ミソハギは、初夏に咲く鮮やかなピンク色の花が美しく、盆花や精霊花としても親しまれている植物です。
しかし、時にはミソハギは庭に植えてはいけないと言われることがありますが、どういった理由があるのでしょうか。
主に理由は3つありますが、最も大きなデメリットとして挙げられるのは地下茎やこぼれ種によって増えすぎてしまう点が挙げられます。
この記事では、ミソハギの毒性や増えすぎてしまう原因と対策、正しい育て方についてご紹介します。ミソハギを庭に植えようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
ミソハギとは
ミソハギはキク科の多年草で、日本や中国などの東アジアに自生している植物です。
地下茎で増えていき、水辺や湿地に群生します。盆花や精霊花として用いられるほか、民間薬としても使われることがあります。
ミソハギの特徴は、葉が対生するときに葉柄が互いに合わさって筒状になり、茎を包むことです。この筒状の部分には水が溜まりやすく、昆虫が入り込んだりします。
そのため、ミソハギという名前は、「水槽(みぞ)を抱(は)ぐ」という意味から来ていると言われています。
ミソハギは庭に植えてはいけないと言われる3つの理由
ミソハギは、自然に豊富に生える野草ですが、庭に植えると問題が起こることがあるため「庭に植えてはいけない」と言われることもあります。
その理由としては以下の3つが挙げられます。
- 増えすぎるため
- 花言葉が怖い・ネガティブであるため
- 縁起が悪いため
それぞれの項目について以下に詳しくお伝えしていきます。
増えすぎるため
ミソハギは非常に繁殖力が強く、種子や地下茎によって容易に増えます。
そのため、一度庭に植えると他の植物のスペースを奪ったり、根で土壌を固めたりして庭全体のバランスを崩す恐れがあります。
また、庭を超えて近隣の畑や自然環境にも広がってしまいトラブルの原因になることもあります。
なお、ミソハギは外来種として問題視されることもあり、侵略的外来種リストに掲載されています。
花言葉が怖い・ネガティブであるため
ミソハギは、お盆の供花として用いられることが多く、花言葉は「愛の悲しみ」「悲哀」「慈悲」など、故人を想う寂しい気持ちを表します。また、ミソハギは禊(みそぎ)という言葉に通じるため、罪や穢れを洗い流すという意味もあります。
ミソハギの花言葉は、日本の古典文学にも登場します。例えば、平安時代の歌人・紫式部の「源氏物語」には、以下のような一節があります。
あはれと思ふ心は、かの世にもあるべきものなれど、いとまれにて、かの世の人にも知られず、この世にも知られず、わが身にも知られず、ただひとり、みそはぎの花の散るころに、あはれと思ふ心のみぞ、あはれと思ふなりけり。
この歌は、源氏の妻・明石の中宮が、源氏の死後、孤独に暮らす心情を詠んだものです。ミソハギの花が散るころは、お盆の時期であり、故人を偲ぶ時期でもあります。ミソハギの花言葉は、明石の中宮の愛の悲しみや悲哀を象徴しています。
ミソハギの花言葉は、現代でも詩や歌に使われることがあります。例えば、歌手・中島みゆきの「みそはぎ」は、以下のような歌詞があります。
みそはぎの花が咲いたら あなたのことを思い出す みそはぎの花が散ったら あなたのことを忘れる みそはぎの花が咲いても あなたのことを思い出さない みそはぎの花が散っても あなたのことを忘れない
この歌は、別れた恋人を想う女性の心情を詠んだものです。ミソハギの花言葉は、女性の愛の悲しみや慈悲を表しています。
以上のように、ミソハギの花言葉は、故人や別れた恋人を想う寂しい気持ちを表すことがあります。
縁起が悪いため
ミソハギは、お墓や仏壇に供える盆花として用いられることが多く、庭に植えられたミソハギが、お墓や仏壇に供えるお供え物としての意味を持ってしまうことから、庭に植えることは縁起が悪いとされています。
ミソハギには毒性はあるのか?
