ハマナスは、日本の海岸に自生するバラ科の植物で
、初夏に白やピンク、赤などの色鮮やかな花を咲かせます。
花の寿命は短いですが、次々と新しい花を咲かせるので、長く楽しむことができます。また、花が終わると赤い実がなり、ジャムや果実酒などに加工して食べることもできます。
ハマナスは、寒さや潮風に強く、丈夫で育てやすい植物です。庭に植えれば、美しい花と実を楽しむことができるだけでなく、枝にびっしりとついたトゲが防犯対策にも役立ちます。鉢植えにすれば、ベランダや玄関先などで飾ることができます。
この記事では、ハマナスの植え付ける場所や植え替えの時期、水やりや肥料の与え方、剪定や増やし方などを詳しく解説します。ハマナスの魅力を存分に味わうために、ぜひ参考にしてみてくださいね。
ハマナス栽培に適した環境づくり
ハマナスはに当たりと風通りが良い場所を好みます。
用土づくりや水・肥料の与え方のポイントを次にまとめます。
用土づくり
ハマナスは水はけの良い土を好みます。赤玉土や軽石などを混ぜた土が適していますが、それほど土質を選ばないので、地植えの場合は掘り起こした土に砂、腐葉土、堆肥を混ぜるくらいで良いでしょう。
鉢植えの場合は赤玉土7に腐葉土3の用土に堆肥を少量加えるくらいが望ましいです。
水やり
ハマナスは乾燥に強い植物ですが、水不足になると花付きが悪くなります。水やりは土が乾いたら行い、一度にたっぷりと与えるようにしますが、冬場は水やりを控えめにします。
肥料
肥料切れになると花付きが悪くなるので、肥料は春から秋にかけて月1回程度与えるようにします。液体肥料や有機肥料などを使うことができます。
種まき時期と方法
ハマナスは、春(4月頃)から秋(9月~10月)にかけて種まきするのが一般的です。
種まきには以下の手順を踏みます。
- 鉢底には砂利や軽石などを敷いて水はけを良くする。
- 鉢などに水はけのよい土を入れる。
- 土の表面を平らにして種をまく
- 種は土に埋めず、軽く押さえる程度にする。
- 水を与える。(以後、土が乾いたら水やりをする)
- 日当たりの良い場所に置く
発芽したら、本葉が2枚以上出るまで育てます。
以上がハマナスの種まき時期と方法です。種が発芽するまで約2週間ほどかかるので、水やりをしながら芽が出るのを待ちましょう。
ハマナスは種から育てると花が咲くまでに数年かかることもあります。早く花を楽しみたい場合は、苗から育てることもおすすめです。
地植えの時期と方法
ハマナスは鉢植えやプランターで育てることもできますが、地植えにするとより元気に育ちます。地植えに適した時期は春から秋までです。特に春は新芽が出る前で、移植のストレスが少ないのでおすすめです。
地植えにする場合は以下のとおりです。
- 植え付ける場所として日当たりの良い場所を選ぶ
- 植え付ける場所を掘り起こす。
- 砂、腐葉土、堆肥を混ぜて水はけを良くして栄養分を入れる。
- 鉢からハマナスを取り出す。
- 根が鉢に張り付いている場合は、鉢を軽く叩いて外す。
- 根をほぐす。(根が絡まっている場合は、指で優しくほぐす)
- 根元が土と同じ高さになるように調整して植え付ける
- 土をかぶせて固める。
- たっぷりと水やりをして根付きを促す。
鉢植え・プランターで育てる方法
ハマナスは地植えにするとより元気に育ちますが、鉢植えやプランターで育てることも可能です。鉢植えやプランターで育てる方法は上記の地植えの方法とほとんど変わりませんが、鉢植えやプランターで育てる際の注意点を以下にまとめます。
鉢やプランター選び | ハマナスは根が深く伸びる植物なので、深さがある鉢やプランターを選びましょう。また、水はけの良い素材のものがおすすめです。 |
土づくり | 鉢植えの場合は赤玉土7に腐葉土3の用土に堆肥を少量加えると良いです。 |
鉢植えやプランターで育てる場合は、鉢の大きさや置く場所にも注意しましょう。鉢が小さすぎると根が窮屈になり、置く場所が暑すぎると葉が焼けてしまいます。
植え替え時期と方法
ハマナスは鉢植えやプランターで育てる場合、根が鉢からはみ出してきたり土が固まってきたりすると、植え替えが必要になります。
植え替えに適した時期は春から秋までで、特に春は新芽が出る前なので移植のストレスが少なくおすすめです。
植え替えする場合は基本的には鉢・プランターで育てる方法とほとんど変わりませんが、植え替える際の注意点を以下にまとめます。
- 株が大きくなっていれば新しい鉢やプランターを使う。
- 新しい土を使う。
- 根が絡まっている場合は指で優しくほぐしてから植えつける。
- 傷んだ根や枯れた根は切り取ってから植えつける。
以上がハマナスの植え替え時期と方法です。植え替えすると、ハマナスはより健康に育ちます。
花が咲く時期・香り
ハマナスは5月から8月にかけて花を咲かせ、その後10月から11月にかけて実をつけます。
花は直径が6~8センチメートルで、野生のバラの中で最も大きな花を持つ種類の一つです。花の寿命は短く、ほとんどが1日です。
花色は主にピンクですが稀に白色のものも見られ、みずみずしくフルーツのような香りがします。
ハマナスの花言葉は怖い?
