クローブ(チョウジ)は古くから香辛料や生薬として珍重されてきた歴史があり、一般的にはチャイなどに使われることが有名なハーブですが、自宅でも栽培することもできます。
温かくて湿った気候を好む植物なので、日本では地植えではなく鉢植えで育てるのがおすすめです。
この記事では、クローブの栽培条件や苗や種からの育て方のポイントを紹介します。クローブを自分で育ててみたいという方は、ぜひ参考にしてください。
クローブ(チョウジ)とは
クローブは、インドネシアのモルッカ諸島が原産地のフトモモ科の常緑小高木で、日本ではチョウジノキと呼ばれています。
クローブにはオイゲノールという成分が多く含まれており、抗菌・鎮痛・消化促進などの効果があるため、香辛料や生薬として利用されています。
そのほか、料理やお菓子に使われたり、アロマテラピー、タバコ、歯痛薬などにも応用されています。クローブの香りは強くてスパイシーで、肉料理やカレー、チャイなどに合います。
クローブ栽培に適した環境づくり
ここではクローブ栽培に適した環境づくりのポイントを、用土づくり・水やり・肥料に分けてご紹介します。
用土づくり
クローブは排水のよい砂質土を好むので、市販の用土に砂やパーミキュライトを混ぜて水はけを良くすると良いでしょう。
鉢植えで育てる場合は、鉢底に岩や砂利を敷いて水はけを良くします。
土のpHは5.5~6.5が適しているので、酸性度が高すぎる場合は石灰を混ぜて中和します。
水やり
クローブは水を好む植物ですが、過湿には注意が必要です。鉢の土が乾いたらたっぷりと水を与えますが、鉢皿に流れた水は捨てます。
夏は2~3日ごと、それ以外は4~5日ごとを目安に水やりをします。乾燥に弱いので、表土が乾かないようにします。
冬は暖房のきいた室内で管理しますが、暖かすぎると乾燥しやすいので霧吹きで葉水を与えると良いでしょう。
肥料の与え方
クローブは生長が遅く、花が咲くまでは4~5年かかります。その間は、春と夏に有機肥料を与えることが重要です。
グアノ、ミミズ堆肥、肥料などの有機肥料を月に1~2回施します。化学肥料は根や葉を傷める可能性があるので避けます。
花が咲いたら、開花結実させると樹が弱ってしまうので肥料を控えます。蕾はこまめに収穫して乾燥させます。
種まき時期・方法
クローブはインドネシアが原産地のため温暖な気候を好む植物で、日本での種まきは春(4月~5月)か秋(9月~10月)に行うのが適していますが、地域によって種まき時期を調整する必要があります。
種まき方法は簡単で、市販の用土に直まきし、軽く覆土(覆土の厚さは2cm以下)します。鉢やプランターに種まきする場合は、ラップをかぶせて発芽を促します。
発芽したらラップを外し、日当たりの良い場所に移します。水やりは土が乾いたらたっぷりと行いますが、水はけの良い環境を好むので、鉢皿に水が溜まらないように注意します。
肥料は小さいうちは必要ありませんが、大きくなったら液体肥料を与えます。30cmくらいに育ったら大きめの鉢に植え替えます。
地植えの時期と方法
地植えは春か秋に行うのが適しています。春の場合は4月~5月、秋の場合は9月~10月に行うと良いでしょう。
地植えする場所は、日当たりが良くて水はけの良い場所を選びます。土は有機質に富んだ栄養豊富な土が適しているため、市販の花用の培養土や赤玉土と腐葉土を6:4の割合で混ぜ合わせたものがおすすめです。
苗を鉢から取り出して根をほぐします。根が絡まっている場合は、根が傷つかないように注意してやさしくほどいてあげます。
地植えする穴は、苗の根の長さよりも深く掘ります。穴の底に少し土を入れて苗を置き、周りに土をかぶせて固めます。株元から5cmほど離して水やりをします。
クローブを鉢植え・プランターで育てる方法
日本でのクローブ栽培は、冬は室内で管理する必要があるところがほとんどなので、鉢植えやプランターでクローブを育てる人も多いでしょう。
クローブを鉢植え・プランターで育てる方法は次のとおりです。
鉢やプランターの選び方
クローブは大きくなる植物なので、大きめの鉢やプランターを選びます。直径30cm以上、深さ40cm以上のものがおすすめです。