結論から言うと、ミソハギには毒性はありません。
ミソハギは、日本に広く分布する多年草で、赤紫色の花を咲かせます。民間薬としても用いられており、千屈菜(せんくつさい)という名で、下痢止めや利尿剤として使われています。
茎や葉を乾燥させて煎じたり、生の茎や葉をすりつぶして患部に貼ったりして利用されます。毒性がないので、適切に使用すれば安全に利用することができます。
しかし、ミソハギの近縁種にエゾミソハギがありますが、この植物は毒性があります。
エゾミソハギの葉や茎には、皮膚や粘膜を刺激する成分が含まれています。また、エゾミソハギの種子には、嘔吐や下痢などの症状を引き起こす成分が含まれています。
ミソハギとエゾミソハギの見分け方は、以下のとおりです。
項目 | ミソハギ | エゾミソハギ |
---|---|---|
分布 | 日本と朝鮮半島に自生 | 九州以北の各地やユーラシア大陸や北アフリカに広く分布 |
萼の付属体 | 水平に開く | 上向きに直立する |
葉の基部 | 茎を抱かない | 茎を抱く |
毛の有無 | 無毛 | 全体に毛が多い |
外来種の指定 | なし | 世界の侵略的外来種ワースト100に選ばれている |
ミソハギとエゾミソハギは、見た目が似ているため、間違ってエゾミソハギを摂取してしまう可能性があります。
ミソハギを利用する際は、これらの見分け方を参考にして、エゾミソハギと間違えないよう注意しましょう。
ミソハギを育てるのに適した環境づくり
ミソハギは、湿地や水辺に自生する多年草です。日当たりが良く、水分量の多い環境で育ちます。
日当たりが良くないと生育や花付きが悪くなるので注意が必要です。
用土づくりや水・肥料の与え方のポイントは次のとおりです。
用土づくり
ミソハギは水もちのよい土壌を好みます。
鉢植えの場合は、水生植物用の用土や、荒木田土や培養土を混ぜたものを使用します。庭植えの場合は、表土が乾いたらたっぷり水を与えるようにします。
水やりと肥料の与え方
鉢植えの場合は、水やりは水槽などに入れて腰水にするか、水槽や池に沈めます。
庭植えの場合は、表土が乾いたらたっぷり水を与えます。
肥料は、4月~6月にかけて三要素等量配合の緩効性肥料を月に1回、4~5号鉢で三つまみを目安に施します。
ミソハギの種まき時期と方法
ミソハギの種まきは、4月中旬~5月が適期です。関東以西の温暖地では、9月下旬から10月上旬にも可能です。
種まきの方法は次のとおりです。
種まきの方法
- ピートバンや育苗箱に、水はけのよい用土を入れる。
- 種を均一にばらまき、覆土は2mm程度にする。
- 乾燥しないように、水やりをして管理する。
- 本葉が2~3枚になったら、鉢や地面に植え替える。
注意点
- 種は細かく発芽がよいので、厚まきにならないように注意する。
- 種まき後は、乾燥しないように注意する。
- 本葉が2~3枚になったら、鉢や地面に植え替える。
ミソハギの地植え時期と方法
ミソハギの地植えは、春の3月~4月または秋の9月~10月が適期です。関東以西の温暖地では、10月上旬にも可能です。
地植えの方法
- 日当たりの良い水分量の多い場所を選び、土を掘り起こす。
- 水もちのよい泥質の土を混ぜ込む。
- 株間を30cm~50cm程度あけて、苗を植え付ける。
- 植え付け後はたっぷり水を与える。
注意点
- ミソハギは湿地や水辺に自生する植物なので、乾燥に弱い。
- 土を掘り起こす際は、根を傷つけないように注意する。
- 苗を植え付ける際は、根が十分に広がるように深めに植える。
- 植え付け後は、水やりをこまめに行う。
ミソハギを鉢植えで育てる方法
ミソハギは、湿地や水辺に自生する多年草です。日当たりが良く、水分量の多い環境で育ちます。
鉢植えの準備
- ミソハギの苗は、花付きのものであれば枯れていないものを選ぶ。
- 鉢は8号から10号の鉢が適している。
- 鉢底ネットを敷き、その上に鉢底石を2cmほど入れる。
- 水もちのよい用土を入れる。
植え付け
根が十分に育つように、深さは鉢の表土の上3~7cmが目安に苗を植え付けます。
水やりと肥料
- 日当たりの良い場所に置く。
- 水が汚れたら新鮮なものに取り替える。
- 4月~6月にかけて、緩効性肥料を月に1回施す。
注意点
- ミソハギは湿地や水辺に自生する植物なので、乾燥に弱い。