ハマナスは、「旅の楽しさ」「豊かな香り」「あなたの魅力にひかれます」といった花言葉を持っています。
砂浜や海辺のような過酷な環境で生きながらも鮮やかな花を咲かせることから、「旅の楽しさ」という言葉が生まれたとされます。
また、その強烈な香りが人々を惹きつけるため、「豊かな香り」や「あなたの魅力にひかれます」という表現が使われています。
しかし、花の美しさは儚く開花後すぐに枯れてしまうため、「悲しくそして美しい」という感慨深い花言葉も存在することから、ハマナスの花言葉は怖いと感じる人もいるでしょう。
ハマナスの花が咲かない原因と対策
ハマナスは夏から秋にかけて花を咲かせますが、場合によっては花が咲かないこともあります。
花が咲かない原因としては以下のようなものが考えられます。
原因 | 対策 |
水やりや肥料の不足 | 乾燥に強い植物ですが、水やりや肥料が不足すると花付きが悪くなります。水やりは土が乾いたら行い、一度にたっぷりと与えるようにします。肥料は春から秋にかけて月1回程度与えるようにします。 |
日当たりの不足 | 日当たりの良い場所を好む植物です。日当たりが悪いと花芽が形成されにくくなります。鉢植えやプランターで育てる場合は、南向きや西向きなどの日当たりの良い場所に置きましょう。 |
剪定や切り戻しの不適切 | 剪定や切り戻しをすることで枝ぶりを整えることができますが、時期や方法を間違えると花付きに影響します。剪定や切り戻しは冬から春にかけて行い、枯れた枝や弱った枝を中心に切り取ります。また、切る量は全体の3分の1程度に抑えましょう。 |
剪定・切り戻しする方法と目的・時期
ハマナスは剪定や切り戻しをすることで枝ぶりを整えたり、花付きを良くしたりすることができます。
剪定や切り戻しの時期や方法などについて以下にまとめました。
実施時期 | 方法と目的 | |
剪定 | 葉が落ちた1月~2月の間 | 基本的に強い剪定は必要ありませんが、古い枝や混み合った枝、枯れた枝を切りそろえて樹形を整えます。ただし、株元から生えるヒコバエ(シュート)は残しておくと花を咲かせるようになります。 |
切り戻し | 花が咲き終わった後の7月~8月 | 花が咲いた枝を半分ほど切り取って、株元に緩効性化成肥料を与えます。これにより、来年の花付きがよくなります。 |
気をつけるべき病害虫と対策
ハマナスは比較的丈夫な植物ですが、場合によっては害虫に悩まされることもあります。ハマナス栽培で気をつけたい害虫としては以下のようなものがあります。
害虫 | 特徴と対策 |
アブラムシ | アブラムシはハマナスの新芽や葉裏などに付いて吸汁します。アブラムシによってハマナスは成長が阻害されたり、ウイルス病に感染したりします。アブラムシの発生を防ぐためには、水やりや肥料を適切に行い、ハマナスを健康に保ちます。アブラムシが発生した場合は、手で取り除いたり、薬剤を散布したりします。 |
カイガラムシ | カイガラムシはハマナスの枝や幹などに付いて吸汁します。カイガラムシによってハマナスは成長が阻害されたり、蜜露やカビが発生したりします。カイガラムシの発生を防ぐためには、水やりや肥料を適切に行い、ハマナスを健康に保ちます。カイガラムシが発生した場合は、手で取り除いたり、薬剤を散布したりします。 |
また、葉焼けといって、ハマナスの葉が茶色や黄色に変色して枯れてしまう現象が発生することもあります。葉焼けの原因としては以下のようなものがあります
直射日光 | 日当たりの良い場所を好みますが、直射日光が当たると葉が焼けてしまいます。特に夏場はカーテンやブラインドなどで調節しましょう。 |
塩分 | 塩分に強い植物ですが、過剰な塩分は葉焼けの原因になります。特に海岸沿いなどでは風で塩分が飛んでくることがあります。塩分が付着した場合は水で洗い流しましょう。 |
水不足 | 乾燥に強い植物ですが、水不足になると葉焼けの原因になります。水やりは土が乾いたら行い、一度にたっぷりと与えるようにします。 |