水はけが悪いと根腐れの原因になってしまうため、鉢やプランターには穴が空いているものを選びます。
鉢やプランターの底には鉢底石やネットを敷いて水はけを良くします。
育て方のポイント
クローブは排水のよい砂質土の土壌を好みます。市販の花用の培養土や赤玉土と腐葉土を6:4の割合で混ぜ合わせたものを使うと良いでしょう。
弱酸性から中性の土壌を好むので、土には苦土石灰などを混ぜて弱酸性にします。
鉢の土が乾いたら、たっぷりと水を与えます。夏場は乾燥しやすいので、毎日チェックして必要に応じて水やりをします。冬場は少し乾燥気味に管理し、水の与え過ぎに注意します。
肥料はほとんど必要ありませんが、鉢植えやプランターの場合は生育期に液体肥料を2週間に1回程度与えます。化成肥料を使う場合は、月に1回与える程度で十分です。
クローブの花が咲く時期と香り・花言葉
クローブは4~5年で花を咲かせることができます。
花が咲く時期は春から夏にかけてです。花の色は白やピンクで、小さな星型の花が集まって咲きます。
花の蕾は香辛料として有名で、スパイシーで甘い香りがしますが、花も同じような香りがあり蕾よりもやや弱いです。
クローブの花言葉は、「貴重さ」「神聖」「高貴」「威厳」「尊厳」などです。これらの花言葉は、クローブの歴史や価値に由来しています。クローブは古くから香辛料や生薬として重宝され、大航海時代には金と同等の価値があるとされていました。
また、クローブは宗教的な意味も持ち、古代エジプトではミイラ作りに使われたり、中国では仏教のお供え物に使われたりしました。クローブは貴重で神聖な植物として、人々に敬意を表す花でもあります。
夏越しの注意点
クローブはインドネシアが原産地で、温暖な気候を好む植物なので夏越しに際しては特に気にすることはありませんが、以下の点に注意しておくと良いでしょう。
- 水やり
- 肥料
- 日焼け
それぞれのポイントを次にお伝えしていきます。
1.水やり
クローブは水を好む植物です。鉢の土が乾いたら、たっぷりと水を与えます。夏場は乾燥しやすいので、毎日チェックして必要に応じて水やりをします。
ただし、水はけの良い環境を好むので水たまりができないように注意します。鉢皿に水が溜まらないようにしましょう。
2.肥料
肥料はほとんど必要ありませんが、鉢植えやプランターの場合は生育期に液体肥料を2週間に1回程度与えます。化成肥料を使う場合は、月に1回与える程度で十分です。
3.日焼け
クローブは日光を好む植物ですが、直射日光が強すぎると葉が日焼けしてしまうことがあります。特に午後の日差しが強い時間帯は、カーテンや日よけなどで遮光してあげましょう。
耐寒性と冬越しの方法
クローブは耐寒性が低く、0℃以下の寒さには弱いです。冬越しする場合は、以下の点に注意してください。
鉢植えやプランターの場合
鉢植えやプランターの場合は、11月頃から室内に取り込みます。取り込む際は、鉢裏にナメクジなどの害虫がついていないかよく確認して、鉢もきれいに洗ってから取り込みましょう。
室内では、暖房の効いた明るい場所で育てます。窓際など日光が当たる場所がおすすめです。ただし、直射日光が強すぎると葉が日焼けしてしまうことがあるので、カーテンや日よけなどで遮光してあげましょう。
水やりは土がカリカリに乾かない程度に控えます。水はけの良い環境を好むので、水たまりができないように注意します。肥料は冬の間はあげなくてもかまいません。
春になったら新芽が出るので、外に出して日光に慣らしていきます。
地植えの場合
地植えの場合は、寒くなる前に掘り上げて根鉢が収まる大きさの鉢に植え替えてください。
根を切ることになるため、地上部も剪定してバランスを取りましょう。
鉢に植え替えたら、室内に取り込んで管理します。室内での管理方法は、鉢植えやプランターと同じです。
クローブの増やし方
クローブを増やす方法は、種まきのほかに
- 挿し木
- 株分け
この2つの方法があります。それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
