エルダーフラワー(学名:Sambucus nigra)は「西洋ニワトコ・セイヨウニワトコ」とも呼ばれる植物で、レンブクソウ科(スイカズラ科)の低木です。
マスカットのような甘い香りがある白くてかわいい花を咲かせるのが特徴的で、ハーブティーやシロップに用いられます。
ただ、エルダーフラワーは特性を知らずに育てると思いがけなく大きくなってしまうこともあるので注意が必要です。
そこでこの記事では、エルダーフラワーの基本的な育て方と、大きくなる杉と防ぐコツや剪定方法を中心にお伝えしていきます。
エルダーフラワーを育てるのに適した環境づくり
エルダーフラワー(セイヨウニワトコ)は風通しと日当たりの良い場所を好みます。
ただし、夏の高温多湿な環境には弱いので、夏期は半日蔭の涼しい場所に移動するか日よけをすると良いでしょう。
エルダーフラワーは病害虫に対して強い種類の植物ですが、適切な処置をせずに放置していると夏に被害が出る可能性があるのでご注意ください。
栽培に適した用土づくり
エルダーフラワーは比較的土質を選ばない植物なのでほとんどの場所で育ちますが、水はけのよい中性~弱アルカリ性の土を好みます。
地植えの場合は、植え付ける前に苦土石灰と堆肥や腐葉土を混ぜ込んでおくことで栽培に適した土を作ることができます。
肥料・水やりのポイント
地植えの場合は、根付いてからは自然の雨水で十分で、肥料も植え付け時に元肥を施すだけで良いのでほとんど気を遣う必要はありません。
種まき時期と方法
エルダーフラワーは日当たりと風通しの良い場所を好みます。
鉢植えでも育てることは可能ですが、生長が早いうえ樹高10mほどに生長するため地植え向きの植物です。
種まきの適期は、春(3月~5月)、秋(9月~10月頃)で、種を浅く蒔き、発芽までは乾燥させないように水やりをします。発芽したら間引きをして、本葉が4枚ほどになったら鉢上げします。鉢上げした苗は、翌年の春に地植えにします。
エルダーフラワーを苗から育てる場合は、春か秋に植え付けます。苗は根元から10cmほど離して植えるのが望ましいです。
根付くまでは水やりをこまめに行いますが、根付いたら水やりは必要ありません。
ベランダ栽培や鉢植え・プランターでの育て方のポイント
エルダーフラワーは生長が早く大きくなる植物ですが、鉢植えやプランターでの栽培も可能です。
ベランダ栽培や鉢植え・プランターでの育て方のポイントは以下のとおりです。
- 鉢やプランターは、直径30cm以上、深さ40cm以上のものを選ぶ
- 水はけの良い用土を用意する(市販の培養土や赤玉土などがおすすめ)
- 土の表面が乾いたらたっぷりと水やりを行う
- 花が咲き終わった後の梅雨入り前と、実が生った後の9月から10月頃に肥料を与える
- 化成肥料や有機肥料などを株元にまく
なお、根が伸びるのでプランターは底に穴が開いているものを選び、水やりは鉢底から水が流れ出るくらいを目安にたっぷりと与えるようにします。
栽培自体はとても簡単ですが、エルダーフラワーは大きくなるので鉢植えやプランター栽培では特に注意が必要です。
エルダーフラワーの植え替えの時期と方法
エルダーフラワーは生長が早いので、鉢植えの場合は根が鉢いっぱいにならないように、1~2年に1回植え替えをする必要があります。
植え替えの時期は3月~4月が最適で、植え替えの方法は以下のとおりです。
- 植え替える前に、エルダーフラワーにたっぷりと水やりしておく
- 植え替える鉢は、現状の鉢よりも1回り大きなものを用意する
- 鉢に土を入れて、エルダーフラワーの根元に合わせてくぼみを作る
- エルダーフラワーを現在の鉢から抜き取り、古い土や傷んだ根を取り除く
- 新しい鉢にエルダーフラワーを入れて、根元を土で覆う
- 土が空気に触れないように軽く押さえる
- 水やりをして、日陰に置いて様子を見る
特に難しいことはありませんが、植え替え後は水切れに注意してください。
剪定・切り戻しの時期と方法
エルダーフラワーは、剪定や切り戻しをすることで枝の生長を促進し、花や果実の収量を増やすことができます。
剪定・切り戻しの時期は落葉後の11月から2月の間ですが、この時期には植物は休眠状態になっているので傷が回復しやすくなります。
エルダーフラワーの剪定・切り戻しの方法は、以下のとおりです。
- 伸びた枝や細い枝などを思い切って切り落とす
- 幹に陽射しが当たり、風通しの良い環境にする
- 切った枝を挿し木にする
※全ての茎を地際から強く切り戻すこともできますが、収量が減る可能性があるので注意してください。
上記のポイントを押さえることで、適切な剪定・切り戻しが可能となります。
エルダーフラワーが大きくなりすぎるのを防ぐコツ
庭植えでもそうですが、鉢植えやプランターで育てる場合は特に、エルダーフラワーが大きくなりすぎるのを防ぎたいところです。