夏越しの注意点
ハマナスは夏から秋にかけて花を咲かせる植物ですが、夏場は高温や直射日光などに注意しなければなりません。ハマナスの夏越しの注意点としては以下のようなものがあります。
水やり | 土が乾いたら行い一度にたっぷりと与えるようにしますが、水やりの回数や量を増やしすぎると根腐れの原因になります。 |
日陰作り | 夏場は直射日光が当たると葉が焼けてしまいます。 |
耐寒性と冬越しの方法
ハマナスは耐寒性が高く、-20℃までの低温にも耐えられる植物です。
北海道から九州まで、海岸に自生しているくらいなので特に冬越しに向けて行うことはありません。
ハマナスの増やし方
ハマナスは種まき以外の増やし方として、
- 挿し木
- 株分け
- 地下茎でも増える
この3つの方法があります。
それぞれの増やし方についてお伝えしていきます。
挿し木で増やす方法と時期
挿し木は、春から夏にかけて行うのが適期です。
ハマナスの枝から10~15cmほどの長さに切り取ったものを水や土に挿しておきます。水挿しの場合は、水を毎日替えて清潔に保ちます。土挿しの場合は、土を湿らせておきます。
挿し木から根が出るまでには約1ヶ月ほどかかりますが、根が出たら鉢植えに移して育てましょう。
株分けで増やす方法と時期
株分けは、秋から冬にかけて行うのが適期です。
ハマナスの株を掘り上げて根元からハサミなどで切り分けたものを別々の鉢や場所に植え付けます。
株分けした後は、水やりや肥料などの管理をしっかり行ってください。
地下茎でも増える
ハマナスは地下茎で増えます。
地下茎は地中に横に伸びて、新しい芽や根を出して別の株を作ります。ハマナスは海岸などの砂地に広く群生することが多いですが、地下茎で増えているのがその理由です。
収穫時期と方法
ハマナスは花後に実をつけますが、その実は食用として利用することができます。実は紫色や赤色などに色づくと完熟したサインです。
収穫時期は品種や気候によって異なりますが、一般的には8月から10月にかけてです。
収穫方法は簡単で、実がついた枝をハサミで切り取るだけです。ただし、ハマナスにはトゲがあるので、収穫時には手袋や長袖の服を着用して注意してください。
ハマナスの実がならない原因と対策
ハマナスは花後に実をつけますが、実がならないこともあります。実がならない原因としては、以下のようなものが考えられます。
花粉の不足 | 自家不和合性の植物で、同じ品種では受粉しないので、異なる品種のハマナスを近くに植える必要があります。また、花粉を運ぶ昆虫が少ない場合も受粉が不十分になります。異なる品種のハマナスから花粉を採取して、別の品種のハマナスの柱頭に塗布する(人工授粉)ことで受粉を促進することができます。なお、人工授粉は午前中に行うと効果的です。 |
気温の影響 | 低温に強い植物ですが、高温には弱いです。気温が30℃以上になると花粉や柱頭が傷んで受粉しにくくなります。また、冬場の寒さも花芽の形成を阻害することがあります。気温が高くなる時期は日陰や風通しを良くすることで温度上昇を抑えることができます。 |
栄養状態の悪化 | 肥料をあまり必要としませんが、栄養不足になると花や実の付きが悪くなります。特に窒素過多の肥料は花や実の形成を妨げるので注意してください。栄養状態を良くするために適切な肥料や水やりを行うことが大切です。肥料は窒素分の少ないものを選んでください。 |
剪定のしすぎ | 剪定をすると枝ぶりがよくなりますが、剪定しすぎると花芽や実をつける枝を切ってしまうことがあります。 |
ハマナスの育て方に関するQ&A
ここでは、ハマナスの育て方に関するQ&A(質問&回答)を紹介します。
- 実に毒がある?
- ハマナスにはトゲがある?
- 日陰でも育つ?
- 北海道でハマナスが有名な場所はどこ?
- ハマナスの苗はどこで買える?
上記の問いについて詳しく回答していますので、参考にしてみてくださいね。
実に毒がある?
