ヘンルーダは、「ルー(rue)」あるいは「コモンルー(common rue)」とも呼ばれる南ヨーロッパ原産の常緑性多年草です。(学名はRuta graveolens)
虫よけやネコよけの効果が期待できることから気になる人は多いですが、一般的に知られていないので育て方を知りたいという方はきっと多いでしょう。
ヘンルーダの育て方はポイントさえ押さえれば簡単に育てられますし、挿し木でも増やすことができるので初心者にも問題なく栽培できます。
この記事では、ヘンルーダの育て方や挿し木での増やし方、剪定の方法などについて詳しくお伝えします。
ヘンルーダを育ててみたい方はぜひ参考にしてみてくださいね。
ヘンルーダ栽培に適した環境づくり
ヘンルーダ栽培に適した環境は、日当たりと水はけの良い場所で、アルカリ性の土壌です。
なお、温度は15~30℃、湿度は60~70%程度が生育環境としては理想です。
乾燥に強いハーブですが、水やりや肥料も適切に行って健康な株に育てるための用土づくりと水・肥料の与え方について具体的にお伝えします。
用土づくり
地植えの場合は、植え付ける2週間前に苦土石灰をまいて土の酸度を中和します。
数日寝かせてなじませたら、腐葉土を混ぜて通気性をよくしてください。
鉢植えの場合は、赤玉土7:腐葉土3の基本的な配合の培養土を作りましょう。用土に肥料分が入っていない場合は、少量の緩効性化成肥料を混ぜ込んでおきます。
水やりと肥料の与え方
ヘンルーダは乾燥気味に管理します。地植えの場合は水やりの必要はありませんが、鉢植えの場合は土の表面が乾いているのを確認してからたっぷり水やりをしてください。
水はけの悪い場所では根腐れを起こす可能性がありますので、注意してください。
多肥を嫌いますので、春と秋に緩効性化成肥料を施す程度で十分です。
種まき時期と方法
ヘンルーダ(ルー/ ガーデンルー)の発芽温度は20度前後なので、春から初夏にかけてが種まきの適期です。
種をポットに蒔いて、薄く土をかぶせて水やりをすれば完了ですが、種は小さくて軽いので風で飛ばされないように注意が必要です。
なお、直接庭や鉢に種をまいても構いません。
種まき後は、その後は土が乾いたら水やりを行うようにします。約2週間ほどすると発芽するので、間引きをして丈夫なものだけを残します。
本葉が2〜3枚になったら、鉢や庭に定植します。定植する際は、株間を50cmほどあけておきましょう。
ヘンルーダの種まきは簡単ですが、種が飛ばされないように注意することと、水やりや土の管理に気をつけることがポイントです。
地植えの時期と方法
ヘンルーダは、地植えにするとより丈夫に育ちます。地植えにする場合は真夏や真冬は避け、春(4月中旬~5月)か秋の暖かい日(9月~10月頃)に行うのがおすすめです。
ヘンルーダの地植えにする場合は、以下の手順で行います。
- 日当たりと水はけの良い場所を選ぶ。
- 酸性の土を嫌うため、予め苦土石灰をまいて土の酸度を中和しておく。
- 植え付ける2週間前に、株元の2~3倍の大きさの植穴を掘る。
- 腐葉土や緩効性化成肥料を混ぜて、肥沃で水はけの良い土を作る。
- 苗を鉢から取り出し、根をほぐす。
- 根が回っている場合は切って整理する。
- 植穴に苗を入れて、根元と土面が同じ高さになるように調整する。
- 土をかぶせて固め、たっぷりと水やりをする。
- 複数植える場合は株間は50cm程度空けて植える。
地植えは簡単ですが、時期と場所と用土に注意することがポイントです。地植えにすると、より丈夫で芳香豊かなハーブに育ちますよ。
鉢植え・プランターで育てる方法
地植えだけでなく鉢植えやプランターでも育てることができます。
鉢植えやプランターにする場合は、水はけの良い用土を用意し、日当たりと風通しの良い場所に置くことがポイントです。
ヘンルーダの鉢植えやプランターで育てる方法は、以下の手順で行います。
- 深さが20cm以上で底に穴が開いているものを選ぶ
- 鉢底網を敷き、砂利(または鉢底石)を2~3cm程度入れる。
- 用土を入れる。(鉢やプランターの上から3cm程度余裕を持たせる)
- 苗を鉢から取り出し、根をほぐす。
- 根が回っている場合は、切って整理する。
- 鉢やプランターに苗を入れて、根元と土面が同じ高さになるように調整する。
- 土をかぶせて固め、たっぷりと水やりをする。
ヘンルーダの耐寒性は弱いので、温暖地でない場合は鉢植えやプランターで栽培する方が良いでしょう。
植え替え時期と方法
植え替え時期は、真夏と真冬を避けた春か秋の暖かい日に行います。
真夏は高温多湿で蒸れやすく、真冬は寒さで根が傷みやすいため、適期ではありません。
また、春に植え替える場合は、新芽が出てから固まるまでの4〜5月中旬は避けましょう。この時期は株が弱っているため、移植ストレスに耐えられない可能性があります。