- 水やりは、表土が乾いたらたっぷり行う。
- 肥料は、成長期にのみ施す。
植え替え時期と方法
ミソハギは、2~3年に1回、植え替えが必要です。植え替えの適期は、春の3月~4月または秋の9月~10月です。関東以西の温暖地では、10月上旬にも可能です。
植え替えの方法
- 植え替える鉢(一回り大きい鉢)を用意する。
- 鉢の底に鉢底ネットを敷き、その上に鉢底石を2cmほど入れる。
- 水もちのよい用土を入れる。
- 株を掘り上げて、根を切り詰める。
- 根が長すぎると鉢に入りきらないので、10cmほどに整える。
- 用土の上に、株を植え付ける。(根が十分に育つように、深さは鉢の表土の上3~7cmが目安。)
- 植え付け後は、たっぷり水を与える。
注意点
- 植え替えの時期を間違えると、株が弱ったり枯れたりすることがある。
- 根を切り詰める際は、切り口が乾かないように注意する。
- 植え付け後は、しばらくは日陰に置き、徐々に日当たりを強くしていく。
ミソハギの花が咲く時期と香り
ミソハギの花は、夏の7月~9月まで咲きます。夏に最盛期を迎え、冬には地上部が枯れて休眠しますが、春になるとまた芽吹きます。
ミソハギの花の香りは、ほとんどありません。しかし、花の色は濃いマゼンタピンクで、茎の先端に穂状に咲きます。花の大きさは1cm弱で、小さくても目立つ美しい花を咲かせます。
ミソハギに似た花にはどんな花があるか
ミソハギに似た花には、以下のようなものがあります。
ヒメミソハギ
ヒメミソハギは、日本全土やアジア、アフリカ、オーストラリアなどに広く分布するミソハギ科の一年草です。
形態
- 茎は斜上し、4稜形で、よく分枝します。枝は短く、茎の上部では葉が小さくなります。
- 葉は対生し、狭楕円形~広線形~披針状長円形で、基部は耳状になり茎を抱きます。
- 花は紅紫色で、直径約1.5ミリメートルです。花柄は1~2ミリメートル、花序柄は1~2ミリメートルの長さです。花は密に3~7個、腋生の集散花序につきます。
花
- 花筒は鐘形~広鐘形で、長さ約1.5ミリメートル、直径1~1.5ミリメートルです。4うねがあります。
- 咢片は4個、デルタ形で、長さ約0.2ミリメートルです。
- 花弁は4個、淡紅紫色で、倒卵形、長さ0.5~1ミリメートルです。早落性です。
- 雄しべは4本、まれに6~8本です。
- 花柱は子房の長さの1/3~1/2です。
果実
蒴果は球形で、紅紫褐色です。直径1.5~2.5ミリメートルで、約1/2(わずかに)突き出ます。熟すと不規則に裂開します。
生態
- 水田や湿地に生育し、種子で繁殖します。
- 夏から秋にかけて開花し、果実が熟します。
利用
観賞用に用いられます。
注意事項
水田雑草として問題となる場合があります。
エゾミソハギ
エゾミソハギ(蝦夷禊萩)は、ミソハギ科ミソハギ属の多年草。日本では九州以北に分布し、ユーラシア大陸や北アフリカにも広く分布する。
特徴
草丈は1.5~2m。茎は直立し、稜があり短毛が生える。葉は対生し、広披針形で長さ2~6cm。葉の基部は茎を抱く。
花は紅紫色で7~8月に穂状花序に咲く。花冠は筒形で長さ1.5~2cm。萼片の間の付属片は上向きになる。
生態
湿地や水辺に生育する。水はけの良い土壌を好むが浅い水中にも生育できる。
利用
盆花として栽培される。
注意点
世界の侵略的外来種ワースト100に選定されている。繁殖力が旺盛で、在来種を駆逐する可能性がある。
ミソハギモドキ
ミソハギモドキは、ミソハギ科ミソハギ属の多年草です。
ミソハギに似ていますが、花は白色でガク片の間の付属片は下向きになります。
日本では北海道から九州までの各地に分布し、ユーラシア大陸や北アメリカにも広く分布しています。水辺や湿地に生え、夏から秋にかけて花を咲かせます。
ミソハギモドキの特徴は、以下のとおりです。
- 花は白色で、ガク片の間の付属片は下向きになる
- 葉は楕円形で、縁に鋸歯がある
- 茎は細く、長さは1mほどになる
- 果実は楕円形で、黒色になる
剪定・切り戻しする方法と目的・時期
ミソハギは、地下茎を伸ばして群生する植物です。剪定・切り戻しを行うことで、枝分かれを促し、より多くの花を咲かせたり、新しい株を作ったりすることができます。
目的
- 花付きをよくする
- 株を増やす
時期
- 5月から6月
- 花後の7月下旬から8月
方法