何もせずにそのまま育てていると大きくなりすぎてしまうこともあるので、小さく育てるために以下の対策を行うと良いでしょう。
- 鉢やプランターは、直径30cm以上、深さ40cm以上のものを選ぶ。
- 植え付け時に根の先端を1~2cm程度切り落とす。(生長を抑えることができます)
- 剪定時に枝先を10~15cm程度切り戻す。(枝ぶりがよくなる効果があります)
エルダーフラワーは香りも良く虫除け効果もあるので、鉢植えやプランターでの栽培でも楽しみたいハーブですが、大きくなりすぎるのが難点です。
大きくなり過ぎないように育てる際の参考にしていただければと思います。
挿し木で増やす方法
エルダーフラワーは、春か秋に挿し木をすることで増やすことができます。
挿し木で増やす方法は以下のとおりです。
- 樹木から新芽が出た枝を探して、先端から10~15cmほど切り取る
- 切り口は斜めに切り直して、植物成長調整剤に30分ほど浸ける
- 赤玉土が入った挿し木用の箱に、10cmくらいの間隔をあけて刺す
- 水やりは乾燥しない程度にして、半日陰の場所で管理する
根が出るまでには2~3ヶ月かかることがありますので気長に待ちましょう。根が出たら、鉢や庭に植え替えてOKです。
夏越しの注意点
エルダーフラワーは暑さや乾燥に弱いので夏越しの際には以下に挙げる対策が必要です。
- 風通しの良い場所に置く
- 日陰に移動する
- 水やりは朝と夕方にする
- 乾燥しないように霧吹きをする
- 葉や枝が枯れたら切り取る
これらの対策を行うことでエルダーフラワーは夏越しできるでしょう。
無事に夏越ができて秋になったら黒い実がなりますので、収穫を楽しむことができます。
耐寒性と冬越しの方法
エルダーフラワーは冬には落葉する樹木です。冬越しの際には、以下の点に注意が必要です。
- 霜や雪が降る地域では、根元に土や落ち葉をかぶせる
- 風が強い場所では、枝を束ねて支柱を立てる
- 植え替えは春に行う
- 剪定は花が終わった後に行う
これらの対策を行うことでエルダーフラワーは冬越しできます。
春になったら新芽が出てきますので、それくらいのタイミングで水やりや肥料を与えてあげましょう。
エルダーフラワーの育て方に関するQ&A
ここでは、エルダーフラワーの育て方に関するQ&A(質問&回答)を紹介します。
- ブラックレースの育て方に違いはある?
- エルダーフラワーの苗はホームセンターに売ってる?
- 花が咲かない時はどうしたら良いか?
上記の問いについて詳しく回答していますので、参考にしてみてくださいね。
ブラックレースの育て方に違いはある?
ブラックレースは重厚感のある黒っぽい葉に淡いピンクの花が映えてシックでおしゃれな雰囲気を作るだけでなく、香りも良くてハーブとしても利用できることから、エルダーフラワーの中でも特に人気のある品種です。
このブラックレースの育て方は基本的にはエルダーフラワーと同じなので、これまで記載してきたとおりの育て方で問題ありません。
ただし、ブラックレースは成長が遅くて小型である点(とはいえ、3m程度まで成長します)はエルダーフラワーと異なるので、栽培の際は考慮に入れておきたいところです。
エルダーフラワーの苗はホームセンターに売ってる?
エルダーフラワーの苗は、地域によってはホームセンターで売ってるところもあります。
また、エルダーフラワーは品種によって葉の形や色が異なりますので、ホームセンターで苗を購入する場合は植物の状態やラベルをよく確認しておくと良いでしょう。
花が咲かない時はどうしたら良いか?
エルダーフラワーは4月~5月にかけて開花しますが、もしも花が咲かない場合は、以下の点に注意してみてください。
注意点 | 理由 |
日当たりは良好にする | 半日以上の直射日光が必要で、日陰になると花付きが悪くなるため。 |
肥料は控えめにする | 過剰な肥料は葉ばかりが茂って開花しにくくなるため。(有機質の肥料を春と秋に与える程度で十分です) |
剪定は適切に行う | 花は前年の枝に咲くので、剪定は花後に行います。(枝を半分程度に切り戻すと、翌年の花付きが良くなります) |
上記の注意点を改善してエルダーフラワーの花が咲いたら、ぜひハーブティーやシロップ作りを楽しんでみてくださいね。
まとめ:エルダーフラワーの育て方と注意点について
エルダーフラワー(西洋ニワトコ・セイヨウニワトコ)は、初夏(4月~5月)に真っ白な花を咲かせる樹木です。
育てる環境としては、日当たりと風通しの良い場所、水はけの良い中性~弱アルカリ性の土壌を好みます。
地植えでも鉢植えでもプランターでも栽培は可能ですが、樹高10mになることを考慮すると地植えの方が適していると言える植物です。
エルダーフラワーの栽培はそれほど難しくないので、ぜひ挑戦してみてくださいね。