウロソウ科オランダフウロ属のごく小型の多年草で、花にきれいな脈が入るのが特徴です。
桃色や紅色の花を4~5月に咲かせます。原産地はマヨルカ島とコルシカ島で、交雑種と言われています。
コンパクトな植物なので、鉢植えで楽しむのに適しています。
この記事では、姫フウロソウの育て方や増やし方、地植え栽培のコツなどを詳しく紹介します。
また、姫フウロソウに似た花や、姫フウロソウと混同されやすい花についてもお伝えします。
姫フウロソウ栽培に適した環境づくり
姫フウロソウは、日向~半日陰で水はけと水もちがよい土壌を好む山野草です。耐寒性は強いですが、耐暑性は弱く、真夏の暑さに弱いので注意が必要です。
ここでは、姫フウロソウ栽培に適した環境について、用土づくり・水やりと肥料の与え方を中心にご紹介します。
用土づくり | 姫フウロソウはもともと石灰岩地帯に育つ植物で、ややアルカリ性の土壌を好みます。鉢植えやプランターで育てる場合は、市販の山野草用培養土を使うか、赤玉土と腐葉土(またはバーク堆肥)を6:4程度に混ぜたものを使います。用土に緩効性の有機石灰を少し混ぜておくと、土壌のpHを調整することができます。地植えの場合は、充分に日光が当たり土壌は普通~やせ気味の場所を選んで植えます |
水やり | 過湿を嫌いますが乾燥にも弱いので、水やりは表土が乾いたらたっぷりと与えるようにします。夏場は半日陰~明るい日陰で風通しのよいところに置き、水切れしないように注意します。冬場は水やりを控えめにします。 |
肥料 | 肥料は植え付け時に緩効性の化成肥料を与えます。その後は春と秋に緩効性の固形肥料を置肥するか、夏と冬を除き液肥を2~3週間に1回程度与えます。 |
種まき時期と方法
姫フウロソウの種まきは、寒冷地では3月上旬〜4月上旬、温暖地では2月上旬〜3月中旬にかけて行うのが適期です。この時期なら気温が適度に高くなり、発芽率が高くなります。
姫フウロソウの種まきの手順は次のとおりです。
- 種まき用のポットなどに用土を入れて平らにし、水を十分に与えておく。
- 種を均等にまいて、軽く土で覆う。(種は小さいので深く埋めない)
- ポットなどにラップやビニール袋などをかけて保温する。
- 日当たりのよい場所に置いて発芽を待つ。
- 発芽するまでは乾燥しないように霧吹きなどで水分補給をする。
- 発芽したらラップやビニール袋を外して風通しを良くする。
- 本葉が2枚以上出たら間引きをする。
植え付ける時期になったら、株間15cmほどになるように鉢植えや地植えに移植します。
なお、種まき用の土は市販の山野草用培養土を用いるのが便利です。自分で作る場合は、赤玉土と腐葉土(またはバーク堆肥)を6:4程度に混ぜて作ると良いでしょう。
地植えの時期と方法
姫フウロソウは、鉢植えで育てることもできますが、地植えにするとより自然な姿で楽しむことができます。
ここでは、姫フウロソウの地植えの時期と方法についてご紹介します。
地植えの時期は、温暖地では2月~3月中旬、寒冷地では3~4月と10月が適期です。この時期に植え付けると、根がしっかり張って春や秋に花を咲かせることができます。
夏場に植え付けると、暑さや乾燥に弱い姫フウロソウは枯れてしまう可能性が高いので避けましょう。
地植えの方法は以下のとおりです。
- 植え付ける場所を選ぶ。
- 株の直径の2倍程度の大きさの植え穴を掘る。
- 株元が地面と同じ高さになるように株を植え付ける。
- 複数植える場合は株間を15cmほど空けて植える
- 土を戻して固め、たっぷりと水やりをする。
なお、姫フウロソウは日向~半日陰で水はけと水もちがよい土壌を好みます。落葉樹の下などのやや湿った場所が適しています。
用土に緩効性の有機石灰を少し混ぜておくと、土壌のpHを調整することができます。
鉢植え・プランターで育てる方法
姫フウロソウは、地植えにすると他の植物に負けてしまうことがあるので、場合によっては鉢植えやプランターで育てる方が良い場合もあります。
ここでは、姫フウロソウを鉢植えやプランターで育てる際のポイントは次のとおりです。
