ヒソップ(学名:Hyssopus officinalis)は、別名・和名としてヤナギハッカとも呼ばれ、シソ科の多年草です。
ヒソップは花が美しく、紫や青、白などの色の花を楽しめるほか、香りが良く虫除けや消臭にも効果があります。
ハーブティーとしても栄養価が高く、風邪や咳などにも効くと言われているほど有用なハーブなので、自宅でも育ててみたいという方はきっと多いでしょう。
この記事では、ヒソップの育て方の基本から収穫方法・増やし方など、活用するための方法をご紹介しています。
参考にして、ヒソップ栽培を楽しんでみてくださいね。
ヒソップ栽培に適した環境づくり
ヒソップ(ヤナギハッカ)は、日当たりがよく風通しのよい場所を好みます。
用土づくりと水・肥料の与え方のポイントは次のとおりです。
用土づくり
ヒソップは水はけの良い土壌を好みますがあまり土質には神経質にならなくても大丈夫です。粘土質の土壌は避け、砂質の土壌やローム質の土壌が適しています。
弱アルカリ性から中性の土壌(pH値は6.0~7.5)が理想的です。苦土石灰を混ぜて土のpHを中和するとよいでしょう。
水やりと肥料の与え方
ヒソップは乾燥に強い植物ですが、成長期には適度な水やりが必要です。特に若苗の時期には、土壌が乾燥しすぎないように注意が必要です。
肥料も控えめにすると香りがよくなります。植え付け時に元肥として堆肥を混ぜておき、生育期間中は液肥を週に一回程度与える程度で十分です。
種まき時期と方法
ヒソップは、春(4~5月)種まきするのが一般的ですが、秋(9月~10月)にも可能です。
種まき用の土は、水はけが良くて肥沃なものを選びます。畝に浅い溝(深さ約1cm)を作って種を蒔いて土で覆って水を与えます。
2週間ほどすると発芽するので、本葉が2~3枚になったら間引きします。(隣との苗の間は20~30cmくらい空けるのが理想です)
間引いた苗は、別の鉢に植え替えることもできます。
鉢植え・プランターで育てる方法
ヒソップは鉢植えやプランターでも育てることができますが、日当たりがよく、水はけのよい場所に置くことが大切です。
湿気に弱いので、鉢の底には鉢底石を敷いておきましょう。用土は市販のハーブ用や草花用の土を使うか、赤玉土6:腐葉土3:バーミキュライト1の割合で自分で作ることもできます。
鉢植えやプランターでヒソップを育てる場合、植え付け時期は4月から6月が適期です。苗を購入する場合は、花が咲いていなくて、葉が生き生きとしているものを選びましょう。
根を傷めないように丁寧に植え付けて、株元をしっかりと押さえます。最初はたっぷりと水を与えてください。
鉢植えやプランターでヒソップを育てる場合、水やりは土が乾いたらたっぷりと行います。
肥料は5月から6月の間に液体肥料を1週間に1回程度与えるようにします。
植え替え時期と方法
ヒソップは鉢植えやプランターで育てる場合には、根が回ったら一回り大きな鉢に植え替えする必要があります。(地植えの場合は植え替えは必要ありません。)
植え替えの時期は春先が適しており、植え替えをするときは以下の手順で行います。
- 植え替える前に、ヒソップにたっぷりと水を与えておく。
- 新しい鉢に鉢底石を敷き、用土(赤玉土6:腐葉土3:バーミキュライト1の割合で混ぜる)を入れる。
- 古い鉢からヒソップを抜き取る。
- 根の回りについている古い土を手で優しく払い落す。
- 新しい鉢にヒソップを入れる。
- 株元が鉢の縁から2cmほど下になるよう用土を詰める。
- 植え付けた後に、再びたっぷりと水を与える。
- 日当たりのよく、風通しの良い場所に置く。
根を傷つけないように優しく行うよう注意しましょう。
古い鉢から苗を取り出す際に根が鉢に張り付いていることがありますが、鉢を軽く叩いてから抜き取るようにするととれやすいです。
根が絡まっている場合は、指で優しくほぐしてから植えつけるようにしましょう。
花が咲く時期と香り・花言葉
ヒソップは夏(6月から9月)に、ピンク、青、紫、白など美しい花を咲かせます。
花は穂状に咲きミントのような清涼感のある香りがします。香りは花が咲いている時期が一番強いと言われています。
ヒソップの花言葉は「清潔」と「浄化」です。これは、ヒソップが古くから神聖な場所を清めるのに用いられていたことに由来します。また、ミントのような香りが気分をすっきりさせることも関係しているでしょう。
なお、英語での花言葉は「cleanliness(清潔)」と「sacrifice(犠牲)」です。
ヒソップは5月25日と9月10日の誕生花です。清潔感や浄化力を持つヒソップの花は、自分や周りをきれいにしたい人や、何かに打ち克つ人に贈ると良いでしょう。
室内での育て方
ヒソップは日当たりと風通しの良い場所を好みますが、室内でも育てることができます。
室内でヒソップを育てる場合のポイントは以下のとおりです。
