ラベンダーは、香り高くて可愛らしい花を咲かせるハーブです。
ガーデニングやアロマテラピー、ドライフラワーなどさまざまな楽しみ方ができるので、自宅でも育ててみたいという方は多いでしょう。
ラベンダーは育てるのが難しいかなと気になる方は多いかもしれませんが、実はラベンダーは適切な環境とお手入れをすれば、初心者でも育てやすい植物です。
この記事では、ラベンダーの育て方について、地植えでラベンダーを育てる場合の注意点や、植えてはいけないと言われる説とともに解説します。
品種や土づくり、水やりや剪定などのポイントを押さえて、ラベンダー栽培を楽しんでいただけたらと思います。
ラベンダーとは:知っておきたい基本情報
ラベンダーは、美しい花のみならずその芳醇な香りから多くの人気を得ているハーブです。
その香り高き紫色の花は、華やかでありながらも落ち着きのある雰囲気を湛えているので、自宅にあると庭の雰囲気をより引き立てることができるでしょう。
ラベンダーと言えば、エッセンシャルオイルの原料や、アロマセラピーで用いられることが多いですが、その起源や種類、効果や使用方法については、一般的にはあまり知られていません。
ここではラベンダーの魅力をもっと知ることができる基本情報をご紹介したいと思います。
ラベンダーの起源と特徴
ラベンダーの起源は地中海沿岸地域で、旧約聖書の時代から人々に愛されてきました。その名前はラテン語の「lavare(洗う)」から名付けられ、古代ローマの人々が入浴時に水に浮かべることから洗浄材として使われたと言われています。
また、古代エジプトではミイラ作りにも使われ、その重要性がうかがえます。
ラベンダーの特徴はその青紫色をした美しい花と、独特の香りが挙げられます。細長い葉を持ち、夏場に一面に咲き誇る花々は絶景と言われています。
また、その芳醇な香りはリラクゼーション効果があり、精神的ストレスを軽減するなどの効果があります。
ラベンダーの種類とそれぞれの特徴
ラベンダーはその種類が非常に多く、約30種類もあり、それぞれ異なる特徴や用途を有しています。
その中で特に代表的なのが、以下に挙げる3つです。
エンゼルリカ | 香りが強く、花の色が濃い特徴があります。その力強い香りは、リラクゼーションや安眠の効果があります。 |
スパイク | その名の通りスパイク状の花穂が特徴で、香りはエンゼルリカよりも軽やかで爽やかです。 |
ラヴァンデュラ・アングスティフォリア | その優れた香りや薬効性から、「真のラベンダー」とも呼ばれています。花穂は小さいですが、色合いは深く、香りは濃厚で甘いです。 |
ラベンダーの香りの効果と使用方法
ラベンダーの香りは、リラクゼーション効果のほか、集中力の向上や睡眠の質向上、抗菌・抗ウイルス作用などさまざまな効果が認められています。
そのため、エッセンシャルオイルとしてアロマセラピーに使用されるほか、化粧品や香料、薬品など多岐にわたって活用されています。
使用方法は幅広く、アロマディフューザーやアロマライトに数滴垂らして香りを楽しむことが一番簡単な方法です。ほかにも、バスタイムの入浴剤として使用したり、枕元に垂らして寝る前のリラクゼーションタイムに利用すると良いでしょう。
また、小さな瓶に入れて携帯用のアロマとしても使用します。
ただし、肌に直接塗る場合は、肌に合わない場合があるので、事前にパッチテストを行うことを推奨します。
ラベンダーを植えてはいけないと言われる4つの理由
ラベンダーを植えてはいけないと言われる主な理由としては次に挙げる4つの理由があります。
- 根が弱りやすく植え替えに向かないから
- 木質化する可能性があるから
- 高温多湿の環境に弱いから
- 根から成長阻害物質を出すから
それぞれの理由について少し補足していきます。
根が弱りやすく植え替えに向かないから
ラベンダーは直根性で根が深くまで伸びるため、植え替え時に根を傷つけしまいがちです。
ラベンダーは根が傷つくと枯れやすいという性質があるため植え替えには向かないことから、植えてはいけないと言われることがあります。
木質化する可能性があるから
木質化とは、茎が木のように硬くなり、葉が少なくなる現象のことです。木質化すると、花付きが悪くなったり、枯れやすくなったりするため、ラベンダーの観賞価値が低下してしまいます。
土壌や栽培環境が悪かったり、剪定を怠ると木質化しやすくなってしまうため注意が必要です。
高温多湿の環境に弱いから
地中海沿岸が原産の植物であるラベンダーは、乾燥した気候を好み、水はけの良い土壌を必要とします。
そのため日本では、ラベンダーを地植えで育てるのは難しいと言われることがあります。
育て方のポイントを押さえることで栽培自体は可能ですが、初心者にとっては他のハーブよりも難しく感じることもあるでしょう。
根から成長阻害物質を出すから
ラベンダーは根から成長阻害物質を出すと言われています。
この物質は、ラベンダー自身が他の植物の成長を抑えるために出し、周囲の植物の生育を阻害します。そのため、ラベンダーの近くに他の植物を植えると、生育不良を起こしたり、枯れてしまう可能性が高まります。
ラベンダーの地植えで注意すべき3つのポイント
ラベンダーは地植えに向かないハーブですが、注意点を押さえることで問題なく栽培することが可能です。
