ヤグルマギク(コーンフラワー)はキク科の一年草で、青紫色の美しい花を咲かせます。その花色は最高級のサファイアにも例えられ、マリー・アントワネットやドイツの国花としても知られています。
しかし、ヤグルマギクは見た目だけでなく、育て方も魅力的な植物です。病虫害に強く丈夫で、種まきや切り戻しも簡単にできます。また、ドライフラワーとしても楽しめるので切り花やプレゼントにもおすすめです。
そんなヤグルマギクを育てるには、どんなことに気をつければいいのでしょうか?また、ヤグルマギクは本当に一年草なのでしょうか?
この記事では、ヤグルマギクの特徴や育て方のコツ、播種の季節や多年草説について解説します。ぜひ参考にしてください。
一年草のヤグルマギクが多年草と言われがちな理由
ヤグルマギク(コーンフラワー)は一年草ですが、多年草だと思っている人は意外と多いです。
これは、ヤグルマギクの仲間に「宿根ヤグルマギク」とも呼ばれる多年草のセントーレアという植物があるためです。園芸店でよく見かけるヤグルマギクは「一年草セントーレア」とも呼ばれ、多年草のセントーレアとは区別されています。
一年草セントーレア(=ヤグルマギク)は、夏越しや冬越しをすることが難しく、一度花が終わると枯れてしまいます。しかし、こぼれ種から発芽することがあるため、翌年も同じ場所で花を楽しめることがあります。
このようにして毎年咲くことから、多年草だと勘違いしているケースも見受けられます。
ヤグルマギク栽培に適した環境づくり
ヤグルマギクの栽培に適した環境は、日当たりと風通しのよい場所と水はけの良い土です。
用土づくり、水と肥料の与え方のポイントは以下のとおりです。
用土づくり
水はけの良い土を用います。市販の草花用培養土やハーブ用の土でも問題なく育ちます。赤玉土や腐葉土などを混ぜて作ることもできます。
水やり
ヤグルマギクは乾燥気味を好むので多湿にならないようにするのがポイントです。
地植えの場合は根付いてからの水やりの必要はなく降雨のみで問題ありません。鉢植えの場合は、土の表面が乾いてきたらたっぷりとを目安に水やりをしましょう。
肥料の与え方
地植えの場合は、肥料の必要はほとんどありません。鉢植えの場合は、置き肥や草花用の液体肥料を少なめに与える程度で充分育ちます。
ヤグルマギクの播種の季節(種まき時期)と方法
ヤグルマギクの播種の季節は9月~10月が適時です。
直まきにするか、育苗ケースなどにまいて本葉が6~8枚程度になったら移植します。ポットに数粒まいて良い芽を残して育苗すると移植の手間が省けます。
播種の方法は以下のとおりです。
- 種まき用土を育苗トレイやポットの8分目まで入れる。
- 種まき用土を湿らせる。
- 用土の中心に深さ1cmの穴を開ける。
- 穴に種を2~3粒まき、薄く土をかける。
- 水やりをして半日陰で乾燥させないように管理する。
- 発芽したら日なたに移す。
- 本葉が1~2枚の時に間引きをして一本立ちにする。
- 本葉が6~8枚になったら庭や鉢に植え付ける。
上記の方法で発芽しますが、万が一発芽しない場合は次の項を参考にしてみてください。
ヤグルマギクの芽が出ない時の対処法
ヤグルマギクの種は発芽率が高く、8~10日で発芽しますが、種の古さや土の状態、水やりのし過ぎなどによって芽が出ないこともあります。
芽が出ない時には以下の点をチェックしてみましょう。
種の鮮度 | 古い種だと発芽率が低くなってしまいます。 |
水やりの頻度 | 乾燥させすぎると発芽しないし、水をやりすぎると種が流れたり腐ったりします。 |
温度 | ヤグルマギクの発芽適温は15~20℃です。低温や高温になると発芽しないことがあります。 |
地植えの時期と方法
ヤグルマギクの地植えの時期は、秋まきであれば11月までに、春まきであれば4月~5月に行います。
地植えするときは以下の方法を参考にしてください。
- 植え付ける場所を深さ30cm、直径30cmほど掘り返す。