ポイント | 補足 |
日当たりの良い窓辺に置く | 日光が不足すると、茎が伸びて弱くなります。室内で育てる場合は、南向きや西向きの窓辺に置き、1日6時間以上の直射日光を当てましょう。 |
土が乾いたら水やりをする | 過湿に弱く、根腐れや病気の原因になります。水やりは土が乾いたらたっぷりと与えるようにします。夏は毎日、冬は2~3日に1回程度が目安です。 |
肥料は控えめに与える | 肥料が多すぎると香りが弱くなります。肥料は液体肥料を薄めて月に1回程度与えるか、緩効性の化成肥料を春と秋に少量施す程度にしましょう。 |
剪定や切り戻し | 放っておくと茎が伸びすぎて枝垂れたり、花付きが悪くなったりしますので、剪定や切り戻しをして株をコンパクトに保ちましょう。 |
剪定・切り戻しする方法と目的・時期
ヒソップを剪定・切り戻しする目的は、以下のとおりです。
目的 | |
株の形を整える | 放っておくと茎が伸びて枝垂れたり、株が乱れたりします 。剪定で株の形を整えると、見た目が美しくなります。 |
株の生長を抑える | 放っておくと茎が伸びすぎて弱くなります 。切り戻しで株の生長を抑えると株が丈夫になります。また、香りも強くなります。 |
株の形を整える | 放っておくと茎が伸びて枝垂れたり、株が乱れたりします 。剪定で株の形を整えると、見た目が美しくなります。 |
香りを強くする | 肥料が多すぎると香りが弱くなります 。剪定で株の生長を抑えると、香りが強くなります。 |
ヒソップを剪定・切り戻しする方法は、以下のとおりです。
時期・方法 | |
花が終わったら切り戻す | 初夏から夏にかけて花を咲かせます 。花が終わったら、株の半分~三分の一程度切り戻します 。切り戻す位置は、茎に葉がついている部分にしましょう。切り戻した後は水やりや肥料を控えめにしてください。 |
秋に整形する | 秋にもう一度花を咲かせることがあります 。秋の花が終わったら、株の形を整えるために剪定しましょう。剪定する量は、株の大きさや形に応じて調整してください。剪定した後は水やりや肥料を控えめにしてください。 |
冬に枯れ枝を取る | 常緑多年草ですが、寒さで枝や葉が枯れることがあります 。冬になったら、枯れた枝や葉を取り除きましょう 。これは病気や虫の予防にもなります。 |
夏越し・冬越しの方法
ヒソップは暑さにも寒さにも強く丈夫なハーブですが、過湿や蒸れには弱いです。夏越しと冬越しの方法は以下のとおりです。
補足 | |
夏越し | 真夏の日照りにも耐えられますが、完全に水切れにすると枯れてしまうので、水やりは土が乾いたらたっぷりと与えるようにしましょう。 |
冬越し | 耐寒性がありますが、寒冷地では地上部が枯れて休眠します。地植えの場合は、株元にマルチングをして防寒をすると安全です。鉢植えの場合は日当たりのよい軒下に置き、鉢を新聞紙やシートで覆うと良いでしょう。冬でも気温が暖かめの日にはたまに水やりをしておきます。 |
ヒソップの増やし方
ヒソップを増やす方法として、次の2つの方法をご紹介します。
- 挿し木で増やす方法
- 株分けで増やす方法
挿し木で増やす方法と時期
ヒソップは挿し木で簡単に増やすことができます。初夏のまだ気温が高くない時期に行うと良いでしょう。
挿し木の具体的な方法は以下のとおりです。
- 切った枝は1時間ほど水に入れて水揚げをする。
- 赤玉土や鹿沼土など清潔な土に挿す。
- 土を乾燥させないように水やりをし、半日陰で管理する。
- 2~3週間で発根します。
- 根がしっかり出たら取り出して、新しい鉢や庭に植え替える。
株分けで増やす方法と時期
ヒソップは株分けで増やすこともできます。春の4~5月頃か、秋の9~10月頃に行うのが適しています。
株分けの具体的な方法は以下のとおりです。
- 株分けするヒソップを掘り上げて根を洗う。
- 根が絡まっている場合は、ナイフやハサミで切り離す。
- 分けた株を新しい鉢や庭に植え付る。
- 植え付け後はたっぷりと水やりをし、日陰で管理する。
収穫時期と方法
ヒソップの収穫時期は、初夏から秋のよく育つ時期に行います。花が咲く前の時が一番香りもよいので収穫におすすめです。
収穫の方法は以下のとおりです。
収穫方法と補足 | |
葉や茎の収穫 | 摘心を兼ねて柔らかい葉や茎を切り取ります。摘心は10cm以上育ってきたら行います。摘心のし過ぎは花つきが悪くなるので注意が必要です。 |
花穂の収穫 | 開花直前のものを茎ごとカットします。開花後は早めに花穂をカットすると長期間楽しめます。 |
ドライハーブにする場合 | 刈り取った茎は葉も花もついたまま束ねておきます。1週間ほど軒下などにつるして陰干しにします。 |
ヒソップの育て方に関するQ&A
ここでは、ヒソップの育て方に関するQ&A(質問&回答)を紹介します。
- ヒソップは日陰でも育つ?
