レディースマントル(アルケミラモリス)はバラ科の多年草で、初夏にかわいらしい黄緑色の小花を咲かせるハーブです。
寒さに強く、病害虫にも強いのでとても育てやすいハーブですが、ミントなどのように有名なハーブではないため育て方に関する情報は少ないのが難点です。
そこでこの記事では、レディースマントルの育て方について、冬越しや夏越しの方法、大きくならない時の対処法などを交えて詳しくご紹介します。
レディースマントル栽培に適した環境づくり
レディースマントルは寒さに強く、暑さに弱い性質を持っているため、栽培環境には気をつける必要があります。
植える場所は、明るい半日陰が好きですが 直射日光が当たりすぎると葉焼けを起こしたり、根が高温になって傷んだりする可能性があります。
一方で、暗すぎると花付きが悪くなったり、病気にかかりやすくなったりします。
暑さが厳しい地域では午前中のみ日が差す東側や、一日中チラチラと木漏れ日が差すような涼しい場所に植えると良いでしょう。 冷涼地では日当たりの良い場所でも半日陰でも場所を選ばず育てられます。
用土づくり
レディースマントルを育てるのに適した用土づくりとしては、水はけが良く腐葉土や堆肥など腐植質の土を作ることを心がけます。
乾燥は嫌いますが水分が溜まりすぎる土壌では根腐れをしてしまいますので、水はけが良く適度な水分を含む土壌で育てるようにします。
植え付けの2〜3週間前に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んでよく耕しておきます。 土づくりをした後にしばらく時間をおくことで分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
水やりと肥料の与え方
レディースマントルは根の乾燥を嫌うので 水切れに注意が必要です。
庭植えの場合は、しっかり根が付いている場合は頻繁にあげる必要はなく、土の中まで乾燥するような晴天が続いた場合にはたっぷりと与えましょう。
ただし、水やりの際には葉や花に水がかからないようにご注意ください。 水滴がつくと太陽光で焼けてしまうことがあるためです。
なお、肥料はあまり必要としません。
庭植えの場合は、植え付けの時に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んでおけば、その後は特に肥料を与えなくても良く育ちます。
レディースマントルの種まきの時期と方法
種まきの時期は、春(3月~5月)と秋(9月~11月)が適しています。
春まきの場合は翌年の夏に花が咲き、秋まきの場合は冬越しをして翌年の春から夏に花が咲きます。
レディースマントルの種まきの方法は、以下のとおりです。
- 種を購入するか、自家採取する。
- 種を2時間~1日程度、水に浸してふやかす。
- 鉢やプランターに用土を入れて平らにならす。
- 種と種の間隔を約5cm程度あけ用土の表面に薄くまく。
- 種を軽く押さえて埋め込む。
- 用土が乾かない程度に霧吹きで水やりをする。
- 日当たりと風通しの良い場所に置く。
2週間~1ヶ月すると発芽してきます。
地植えの時期と方法
レディースマントルの地植えは、春(3月~5月)と秋(9月~11月)が適しています。
以下の手順で行うと良いでしょう。
- 植え付けに適した、日当たりと水はけの良い場所を選ぶ
- 土に腐葉土や堆肥などの有機質を混ぜて栄養を与えて、ふかふかの土を作る。
- 苗と苗の間隔を約30cm程度空けて植え付ける。
- 土が乾かない程度に水やりをする。
- 花が咲く前と咲いた後に液体肥料を与える。
植え替えの時期と方法
植え替えについてですが、秋(9月~11月)に行うのが最適です。
植え替えの方法は、以下のとおりです。
- 根を傷つけないように株を掘り上げる。
- 株を手で引き裂くか、ナイフで切り分けて株分けする。
- 新しい鉢や場所に植える。
鉢植えで育てる方法
レディースマントルを鉢植えで育てる際の方法と注意点についてご紹介します。
鉢の選び方
レディースマントルは根が横に広がる性質があるので、深さよりも幅の広い鉢を選びましょう。 (7〜10号鉢が適しています)
鉢の底には水はけの良い軽石を敷き、鉢底ネットを使って土が流れ出ないようにします。
用土の選び方
排水性の良い用土を好むので、市販の観葉植物用培養土やハーブ用培養土が適しています。
土が重い場合は、パーライトやバーミキュライトを混ぜて軽くすることができます。
中性から弱酸性の土壌を好みますが、一般的な園芸用培養土は通常適したpH範囲にあるのでそれほど気にする必要はありませんが、心配な場合は市販のpHテスターで確認すると安心です。
用土を自作する場合は、園芸用培養土2:ピートモス1:パーライト1くらいの割合で配合すると良いでしょう。
植え付け・植え替えの時期と方法
レディースマントルの植え付け・植え替え適期は、前述したとおり3〜5月か9〜11月ですが、ほかの時期にも苗は出回っているので、入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
植え付け・植え替えの方法は以下のとおりです。
- 鉢に用土を半分くらいまで入れる。
- 苗をポットから取り出して軽く根鉢をくずし、鉢に仮置きして高さを決める。