鉢・プランター選び | 根が深く伸びる植物ではありません。そのため、深さよりも幅の広い鉢やプランターを選びましょう。株の直径の2倍程度の大きさが目安です。素材は陶器やプラスチックなどがおすすめです。鉢底には穴があることを確認してください。 |
用土 | 水はけと水もちがよい土壌を好みます。市販の山野草培養土や赤玉土、腐葉土(またはバーク堆肥)、パーライトを6:2:2程度に混ぜたものなどが一例です。用土に緩効性の有機石灰を少し混ぜておくと、土壌のpHを調整することができます |
植え付け時期 | 地植えの場合と同じく温暖地では2月~3月中旬、寒冷地では3~4月と10月が適期です。 |
鉢植えやプランターの植え付けの方法は以下のとおりです。
- 鉢底に鉢底ネット、鉢底石、軽石などを入れる。
- 土を入れて株を置く。
- 株元が地面と同じ高さになるように植え付ける。
- 土を戻して固め、たっぷりと水やりをする。
以上が姫フウロソウを鉢植えやプランターで育てる方法です。姫フウロソウは小さな花ですが、きれいな脈が入っており、色も桃色や紅色などさまざまです。鉢植えやプランターで育てれば、ベランダや窓辺などで楽しむことができます。
植え替え時期と方法
姫フウロソウを鉢植えやプランターで育てる場合、株が大きくなると夏場に蒸れて枯れる危険性が高くなります。
そこで、株分けを兼ねて植え替えを行うことで、健康な状態を保ちつつ増やすこともできます。
植え替えの時期は、温暖地では2月~3月中旬、寒冷地では3~4月と10月が適期です。この時期に植え替えると、根がしっかり張って春や秋に花を咲かせることができます。夏場に植え替えると、暑さや乾燥に弱い姫フウロソウは枯れてしまう可能性が高いので避けましょう。
植え替えの方法は次のとおりです。
- 鉢から株を抜く。
- 根に付いた古い土を全て落とす。
- 傷んだ根を切り落とす。
- 根が絡まらないよう注意しながら手で株を分ける。
- 分けた株を一回り大きな鉢に植え付ける。
- 株元が地面と同じ高さになるように調整する。
- 土を戻して固め、たっぷりと水やりをする。
雑草の中に姫フウロソウに似た花はある?
姫フウロソウに似た花は、同じフウロソウ科の植物であるエロディウム属やフウロソウ属の種類があります。
例えば、以下のような花が挙げられます。
エロディウム・レイカルディ(Erodium reichardii) | 地中海沿岸の山岳地帯に自生する小型の多年草で、白やピンクの花を咲かせます |
エロディウム・コルシクム(Erodium corsicum) | コルシカ島に自生する多年草で、紫色の花を咲かせます |
エロディウム・マリチヌム(Erodium malacoides) | 地中海沿岸に自生する一年草で、淡いピンクの花を咲かせます |
フウロソウ(Geranium pratense) | ヨーロッパやアジアに広く分布する多年草で、青紫色の花を咲かせます。 |
ハクサンフウロ(Geranium yesoense var. nipponicum) | 日本の高山に自生する多年草で、白やピンクの花を咲かせます。 |
ゲンノショウコ(Geranium thunbergii) | 日本や中国に分布する一年草で、紅紫色の花を咲かせます。 |
これらの花は、姫フウロソウと同じように、5枚の花弁と10本の雄しべを持ち葉は対生し裂けているという特徴があります。
しかし、姫フウロソウとは異なり葉や茎が赤みを帯びていたり、臭いが塩を焼いたようだったりすることはありません。
また、日本では絶滅危惧種に指定されている場所もありますが、これらの花は比較的普通に見られるものが多く雑草の中に紛れていることも珍しくありません。
姫フウロソウの花が咲く時期と香り・花言葉
姫フウロソウの花が咲く時期は、5月から8月頃です。
花は細長い柄の先に1~2個つきます。花びらは5枚で、濃いピンク色の筋が入っています。雄しべと雌しべは赤く目立ちます。