植え替えの方法は、上記「ヘンルーダを鉢植え・プランターで育てる方法」と同じ方法で構いません。
剪定・切り戻し
ヘンルーダは、剪定・切り戻しをすることで、株の形を整えたり、風通しを良くしたり、新芽の発生を促したりすることができます。
剪定・切り戻しの目的・時期と実際の手順について説明します。
目的
ヘンルーダの剪定・切り戻しの目的は、以下のようなものがあります。
- 株の形を整える
- 風通しを良くする
- 新芽の発生を促す
- 病気や害虫の予防をする
- 花付きや香りを良くする
適切な時期
剪定・切り戻しの時期は、以下のようになります。
- 枯れ枝や病気枝などの除去:いつでも
- 内側の枝や葉の間引き:梅雨入り前
- 全体的な枝の切り戻し:早春から春
手順
ヘンルーダの剪定・切り戻しの方法は、以下の手順で行います。
- 鋭利で清潔な剪定ばさみなどの道具を用意する。
- 枯れた枝や病気にかかった枝、弱った枝などは根元から切り取る。
- (株が密集している場合)内側の枝や葉を間引きして、風通しを良くする。
- (株が大きくなりすぎている場合)全体的に枝を短く切り戻す。
夏越しの方法
ヘンルーダは、南ヨーロッパ原産の常緑性多年草で夏の暑さには耐えますが、ジメジメとした過湿を苦手とします。過湿を防ぐために、以下の点に気をつけましょう。
- 土の排水性を高めるために、赤玉土や軽石などを混ぜておく。
- 水やりは土の表面が乾いてから行い、根元に直接水を与えないようにする。
- 梅雨入り前に、株が密集しないように剪定しておく。
- 鉢植えの場合は、長雨の当たらない場所に移動させる。
冬越しの方法
ヘンルーダは、耐寒温度が約12℃と低く、霜や雪に当たると枯れてしまう可能性があります。冬越しをするためには、以下の点に気をつけましょう。
- 地植えの場合は、根元にマルチや落ち葉などを敷いて保温する。
- 枝先が霜に当たらないように不織布などで覆う。
- 鉢植えの場合は、日当たりの良い軒下や室内に移動させる。
- 室内で管理する場合は、暖房器具から離して乾燥しないように注意する。
- 冬場は水やりを控えめにし、土が乾きすぎない程度に与える。
増やし方
ヘンルーダは、種まきをして増やす以外にも、
- 挿し木
- 株分け
この2つの方法で増やすことができます。それぞれの具体的な方法についてお伝えします。
挿し木で増やす方法と時期
ヘンルーダの挿し木は、4月から6月頃に行います。
挿し木の方法は以下のとおりです。
- 元気そうな枝を10cmほど切り取る。
- 切り口を斜めにカットする。
- 挿す部分の葉を取り除く。
- 挿し穂を水につけて30分ほど吸水させる。
- 挿す位置につまようじなどで穴を開ける。
- 水につけた後の挿し穂を土に挿す。
1ヶ月ほどで根が出るので、根が出たら小さめの鉢に植え替えて育てます。
株分けで増やす方法と時期
ヘンルーダの株分けは、4月頃に行います。
株分けの方法は簡単で、大きくなった株を掘り上げて、2~3つに分けます。
分けた株をそれぞれ新しい場所や鉢に植え付けます。植え付け後は水やりをして、根付くまで管理します。
以上で株分けは完了です。
花の特徴と開花時期
ヘンルーダは、青味がかった緑色の葉が美しい常緑性多年草ですが、花も魅力的なので観賞用としても優れています。
花は小さな黄色い花が集まった散房花序を咲かせます。個々の小花は、4~5枚の花弁と8本の雄しべ、中央に雌しべと膨らんだ子房があります。花は菜の花を小さくしたような形をしています。
花には、香りや色彩だけでなく、薬用や虫除けなどの効果もあります。古くからハーブとして利用されてきましたが、現在では毒性や刺激性があることが知られており、食用や肌に触れることは避けるべきです。
開花時期は、6月から7月にかけてです。日当たりと風通しの良い場所で育てると、より多くの花を楽しむことができます。開花後は、枯れた花を摘み取っておくと、株の見栄えや健康に良いでしょう。
収穫時期と方法
ヘンルーダは、葉や花を収穫してドライフラワーやポプリに利用することができます。
花は、初夏に黄色い小花が咲きますが、花は咲き始めから咲き終わりまで収穫できます。(咲き始めの方が香りが強いです)
葉は、春から秋にかけて新しい葉が出るたびに収穫できます。葉も花も、日中の水分が飛んだ午後に収穫すると良いでしょう。
収穫方法は以下のとおりです。
収穫物 | 収穫方法 |
花 | 花茎の長さは10cmほどを目安として切り取る。花茎の下の方にある葉は取り除きます。 |
葉 | 枝の長さは10cmほどを目安にして切り取る。枝の下の方にある葉は取り除きます。 |
ヘンルーダの育て方に関するQ&A
ここでは、ヘンルーダの育て方に関するQ&A(質問&回答)を紹介します。
- 枯れる原因として考えられるのは?