- 気を付けるべき病害虫
- アニスヒソップはヒソップの別名?違いはあるか
- ハーブとしてのヒソップの魅力は?
上記の問いについて詳しく回答していますので、参考にしてみてくださいね。
ヒソップは日陰でも育つ?
ヒソップは基本的に日当たりの良い場所で育てるのが望ましいですが、半日陰でも育つ可能性があります。
ただし、半日陰で育てる場合は、風通しや水はけに注意する必要があります。高温多湿に弱く、病害虫の発生や根腐れの原因になりやすいからです。
また、半日陰で育てると葉や茎が柔らかくなり、香りや味が弱くなる可能性もあるため、半日陰で育てる場合は、定期的に剪定して葉の密度を減らしたり、乾燥させたりして利用すると良いでしょう。
ピンク色の花を咲かせる美しい植物ですが、日陰で育てると花付きが悪くなることもあるのでご注意ください。
気を付けるべき病害虫
ヒソップは丈夫なハーブで、基本的には目立った病害虫の害はありません。ただし、高温多湿や過湿には弱いので、水やりや剪定を適切に行って風通しを良くすることが大切です。
病害虫については以下の点に注意しましょう。
病害虫 | 補足 |
葉が黄色くなる | 株元の葉が黄色くなったり葉を落とす場合は、水やりが多すぎるか葉が蒸れている可能性があります。水やりを控えめにして、枯れた葉や咲き終わった花を取り除きましょう。 |
害虫が付く | ヒソップにはあまり害虫が付きませんが、アブラムシやカイガラムシなどが付くことがあります。害虫を発見したときは、早めに手で取り除いたり水洗いしたり、殺虫剤を散布しましょう。 |
なお、苗から育てる場合は、購入する苗が無農薬かどうか、苗に虫が付いていないかという点はチェックしておきましょう。
アニスヒソップはヒソップの別名?違いはあるか
アニスヒソップは、ヒソップと名前が似ていますが、実は別の植物です。
科名・原産 | 花 | 葉 | |
アニスヒソップ | シソ科 の多年草で、カナダやアメリカが原産 | 藤紫色や青紫色、白色などの穂状の花 | 卵形で先がとがった形状。アニスのような甘い香り があり、ハーブティーや料理に使われる。 |
ヒソップ | シソ科の半樹木で、ヨーロッパ南部から西アジアが原産 | アニスヒソップと花の色や形がよく似ている | 細い長方形。ゴマとミントを合わせたような苦みのある香りがあり、スープやピクルスなどに使われる。 |
また、アニスヒソップは比較的丈夫で育てやすいですが、ヒソップは寒さに弱く育てにくいという違いがあるので、育てる際は注意が必要です。
ハーブとしてのヒソップの魅力は?
ヒソップはハッカのような清涼感のある香りが特徴で、ハーブティーやスパイスとしても利用されています。
ヒソップはハーブティーとして飲んだり、精油としてアロマテラピーに使ったりできる点が魅力です。
まとめ:ヒソップの育て方のポイント
ヒソップはシソ科の多年草で、花や香りが魅力的な植物です。
ヒソップは日当たりと排水に気を付ければ、鉢植えや花壇で育てることができます。また、ヒソップは挿し木や分株で増やすことも可能です。
この記事では、ヒソップの育て方について、選び方や植え方、管理方法などを紹介しました。ヒソップの香りは癒し効果もあるので、自宅で育ててゆっくり楽しんでみてくださいね。