- 少しずつ土を入れて植え付けます。
- 土の量を鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安に入れる。
- 土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足す。
- 最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与える。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。
夏越しの方法
レディースマントルは耐寒性が強いので冬越しは比較的簡単ですが、夏越しは注意が必要です。
高温多湿に弱く、直射日光が当たりすぎると葉焼けや根腐れを起こす可能性があるためです。
夏越しする場合は、以下のポイントに注意しましょう。
注意点 | ポイント |
日当たりを避ける | 午後から日が差す西側や南側は避けましょう。午前中だけ日が差す東側や一日中チラチラと木漏れ日が差すような涼しい場所が適しています。 |
水やりを調節する | 土の表面が乾いたら鉢底から水が出るくらいたっぷりと与えましょう。ただし、 水滴がつくと太陽光で焼けてしまうので葉や花に水がかからないようにします。また、過湿にも注意しましょう。 |
肥料を控える | 肥料を与えすぎると株が弱って病気にかかりやすくなるので、夏の間は肥料を与えないか少量にします。 |
病気・害虫に注意する | 高温多湿になると病気や害虫に侵されやすくなります。 特にカイガラムシやアブラムシに注意しましょう3。 発見したら早めに駆除してください。 |
冬越しの方法
レディースマントルは耐寒性が強く、-20℃程度まで耐えられるのでそれほど難しくありませんが、冬越しする場合は以下のポイントに注意しましょう。
注意点 | ポイント |
水やりを控える | 過湿になると根腐れを起こす可能性があるので、雨が降らない場合でも月に1回程度で十分です。 |
肥料を与えない | 肥料を与えると新芽が出て寒さで傷んでしまうので、冬の間は肥料を与えないようにします。 |
枯れた葉や茎を取り除く | 冬の期間中は葉や茎が枯れていきます。 枯れた部分は取り除いておきましょう。 病気の予防や春の芽吹きを促進することができます。 |
増やし方
レディースマントルは、種まき以外にも次の方法で増やすことができます。
- 挿し木
- 株分け
それぞれの増やし方については次のとおりです。
挿し木で増やす方法
挿し木の適期は5〜6月頃の開花後か、9〜10月頃の秋です。
実際の手順は以下のとおりです。
- 挿し穂を選ぶ
- 挿し土を用意する
- 挿す
- 管理する
- 植え替える
次に、それぞれのポイントを補足していきます。
挿し穂は、健康な株から新芽が出たばかりの若い枝を選び、長さは10〜15cm程度に切ります。葉は下の方を2〜3枚残して取り除きます。
挿し土は適度な水分を保つ土が適しているので、赤玉土と腐葉土を半々に混ぜた土を用意し、挿し穂の切り口に発根促進剤をつけて挿し土に3〜5cm程度差し込みます。(1つの鉢に2〜3本程度挿します)
直射日光を避けて風通しの良い場所に置き土が乾いたら水やりをしますが、湿りすぎないように注意します。
約1ヶ月程度すると根が出てくるので、根が出たら個々に鉢に植え替えて通常の管理を行います。
株分けで増やす方法
レディースマントルは、株分けで増やすこともできます。 株分けの適期は、4月か10月頃です。 株分けする場合は、以下のポイントに注意しましょう。
- 株を掘り上げる
- 株を分ける
- 植え付ける
株が大きくなったら、根が傷まないように注意しながら鋤やスコップなどで株を掘り上げます。(株を数芽ずつ付けて根を切り分ける際には、清潔な刃物で切るようにします。)
切り分けた株は、土は腐葉土や堆肥などを混ぜて水はけを良い土壌に植え付けます。その後は水やりや施肥など通常の管理を行います。
大きくならない時の対処法
レディースマントルは草丈が30~40cmになる植物ですが、場合によっては大きくならないことがあります。その原因と対処法は以下のとおりです。
原因 | 対処法 |
日当たりが悪い | 直射日光は避けて半日蔭にしますが、暗すぎると成長が悪くなるので日当たりの良い場所に移動させてみましょう。 |
水やりが不足している | 水やりが不足すると根が乾燥して成長が止まってしまいます。土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えますが、水はけが悪くならないように注意します。 |
肥料が不足している | 大きく成長するためには栄養を必要とするので、肥料は欠かせません。春から秋にかけて液体肥料を月に1~2回与えます。開花期には花色を良くするためにリン酸系の肥料を与えると良いでしょう。 |
根詰まりしている | 根詰まりすると成長が止まってしまうので植え替えを行います。根詰まりしているかどうかは、鉢から抜き出して根を確認して根が鉢からはみ出しているか鉢底から出ているか、根が白くなっているかなどの状態を見て判断できます。 |
レディースマントルの育て方に関するQ&A
ここでは、レディースマントルの育て方に関するQ&A(質問&回答)を紹介します。
- 毒性はある?