- 猫が避けるって本当?
- アゲハの幼虫はヘンルーダを食べない?
- 苗はホームセンターに売ってる?
- 「ヘンルーダの花が咲いたら」の意味は?
- 毒性はある?
上記の問いについて詳しく回答していますので、参考にしてみてくださいね。
枯れる原因として考えられるのは?
ヘンルーダが枯れた原因として考えられるのは、以下のようなものがあります。
- 水やりのしすぎ
- 高温多湿
- 土壌が酸性
上記の中でも特に起こりがちなのが、水やりのしすぎです。
ヘンルーダは乾燥気味に管理するのが適しているハーブなので、水はけの悪い土や鉢に植えている場合は、表土が乾いてからたっぷり水やりをするのがコツです。
水やりのしすぎによって根腐れを引き起こし枯れる原因になってしまいます。
猫が避けるって本当?
ヘンルーダはガーデンルーとも呼ばれるハーブで、独特の甘い香りしますが、この香りは人間にとっては不快ではないものの猫にとっては嫌な匂いなので、猫よけとして利用されることがあります。
「猫寄らず」と呼ばれることもあるくらいなので、庭に猫がやってくるのを防止したいという方は試してみても良いかもしれませんね。
アゲハの幼虫はヘンルーダを食べない?
ヘンルーダはアゲハチョウの幼虫が好んで食べる植物として有名ですが、稀に葉を食べないアゲハの幼虫がいるようです。
ちなみに、アゲハチョウの幼虫は主にミカン科の植物を食草としています。ヘンルーダもミカン科に属する植物なので、アゲハチョウはヘンルーダに卵を産み付けます。
孵化した幼虫は親が産んだ場所からあまり離れずに、近くの葉を食べて成長します。
セリ科やキク科などの植物も同様なので、こうした植物が近くにある場合はヘンルーダに卵がなく食べられない可能性はあるでしょう。
なお、葉が食べられると光合成能力が低下し、枯れやすくなるので、葉が食べられている場合は手で取り除いて他の植物へ移動させてあげましょう。
苗はホームセンターに売ってる?
ヘンルーダの苗は、春先から夏にかけてホームセンターで売っている場合もありますが、店舗によって取り扱いが異なります。
食用には向かないとされているので、食用ハーブとは別の場所に陳列されていることがあります。
また、「ルー」「ガーデンルー」という名前で販売されていることもあるのでご注意ください。
「ヘンルーダの花が咲いたら」の意味は?
「ヘンルーダの花が咲いたら」というのは、ハンガリーの作曲家バールドシュ・ラヨシュが作曲した合唱曲のタイトルです。
この合唱曲は、ヘンルーダの花が咲いたら恋人と結ばれるという伝説に基づいています。歌詞は以下のようになっています。
「ヘンルーダの花が咲いたら あなたと私は結ばれる あなたは私を愛してくれる 私はあなたを愛している」
「ヘンルーダの花が咲いたら あなたと私は幸せになる あなたは私を抱きしめてくれる 私はあなたにキスをする」
毒性はある?
ヘンルーダには毒性があり、葉や茎の汁に触れるとかぶれることがあります。
また、乾燥させた葉を煎じたものを飲むと、女性ホルモンの働きを促進し、妊娠中の場合は流産する可能性があります。
ヘンルーダから抽出したエッセンシャルオイルであるルーオイルも、アロマセラピーには使用できません
まとめ:ヘンルーダ(ルー)の育て方のポイント
ヘンルーダは南ヨーロッパ原産の常緑性多年草で、黄色の花を咲かせる魅力的な植物です。
日当たりと水はけの良い場所を選び、冬は室内で管理することがポイントです。挿し木で簡単に増やすことができるので、自分だけでなく友人や家族にもプレゼントすることができます。
剪定も適宜行うことで、美しさを長く楽しむことができます。
また、香りがあることから虫よけやネコよけになりますし、アゲハチョウもやってきます。ヘンルーダは初心者でも育てやすい植物なので、ぜひ挑戦してみてください。