姫フウロソウは、近づくと独特の臭いがします。この臭いは、塩を焼いたような匂いに似ていると言われています。この匂いは人間にとっては不快ですが、虫にとっては魅力的に感じられる可能性があります。(姫フウロソウは、虫によって受粉される花です)
花言葉は、「静かな人」「人知れずの愛」などがあります。小さくて目立たない姫フウロソウのイメージにマッチした花言葉のように感じられます。
姫フウロソウは盆栽としても人気
姫フウロソウは、小さくて可愛らしい花を咲かせる多年草です。鉢植えやロックガーデンで楽しむことができますが、盆栽としても人気があります。
地面を這うように広がりマット状になります。葉は浅く裂けた卵形で、白や桃色の花を多数咲かせるので、小盆栽の添え物として最適です。小さな鉢や皿に植えると、盆栽の足元を彩ります。
また、石や流木などを組み合わせて、自然風景を表現することもできます。姫フウロソウは、常緑性で耐寒性が強いので、冬でも楽しむことができます。
グランドカバーにも使いやすい
姫フウロソウは、地面を這うように広がる多年草で、白やピンクの小さな花を咲かせます。
鉢植えや盆栽としても人気ですが、グランドカバーとしても使いやすい植物です。
姫フウロソウは、以下のような特徴を持つグランドカバーです。
- 耐寒性が強く、冬でも常緑で楽しめます。
- 日向から半日陰まで幅広く育ちます。
- 花期が長く、春から秋まで花を楽しめます。
- 踏まれても丈夫で、歩行可能な場所にも向きます。
- 病害虫に強く、手入れが簡単です。
ただし、以下のような注意点もあります。
- 過湿を嫌うので、水はけの良い土壌に植えましょう。
- 繁殖力が強いので、ほかの植物との境界を定期的に整えましょう。
- 花後に種子が飛散するので、必要に応じて花摘みをしましょう。
の室内での育て方
姫フウロソウは、フウロソウ科フウロソウ属の一年草または越年草で、白やピンクの小さな花を咲かせます。
山野草としても人気がありますが、室内で鉢植えとしても楽しむことができます。
室内での育て方について紹介します。
室内での置き場所 | 日当たりのよい窓辺などに置いて育てましょう。直射日光が当たると葉が焼けてしまうことがあるので、カーテンなどで遮光してください。室内でも風通しをよくして、湿気やカビを防ぎましょう |
水やり | 姫フウロソウは、土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをします。水はけの良い用土を使って、根腐れを防ぎましょう。冬場は水やりを控えめにして、土が乾燥しない程度にします。 |
肥料 | 植え付け時に緩効性の化成肥料を入れておきますが、その後は春から秋にかけて液体肥料を月に1~2回与える程度で良いです。冬場は肥料を与えません。 |
剪定・切り戻しする方法と目的・時期
姫フウロソウは、花後に切り戻しを行うことで、株の樹形を整えたり次の開花を促したりすることができます。
一般的には4月から10月までが開花期ですが、品種によって異なります。花がしおれて種子ができそうになったら、早めに切り戻しましょう。
姫フウロソウの切り戻しの目的は、以下の3つです。
樹形を整える | 茎が長く伸びるので、放っておくと60cmほどの草丈になります。高さが気になったときにその都度剪定しても構いません。 |
次の開花を促す | 花後に種子を作るためにエネルギーを消費します。種子を作らせないために花が終わったら切り戻すことで、次の開花に備えることができます。 |
風通しをよくする | 葉が生い茂ったり混み合ったりすると病気や害虫被害を受けやすくなりますので、様子を見ながら適度な剪定を行いましょう。風通しをよくして予防することができます。 |
姫フウロソウは枝や茎の節から新芽が出やすいので、節の上で切るようにします。株全体を3分の1程度に切り戻します。
切り口から細菌が入るのを防ぐために癒合剤を塗っておくと安心です。
夏越しの方法
姫フウロソウは暑さに弱く夏越しには注意が必要です。
まず基本としては、姫フウロソウは半日陰か明るい日陰で育てる必要があります。真夏に日光が当たりすぎると、葉が枯れたり落ちたりすることがあるためです。