- 寄せ植えのコツは?
- 注意すべき病気と害虫は?
上記の質問に対する回答をご紹介します。
毒性はある?
レディースマントルには、人間に対する毒性は確認されていません。
西洋では古くからハーブとして利用されており、葉を乾燥させてハーブティーや化粧水などに使われています。
ただし、園芸用として販売されている品種の中には薬用としての効果が薄いものもあるため、ハーブ苗として販売されているものを選ぶことがおすすめです。
なお、動物に対しても毒性はないとされていますが、一部の動物にはアレルギー反応を起こす可能性があります。
特に犬や猫などのペットは、レディースマントルを食べたり舐めたりすることで、嘔吐や下痢などの消化器系の不調を引き起こすことがあるほか、葉に付着した水滴や花粉などで皮膚や目などを刺激することもあります。そのため、ペットが近づかないように注意する必要があります。
寄せ植えのコツは?
レディースマントルは、爽やかな色合いと柔らかな雰囲気で他の花と組み合わせやすい植物でイングリッシュガーデンやナチュラルガーデンにぴったりです。
寄せ植えのコツは、寄せ植えに向いている花と一緒に植えることです。寄せ植えに向いている花は以下のようなものがあります。
寄せ植えに向いてる花 | 補足事項 |
バラ | バラ科のレディースマントルは、バラと相性が良くグランドカバーとしても活躍します。 バラの色や香りを引き立てる効果があります。 |
低木類 | ライラックやデウィンティアなどの紫色やピンク色の花と合わせると、コントラストが美しいです。 低木類は背丈が高くなるので、レディースマントルを前面に植えましょう。 |
リーフプランツ | レディースマントル自体を主役にする場合は、リーフプランツと合わせて緑のグラデーションを楽しむことができます。 フウチソウやカレックスなどの細かい葉や、ティアレラやカンパニュラなどの白やピンクの小花がおすすめです。 |
注意すべき病気と害虫は?
レディースマントルは病害虫の心配はほとんどありませんが、完全に無敵というわけではなく稀にケムシ類に食害されることがあります。
また、高温多湿や水やりのし過ぎによって根腐れを起こして枯れることもあるので注意が必要です。
【ケムシ類】
ケムシ類は、新芽やつぼみを食べてしまう害虫です。
梅雨時期から発生し始めるので、定期的に観察して見つけたらすぐに駆除しましょう。 割り箸や手でつまんで捕まえるか、殺虫剤を散布するようにします。
【根腐れ】
根腐れは最大の敵です。 高温多湿や水やりのし過ぎによって土が蒸れて根が傷んでしまうと、株全体が元気をなくして枯れてしまいます。
まとめ:レディースマントルの育て方
レディースマントルは、鉢植えや庭植えで楽しめる多年草です。育て方は難しくありませんが、根の乾燥や高温多湿に注意する必要があります。
冬越しは寒さに強いので特に対策は不要ですが、鉢植えの場合は霜よけをすると安心です。大きくならない時は、根詰まりや栄養不足が原因かもしれないので確認してみると良いでしょう。
また、種まきのほか、挿し木や株分けでも増やすことができます。上手に育てて、ドライフラワーや切り花としても楽しんでみてくださいね。