美しいピンク色の花と、夜になると葉を閉じる神秘的な動きで知られる「ねむの木」。その魅力的な特性から、庭木として人気があります。
しかし、ねむの木を植える前にはいくつかの重要な注意点を理解しておくことが大切です。繁殖力が非常に強く、管理が難しくなる可能性があるためです。
また、成長が早いため、気づかぬうちに巨木となり、周囲の環境に悪影響を与えることもあります。
本記事では、ねむの木を庭に植える際のデメリットと、よく混同されるエバーフレッシュとの違いについて詳しく解説します。ねむの木の魅力を理解しつつ、将来のトラブルを避けるための参考にしてみてくださいね。
ねむの木とは
ねむの木とはマメ科ネムノキ属の落葉高木で、夜になると葉を閉じる就眠運動をすることや、水鳥の産毛のようなふわふわとしたピンク色の花を咲かせることが特徴です。
日本では東北地方以南に自生し、庭木や街路樹としても利用されます。
中国では夫婦円満の象徴とされ、合歓木という漢字で書きます。花や樹皮は不眠や不安に効くとされる生薬としても使われます。
なお、稀にネムノキの毒性について心配する声が聞こえますが、毒性はありません。ネムノキの毒性や活用法についてはこちらのページで詳しくお伝えしています。
ねむの木を庭に植えてはいけない3つの理由
ねむの木を庭に植えてはいけないと言われることがありますが、主な理由として次の3つが挙げられます。
- 繁殖力が強いため
- 成長が速く巨木になるため
- 剪定や植え替えに弱いため
それぞれの理由について、以下に補足をします。
繁殖力が強いため
ねむの木は秋に種の入った豆を作り、風に飛ばされて周囲に広がります。地面に落ちた豆は割れて発芽し、意図しない場所にいくつも生えてくる可能性があります。
また、巨木になるので広範囲に広がりやすく、隣近所の庭にまでねむの木が繁殖していくことがあります。
成長が速く巨木になるため
ねむの木は成長が速く、高さ10m以上にもなる巨木です。庭に植えると、周囲の景観を損ねたり、日当たりを遮ったりする可能性があります。大きくなると幹の直径が80cmを超えることもあり、伐採に相当な費用と時間がかかります。
また、根が深くて強いので抜くのも難しいです。
剪定や植え替えに弱いため
ねむの木は剪定や植え替えに弱く、傷ついた箇所からの回復が遅いため、形を整えるのが難しい特徴があります。
ねむの木に似た木3選と主な特徴
ネムノキに似た木は、同じマメ科の植物で、葉や花の形が似ているものがいくつかあります。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
- エバーフレッシュ
- オオベニゴウカン
- トキワネム
それぞれの主な特徴について以下にご紹介します。
エバーフレッシュ
エバーフレッシュは、マメ科の常緑高木で中南米に自生します。細長い葉が羽のように見えるのが特徴です。
夜になると葉を閉じる就眠運動をします。春から夏にかけて、黄色いポンポンのような花を咲かせ、花後には赤いサヤの中に黒い種子の入った実を付けます。
日本では観葉植物として人気があります。
オオベニゴウカン
オオベニゴウカンは、マメ科ネムノキ亜科ベニゴウカン属の熱帯性常緑低木です。別名ヒネムとも呼ばれます。高さは2~5m程度で、葉は偶数羽状複葉で対生します。
12月から5月にかけて、雄しべの極端に長い鮮やかな緋色の花頭を付けます。
花は化粧パフに似ており、直径は7~10cm程度です。花後には赤いサヤの中に黒い種子の入った実を付けます。
トキワネム
トキワネムは、ブラジル原産のマメ科ベニゴウカン属の常緑低木です。
葉は羽状複葉で、夜になると閉じます。花はピンク色の羽毛状で、ねむの木の花に似ています。
ねむの木とエバーフレッシュの違いについて
ねむの木とエバーフレッシュは、見た目が似ている植物ですが、以下のような違いがあります。
- ねむの木はマメ科ネムノキ属の落葉樹で、日本や中国などに自生している
- エバーフレッシュはマメ科ピテケロビウム属もしくはコホバ属の常緑樹で、南アメリカ原産
花は一目で違いがわかるほど異なっているほか、育て方も大きくことなるので注意が必要です。
花の違い
ねむの木とエバーフレッシュの花は大きくことなります。主な違いを表にまとめてみました。
花の色 | 花の形 | 花が咲く時期 | |
ねむの木 | ピンク | とさか状に伸びたおしべが特徴的 | 6月から8月 |
エバーフレッシュ | 茶黄色 | 真ん丸の小さな花が集まっている | 4月から9月 |
育て方の違い
ねむの木は落葉樹で冬には葉を落とす一方で、エバーフレッシュは常緑樹で冬でも葉を保ちます。
育て方としては、耐寒性や日照・水やりについて以下のような違いがあります。
耐寒性 | 日照・水やり | |
ねむの木 | 耐寒性があり、-10℃でも枯れない | 直射日光を好み、水切れに強い |
エバーフレッシュ | 非耐寒性で10℃以上を保つ必要がある | 直射日光が苦手で、水を好む |
まとめ:ねむの木を庭に植えてはいけない理由とエバーフレッシュとの違い
ねむの木は美しい花と、夜になると葉を閉じる神秘的な動きが特徴的な樹木ですが、庭に植える際にはいくつかの重要な注意点があります。
強い繁殖力によって周囲に自然に広がることや、急速に成長して10m以上の巨木となり、周囲の環境に影響を与えることがあります。
また、剪定や植え替えに対して過敏であるため、維持管理が難しくなることも挙げられます。
一方、見た目が似ているエバーフレッシュとは、いくつかの明確な違いがあります。
ねむの木は日本や中国に自生するマメ科の落葉高木であり、エバーフレッシュは南米原産の常緑樹です。花の形状や色も大きく異なり、ねむの木はピンク色のとさかのような形をした花を咲かせるのに対し、エバーフレッシュは茶黄色の丸い小さな花をつけます。
育て方にも違いがあります。ねむの木は耐寒性が高く直射日光を好むのに対し、エバーフレッシュは寒さに弱く、10℃以上の環境を必要とし、直射日光を避ける必要があります。水やりの頻度も異なるため、それぞれの特性を理解してから選ぶことが大切です。
ねむの木を庭に取り入れたい場合は、その成長や繁殖の特性を十分に考慮し、広いスペースを確保できる場所に植えるか、鉢植えでの栽培を検討することをおすすめします。
もし似た雰囲気を楽しみたい場合は、より管理しやすいエバーフレッシュなどの代替植物を選ぶことも一つの方法です。
どの植物を選ぶにしても、その特性をよく理解し自分の環境に合った植物選びをすることが、長く美しい庭を楽しむための鍵となります。