また、風通しをよくすることも重要です。暑さで湿気がこもると、軟腐病やうどんこ病などの病気にかかりやすくなってしまいます。
夏越しには、以下の方法がおすすめです。
涼しい場所に移動する | 屋内やベランダなど、涼しくて風通しの良い場所に移動させましょう。ただし、室内では乾燥しやすいので、水やりを忘れないようにしてください。 |
遮光する | 直射日光を避けるために日よけネットやカーテンなどで遮光してください。遮光率は50%程度が適しています。 |
水やりを調節する | 土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをしますが、水はけの悪い用土を使っている場合は水やりを控えめにしてください。水切れも水苦しさも姫フウロソウにとっては良くありません。 |
肥料を与えない | 夏は姫フウロソウの休眠期です。肥料を与えると株が弱ってしまう可能性があります。肥料は春から秋にかけて月1~2回程度与えるのが良いでしょう。 |
耐寒性と冬越しの方法
姫フウロソウは耐寒性が強く。-10℃以下の低温にも耐えることができますが、品種によっては、霜や雪に弱いものもあるのでご注意ください。
また、冬に乾燥すると根が傷んでしまうこともあります。
特別な冬越しの必要はありませんが、以下の方法で保護してあげるとよいでしょう。
場所を変える | 鉢植えの場合は、屋内やベランダなど、霜や雪が降らない場所に移動させましょう。地植えの場合は、他の植物と一緒に植えてある場合はそのままでも大丈夫ですが、単独で植えてある場合は株元に落ち葉や枯草などを敷いて保温してあげましょう。 |
水やりを控える | 冬は水やりを控えめにして、土が乾いたら少量だけ与えましょう。水やりが多すぎると根腐れや凍害の原因になります。 |
肥料を与えない | 冬は姫フウロソウの休眠期です。肥料を与えると株が弱ってしまう可能性があります。肥料は春から秋にかけて月1~2回程度与えるのが良いでしょう。 |
姫フウロソウを株分けで増やす方法
姫フウロソウは、種まき以外にも株分けで簡単に増やすことができます。
適期は温暖地では2月~3月中旬、寒冷地では3~4月と10月で、植え替え時に行うのが良いでしょう。
株分けの手順は次のとおりです。
- 株を鉢から抜き出す。
- 根を崩さないように手で分ける。
- 分けた株の切り口を乾かす。
- 新しい鉢に植え付ける。
- 水やりは控えめにする。
上記の手順で姫フウロソウを増やすことができます。
こぼれ種でも増える
姫フウロソウは、小さな花をたくさん咲かせる可愛らしい山野草です。種まきや株分けで増やすことができますが、こぼれ種でも自然に増えることがあります。
ただし、こぼれ種よりも種を収穫して種まきをした方が増やしやすいので、確実に増やしたい場合は種を収穫した方が良いでしょう。
種の収穫方法は次にご紹介します。
収穫時期と方法
昔から「医者泣かせ」の秘薬として用いられてきたと言われるほどの薬効がある姫フウロソウの収穫時期は、花期の4月~5月です。
この時期に花や葉を摘み取ると香りや効能が高まります。
種の収穫時期は6月~7月頃が目安で、花が終わった後に実が茶色くなってはじける前に収穫します。
種の収穫方法は次のとおりです。
- 実のついた茎を切り取る。
- 紙袋や布袋に入れて乾燥させる。
- はじけた実から白い種を取り出す。
- 冷暗所で保存する。
まとめ:姫フウロソウの育て方のポイント
姫フウロソウは耐寒性が強いですが、耐暑性はそれほどありません。夏場は半日陰~明るい日陰で、風通しのよいところに置いて育てましょう。
水はけのよい用土を使い、表土が乾いたらたっぷりと水やりをします。植え付け時に緩効性の化成肥料を与え、春と秋に液肥を施します。
株分けは10月ごろに行います。姫フウロソウに似た花には、ヒメフウロやエゾフウロなどがあ、姫フウロソウと混同されやすい花には、フクロソウ属やテンジクアオイ属などがあります。
姫フウロソウは、きれいな脈が入った小さな花を咲かせる魅力的な植物です。ぜひ育ててみてください。