挿し木で増やす方法と時期
クローブの挿し木は春から夏に行います。
枝を20cm程度に切り、赤玉土や砂などの排水の良い土に挿します。挿し穂の下葉は取り除きます。
挿し木した鉢にラップをかぶせて発根を促します。ラップをかぶせることで、温度と湿度を一定に保つことができます。
発根したらラップを外し、日当たりの良い場所に移します。水やりは土が乾いたらたっぷりと行いますが、水はけの良い環境を好むので、鉢皿に水が溜まらないように注意します。
肥料は小さいうちは必要ありませんが、大きくなったら液体肥料を与えます。30cmくらいに育ったら大きめの鉢に植え替えましょう。
株分けで増やす方法と時期
クローブの株分けは春から夏に行います。
株分けする前に、鉢から苗を取り出して根をほぐします。根が絡まっている場合は、やさしくほどいてあげます。根が傷つかないように注意してください。
株分けする際は、根と茎が十分にある部分を切り離します。切り離した部分は、新しい鉢に植え付けます。
水やりは土が乾いたらたっぷりと行いますが、水はけの良い環境を好むので、鉢皿に水が溜まらないように注意します。
肥料は小さいうちは必要ありませんが、大きくなったら液体肥料を与えます。
収穫時期と方法
クローブの収穫時期は、夏と冬の2回です。花が咲く前の蕾を乾燥させたものが製品として出回っています。
収穫する際は、以下の点に注意してください。
- 蕾はピンク色になって開く前に収穫。(開いてしまうと香りが弱くなるため)
- 蕾は枝から丁寧に摘み取る。
- 摘み取った蕾は天日干しするか、熱気室で乾燥させる。
クローブは香辛料や生薬として利用できるだけでなく、花も美しく香りも良い植物です。また、クローブティーとしても活用できます。
クローブのお茶の作り方はこちらのページで詳しくお伝えしています。
クローブの育て方に関するQ&A
ここでは、クローブの育て方に関するQ&A(質問&回答)を紹介します。
- 家庭菜園でも栽培できる?
- クローブピンクも育て方は同じ?
- 苗はどこで販売してる?
上記の問いについて詳しく回答していますので、参考にしてみてくださいね。
日本の家庭菜園でも栽培できる?
クローブは家庭菜園でも栽培できる植物ですが、日本では気候や環境に合わせて管理する必要があります。
クローブはインドネシアが原産地で温暖な気候を好む植物なので、日本の多くの地域では冬期間は室内で管理する必要がありますが、特に難しいことはありません。
家庭菜園で栽培しても、収穫して香辛料や生薬として利用できるだけでなく、花も美しく香りも楽しめるでしょう。
クローブピンクも育て方は同じ?
クローブはトウガラシ科の熱帯植物で、クローブピンクはナデシコ科のカーネーションの原種なので、クローブピンクの育て方は、クローブとは少し異なります。
育て方の違いをまとめると、以下のようになります。
クローブは水はけのよい土壌と日当たりのよい場所を好む一方で、クローブピンクは石灰質の土壌と夏は半日陰の場所を好みます。
それ以外はそれほど大きな違いはありません。
また、使用法も異なり、クローブは花芽を香辛料として使いますが、クローブピンクは花びらを食用やポプリに使うのが一般的です。
苗はどこで販売してる?
クローブの苗は、一部の園芸店やネットショップなどで購入することができます。
園芸店ではクローブの苗を扱っている店は多くないので、ネットショップで探す方が早いでしょう。
たまにメルカリでもクローブの苗を販売している人を見かけることはあるので、確認してみても良いかもしれません。
まとめ:クローブ栽培条件と育てるポイント
クローブは、インドネシアのモルッカ諸島が原産地のフトモモ科の常緑小高木です。
排水のよい砂質土、日当たりのよい温かな場所で育てるとよく育ちますが、耐寒性が低いので冬は暖房のきいた室内で管理します。
夏越しはそれほど気にする必要はありませんが、水やりや肥料の与え過ぎには注意しましょう。
クローブは花が咲いたら蕾を収穫し乾燥させることで、香辛料や生薬として利用できます。