- 苦土石灰をひとつかみ程度と腐葉土や牛ふん堆肥などの有機質をよく混ぜ込む。
- 株間25~30cmで植え付ける。
- たっぷりと水やりをする。
- 丈が高くなる品種は支柱を立てる
ヤグルマギクは株間をしっかり空けて植えることが大切です。株間が狭いと風通しが悪くなり、病気や害虫にかかりやすくなります 。また、花が密集して見栄えが悪くなることもあります。
鉢植え・プランターで育てる方法
ヤグルマギクは地植えだけでなく鉢植えやプランターで育てることも可能です。
鉢植えでは5号鉢に1株、プランターでは60cmのプランターに3株を目安に植え付けると良いでしょう。
鉢植え・プランターで育てる方法は以下のとおりです。
- 鉢底ネットを敷いて鉢底石を入れる。
- 土は市販の培養土か、赤玉土小粒7:腐葉土3の割合で混ぜた土を使う。
- 日当たりと風通しの良い場所に置く。
- 水やりは土の表面が乾いてから行い、水はけの良い状態を保つ 。
- 肥料は開花中に月に2回程度、液体肥料を与える。
植え替え時期と方法
ヤグルマギクの植え替え時期は、秋まきであれば11月~12月、春まきであれば4月~5月に行います 。
植え替える手順は鉢植え・プランターで育てる方法に記載した方法と変わりはありませんが、植え替え時の注意点を列挙します。
- 植え替える前に水やりをしておき、根を傷めないように苗を取り出す。
- 根が回っている場合はほぐしておく。
- 新しい用土を用いる。
ヤグルマギクの花が咲く時期と香り・花言葉
ヤグルマギクの花期は4月~7月(最盛期は5月)です 。花色は青、白、ピンク、紫など豊富で、八重咲きの品種が多く流通しています。花は切り花やドライフラワーとしても楽しめますが香りはほとんどありません 。
ヤグルマギクの花言葉は「優美」「繊細」「信頼」「教育」などがあります。
3月1日、3月5日、3月22日、8月2日の誕生花、ドイツの国花としての側面もあります。
古代エジプトのツタンカーメン王の棺の上にはヤグルマギクなどで作った花輪が見つかったとも言われているほど歴史の長い花です。
剪定(切り戻し・摘心・花がら摘み)する方法と目的・時期
ヤグルマギクを剪定(切り戻し・摘心・花がら摘み)する方法と目的・時期は以下のとおりです。
切り戻し | 花期が終わったら茎を根元から切り戻します。これは、枯れた茎を取り除いて見栄えを良くするために行います 。 |
摘心 | 草丈が15cmほどになったら、先端の芽を摘み取ります。これは、枝分かれを促して花数を増やすために行います 。 |
花がら摘み | 花が終わったら花がらを摘み取ります。これは、種をつけないようにして株の力を残し、次の花を咲かせるために行います 。 |
ヤグルマギクは夏越しできない
ヤグルマギクは梅雨前までに枯れる一年草なので夏越しはできません。
こぼれ種でも増えますが、種を採取しておけば発芽率も高く毎年楽しむことができます。
次はヤグルマギクの冬越しの方法をお伝えします。
耐寒性と冬越しの方法
ヤグルマギクは耐寒性が強く冬越しも可能です。
冬越しをする場合は以下の方法を参考にしてください。
【地植えの場合】
11月までに植え付けておきます。根がしっかりと張っていれば、自然の降雨だけで冬越しができます 。
【鉢植えの場合】
鉢底に砂利などを敷いて水はけを良くします。寒風や凍結から守るために、鉢カバーやビニールなどで覆うと良いでしょう 。
ヤグルマギクの増やし方
ヤグルマギクを増やす方法について、
- 挿し木・挿し芽や株分け
- こぼれ種
上記2つについてお伝えしていきます。
挿し木・挿し芽や株分けはできない
ヤグルマギクは挿し木・挿し芽や株分けで増やすことはできません。
増やしたい場合は、次に記載するこぼれ種によるか、種を収穫して種まきするしかありません。
こぼれ種でも増える
ヤグルマギクを増やすには種まきによる方法しかありませんが、こぼれ種でも増えるので種を収穫しなくても増やせることがあります。