- 切り戻す枝を選ぶ(新芽の先端部分や花が終わった茎)
- 鋏やハサミで、下から2~3節上のところで切る
- 切り口は斜めにすると水が溜まりにくくなる
- 切り戻した枝を、挿し木にすることも可能
注意点
- 一番上から剪定すると枝分かれが起きてしまうので、必ず下から2~3節上のところで剪定する
- 切り戻した株は、水やりや肥料を適宜行う
夏越しの注意点
ミソハギの夏越しは、以下の3つのポイントを押さえすれば比較的簡単に行うことができます。
- 水やりをこまめに行う
- 肥料を適切に施す
- 剪定を行う
この3つのポイントについて少し補足をしていきます。
水やり
ミソハギは、夏の高温乾燥に弱いため、水やりが重要です。鉢植えの場合は、腰水にするか、池や水槽に沈めて、常に水が切れないようにします。庭植えの場合は、表土が乾いたらたっぷりと水を与えます。
肥料
ミソハギは、夏に花を咲かせるために、肥料を必要とします。4月から6月にかけて、三要素等量配合の緩効性肥料を月に1回、4~5号鉢で三つまみを目安に施します。
剪定
花が終わったら、種子が飛散しないように切り取ります。また、株が大きく茂ってきたら、株分けで増やすこともできます。
耐寒性と冬越しの方法
ミソハギは、耐寒性が強く、冬越しには特に難しい植物ではありません。しかし、寒風や霜、雪などの影響で枝葉が傷んだり枯れ込んだりする可能性があるため、以下の対策をしておきましょう。
- 日だまりの軒下に取り込む
- 鉢植えの場合は、室内に移動する
- 不織布や寒冷紗などで覆う
また、秋になって地上部が枯れたら、株元でバッサリと刈り取っておきます。これにより、春になると同じ場所から新しい芽を出して花を咲かせることができます。
なお、ミソハギは、落葉性多年草です。秋になると地上部が枯れて、冬は休眠します。春になると、同じ場所から新しい芽が出て、花を咲かせます。
ミソハギの増やし方
ミソハギは、種子からだけでなく、挿し木や株分けからも増やすことができます。挿し木や株分けの方法と時期は以下の通りです。
挿し木で増やす時期と方法
ミソハギの挿し木は、5月~6月が適期です。この時期は、新芽が伸びていて挿し穂に適しています。
ただし、ミソハギは休眠せずに冬の間も枝葉を伸ばすので、花が咲き終わった10月からも挿し木が可能です。この場合は、その年に伸びた枝を使って挿し木します。
ミソハギの挿し木は、以下の手順で行います。
- ミソハギの茎を先端から10~15cmほどの長さに切り取る。
- 切り口を斜めにして水を吸い上げやすくさせる。
- 蒸散を抑えるために下葉を取り除き、残りの葉は1/3だけ残す。
- 挿し穂になる茎の切り口を1~2時間ほど水につけておく。
- 湿らせた赤玉土(小粒)に深めに挿す。
- 挿し木した鉢は、日陰に置いて風通しの良い場所で管理する。
- 土が乾かないように水やりをする。
- 1ヶ月ほどして根が生えたら、鉢上げをして日当たりの良い場所に移す。
株分けで増やす時期と方法
ミソハギの株分けは、春(3月~5月)と秋(9月中旬~10月)が適期です。
この時期は、植物の生育が活発で、根付きやすいためです。
ミソハギの株分けは、以下の手順で行います。
- 株を掘り上げて、親株に連なった地下茎を適当な長さに切り分ける。
- 地下茎は短くしすぎないように、親株に近い元の部分で切る。
- 切り分けた株は、鉢や地面に植え付けて水やりをして管理する。
こぼれ種でも増える
ミソハギは、こぼれ種でも増える性質があります。ミソハギの種は、花穂から零れ落ちて土に入り込み、翌年に発芽します。
たくさん増やしたい場合はこぼれ種は便利ですが、一般的にはこぼれ種によって増えすぎてしまい不都合の方が多くなってしまいがちです。
種は自然に地面に落ちる前に採取しておく方が管理をする上では簡単になるでしょう。
まとめ:ミソハギを庭に植えてはいけない理由と適切な育て方
ミソハギは美しい花を咲かせる一方で、増えすぎやすいというデメリットなどによって植えてはいけないと言われることもある植物です。
ただし、ミソハギの特性を知った上で栽培する上ではそれほどデメリットもないので、心配する必要はありません。
ここではミソハギを植えてはいけないと言われる理由のご紹介と、正しいミソハギの育て方についてお伝えしました。
ミソハギを育ててみたい方は、参考にしてぜひ挑戦してみてくださいね。