ローズヒップとして知られるハマナスの実は食べることが可能で毒は含まれません。
毒が含まれているという記述をしているサイトがあるので誤った情報を信じている人がいるのでご注意ください。ただ、食べ過ぎるとお腹を下したり腎臓に負担をかけて結石ができる原因になるので食べ過ぎには注意が必要です。
通常、ハマナスの実はそのままでは味が良くないため、ジャムなどに加工して利用されます。
ハマナスにはトゲがある?
ハマナスにはトゲがあります。ハマナスはバラ科の植物で、茎や葉柄には細かく鋭い刺が密生していますが、これは潮風による塩分の付着を防いで生きていくための進化だと考えられています。
ハマナスの刺は、侵入防止対策や生垣にも利用できますが、剪定や株分けの際には注意が必要です。
日陰でも育つ?
ハマナスは日向を好む植物ですが、日陰でも育つことができます。ただし、日陰で育てる場合は、以下のような点に注意する必要があります。
花や実の付きが悪くなる | ハマナスは光合成を行うために十分な光量が必要です。日陰で育てると、光量が不足して花や実の形成が妨げられます。花や実を付けさせるためには、少なくとも1日に4~6時間は直射日光を当てるようにしましょう。 |
病害虫にかかりやすくなる | ハマナスは乾燥した環境を好みます。日陰で育てると、湿度が高くなって病害虫にかかりやすくなります。特にアブラムシやカイガラムシなどの害虫に注意してください。病害虫の発生を防ぐためには、風通しを良くして乾燥させることが大切です。 |
栄養不足になりやすい | ハマナスは肥料をあまり必要としませんが、日陰で育てると栄養不足になりやすくなります。特に窒素分の少ない肥料を与えると、葉や茎の成長を促進することができます。肥料は春から秋にかけて月に1回程度与えましょう。 |
北海道でハマナスが有名な場所はどこ?
ハマナスは北海道の花として指定されていて、北海道の夏を彩る花の一つです。
北海道の中でハマナスが有名な、
- ハマナス台場公園
- 春国岱
- はまなすの丘公園
3つの場所をご紹介します。
ハマナス台場公園
ハマナス台場公園は、北海道森町にある海岸沿いの公園です。6月から7月にかけて、約10万本のハマナスが咲き乱れます。
公園内には、ハマナスの歴史や生態を紹介する展示室や、ハマナスの花びらを使ったソフトクリームやジャムなどを販売する売店もあります。
住所:北海道茅部郡森町砂原5丁目
駐車場:あり
春国岱
春国岱は、根室市にある砂州の先端に位置する自然公園です。
約3キロメートルにわたって、ハマナスの大群落が広がっています。ハマナスの花は、日本で最も赤いと言われており、海と空とのコントラストが鮮やかです。
住所:北海道根室市東梅
電話:0153-24-3104 (根室市観光協会)
駐車場:あり/30台春国岱原生野鳥公園ネイチャーセンター
時間:9~17時(10~3月は~16時30分)
休み:水曜、祝日の場合は翌々日、祝日の翌日
はまなすの丘公園
はまなすの丘公園は、石狩市にある砂嘴に作られた公園です。6月下旬から7月上旬にかけて、約2万本のハマナスが咲きます。
ハマナスの花は、ピンク色や白色などの色があり、石狩湾を背景に美しく見えます。公園内には、ハマナスの生態や歴史を紹介するヴィジターセンターがあり、2階のテラスでは、石狩湾を眺めながらハマナスソフトクリームを味わうことができます。
住所:北海道石狩市浜町29-1
電話:0133-62-3450
開園:4月29日~8月31日 9:00~18:00
開園:9月1日~11月3日 9:00~17:00
休業日:11月4日~4月28日
駐車場:あり/30台
ハマナスの苗はどこで買える?
ハマナスの苗は、園芸店やネットショップなどで購入することができます。ただし、ハマナスの苗は品種やサイズによって価格や在庫が異なるので、事前に確認しておくことが大切です。
また、自生種と栽培種とがありますが、自生種は保護されている場合があるので、採取や購入には注意してください。
まとめ:ハマナスの育て方のポイント
この記事では、ハマナス(浜茄子)の育て方についてご紹介しました。
ハマナスは、日当たりと風通しのよい場所に植え付けることがポイントです。高温多湿は苦手なので注意してください。水やりは土が乾いたら行い、肥料は春と夏に緩効性の化成肥料を与えます。剪定は冬に行い、古い枝を切り落とします。挿し木で簡単に増やすこともできます。
ハマナスは、美しい花と実を楽しめるだけでなく、防犯対策にもなる実用的な植物です。バラ科の中でも特に手間がかからないことで知られています。ぜひこの記事を参考にして、ハマナスを育ててみてくださいね。