たた、こぼれ種よりも種を収穫して条件の良い時に種まきをする方が発芽率は高くなるので、たくさん増やしたいという場合は種を収穫しておいた方が良いでしょう。
種の収穫時期と方法
ヤグルマギクの種は、花が枯れて茶色くなりドライフラワーのようにパサパサになった頃が収穫のタイミングです。
果実のまわりを剥くと小さなイカのような形の種が出てきます。採取した種は紙袋などに入れて涼しい場所で秋まで保存してください。
種の収穫は晴れた日を選んで行うと良いです。
ヤグルマギクの花の収穫時期と方法
ヤグルマギクの収穫時期と方法について、用途別にまとめました。
切り花 | 花が咲き始めたら茎を切って水に挿します。水替えを毎日行うと長持ちさせられます。 |
ドライフラワー | 花が完全に開いたら茎ごと切って風通しの良い日陰で吊るします。数日~1週間程度でドライフラワーになります。 |
エディブルフラワー | 花が咲いたら花びらを摘んで水洗いしてからサラダやケーキなどにトッピングします。食用として育てられている苗から育てたものに限り食べることができるので、食用可能と確認できたもの以外は食べないでください。 |
収穫したヤグルマギクはハーブティーとしても楽しめます。ヤグルマギクのハーブティーの作り方はこちらのページで詳しくお伝えしています。
ヤグルマギクの育て方に関するQ&A
ここでは、ヤグルマギクの育て方に関するQ&A(質問&回答)を紹介します。
- ヤグルマギクと矢車草(ヤグルマソウ)の違いは何ですか?
- 草丈はどれくらいになる?
- 矢車菊のおしべを刺激すると何が起きるか?
上記の問いについて詳しく回答していますので、参考にしてみてくださいね。
ヤグルマギクと矢車草(ヤグルマソウ)の違いは何ですか?
ヤグルマギクと矢車草(ヤグルマソウ)はよく似た名前ですが、別の植物です 。
矢車菊(ヤグルマギク) | 矢車草(ヤグルマソウ) | |
種類 | キク科ヤグルマギク属の一年草 | ユキノシタ科ヤグルマソウ属の多年草 |
花 | 花色が豊富で八重咲きの品種が多くある | 白やピンクの一重咲きの花 |
好む環境 | 日当たりが良い場所を好む | 半日陰を好む |
間違われることが多いですが、性質はそれほど似ていません。
草丈はどれくらいになる?
ヤグルマギクの草丈は品種によって異なりますが、一般的には30~100cm程度になります。
高性種は1m近くにもなることがありますが、矮性種は30cm以下に抑えられます。
栽培する場所や目的に合わせて品種を選びましょう。
矢車菊のおしべを刺激すると何が起きるか?
矢車菊のおしべを刺激すると、花びらが閉じてしまう現象が起きます。
これは、おしべに触れると電気信号が発生し、花びらの細胞内圧が変化することで引き起こされると考えられています。この現象は、昆虫などによる受粉を促すための仕組みだと言われています。
まとめ:ヤグルマギクの育て方のポイント
この記事では、ヤグルマギク(コーンフラワー)の育て方についてご紹介しました。
ヤグルマギクは、青紫色の美しい花を咲かせるキク科の一年草です。病虫害に強く丈夫で、種まきや切り戻しも簡単にできます。
また、ドライフラワーとしても楽しめるので、切り花やプレゼントにもおすすめです。
育てるには、日当たりと水はけのよい場所を選び土壌を軽く保湿することが大切です。播種は春か秋が適期で、冬越しも可能です。ただし、麦畑などに侵入すると強害雑草となることがあるので注意が必要です。
また、ヤグルマギクは一年草とされていますが、実際には多年草として越冬することもあります。これは品種や気候条件によって異なりますが、多年草として栽培する場合は冬場の寒さ対策や株分けが必要です。
以上が、ヤグルマギク(コーンフラワー)の育て方についてのまとめです。青紫色の美しい花を咲かせるヤグルマギクをぜひ育ててみてください。