ラベンダーを地植えする際の注意点としては、大きく次の3つが挙げられます。
- 地域に適した品種を選ぶ
- 小まめに剪定をする
- 適切な場所に植える
それぞれのポイントについてそれぞれ詳しくお伝えしていきます。
地域に適した品種を選ぶ
ラベンダーを地植えする際は、品種選びが重要です。耐寒性が高く、日本の気候に適した品種を選びましょう。
おすすめの品種は、以下のとおりです。
- イングリッシュラベンダー: 耐寒性が高く、香りが強いのが特徴
- フレンチラベンダー: 花付きがよく、初心者にも育てやすい品種
- スパイクラベンダー: 高さがあり、花穂が長く伸びる
それぞれの品種で個性があるので、その違いを楽しむのもおすすめです。
小まめに剪定をする
ラベンダーは、適切な剪定を行うことで、株の風通しを良くし、病害虫の発生を防ぐことができます。また、花付きを良くし、美しい姿を楽しむことができます。
剪定時期は、花が終わった後の6月頃と、秋に軽く剪定する2回が理想的です。剪定の方法としては、花茎の付け根から切り戻すようにしましょう。あまり深く切りすぎると、株が弱ってしまうので注意が必要です。
ラベンダーは、剪定を怠ると、枝が混み合って風通しが悪くなり、病害虫が発生しやすくなります。また、花付きが悪くなり、せっかくの美しさを楽しむことができなくなってしまいます。
小まめに剪定を行うことで、ラベンダーの健康を維持し、美しい花を楽しむことができます。
適切な場所に植える
ラベンダーは、日当たりがよく水はけの良い土壌を好みます。また、風通しも良い場所が必要です。
日陰や湿った場所、風通しの悪い場所では、根腐れや病気になりやすいため、注意が必要です。
<ラベンダーに適した場所>
- 日当たりが良く、1日6時間以上日が当たる場所
- 水はけの良い土壌
- 風通しの良い場所
ラベンダーは、適切な環境と管理のもとで育てれば、長く楽しむことができます。
ラベンダーを植えてはいけない場所
ラベンダーは日当たりと風通しを好む植物です。そのため、以下の場所に植えると生育不良を起こしやすくなります。
- 日当たりの悪い場所
- 湿度が高い場所
- 風通しが悪い場所
それぞれの場所について、次に詳しくお伝えしていきます。
日当たりの悪い場所
ラベンダーは日当たりの良い場所を好み、日当たりの悪い場所では光合成が十分に行われず、成長が遅くなったり、花付きが悪くなったりする可能性があります。
ラベンダーの生育に適した日照時間は、1日6時間以上と言われています。
また、日陰は湿気がこもりやすく、蒸れやすい環境になります。ラベンダーは蒸れに弱く、根腐れを起こしやすい点からも日当たりの悪い場所は避ける必要があります。
湿度が高い場所
ラベンダーは乾燥した気候を好み、過湿に弱いため、湿度が高い場所への地植えは適しません。湿度が高いと根腐れを起こしやすくなり、最悪の場合枯れてしまうこともあります。
特に、日本の夏は高温多湿になるため、注意が必要です。地植えする場合は、水はけの良い土壌を選び、日当たりと風通しの良い場所に植えるようにしましょう。
また、梅雨の時期は雨が直接当たらないように、軒下や屋根のある場所に移動させるのも有効です。
風通しが悪い場所
ラベンダーは風通しの良い場所を好み、風通しが悪いと蒸れて病気になりやすくなります。特に、水はけの悪い土壌では、風通しが悪いと根腐れを起こす可能性が高くなります。
ラベンダーの育て方の4つのポイント
これまでラベンダーを受けてはいけないと言われる理由や地植えの際の注意点についてお伝えしてきました。
これらを踏まえて、ラベンダーの育て方のポイントを押さえることで、問題なくラベンダーを育てることができるでしょう。
水を与え過ぎない
ラベンダーの水やりは、適切な量とタイミングが重要です。水はけの良い土壌を好み、過湿を嫌うため、水を与えすぎると根腐れを起こしやすくなります。
土の表面が乾いてから、たっぷりと水やりをするようにしましょう。水やりの頻度は、季節や天候によって異なりますが、一般的には夏場は1日1回、冬場は2~3日に1回程度が目安です。
また、葉に直接水がかからないように注意しましょう。
ラベンダーは乾燥に強い植物ですが、極端な乾燥状態が続くと生育が悪くなることがあります。特に夏場は水切れを起こさないように注意しましょう。水切れを起こした場合は、すぐに水やりをしてください。
水はけがよい土壌に植える
ラベンダーは、水はけのよい土壌を好みます。水はけの悪い土壌に植えると、根腐れを起こしやすくなります。
そのため、植え付け前に土壌改良を行い、水はけを良くすることが大切です。具体的には、川砂やパーライトなどを混ぜ込むことで水はけを改善することができます。
他の植物と混植しない
ラベンダーは、成長阻害物質を根から分泌するため、他の植物と混植すると、その成長を阻害する可能性があります。そのため、ラベンダーを地植えする場合は、他の植物と混植しないように注意が必要です。
この成長阻害物質は、アレロパシーと呼ばれる現象を引き起こします。アレロパシーとは、植物が周囲の植物に影響を与える化学物質を分泌することです。
ラベンダーは、クマリンやカンファーなどのテルペノイドと呼ばれる物質を分泌します。これらのテルペノイドは、他の植物の種子の発芽や成長を阻害することが知られています。
ラベンダーと混植してはいけない植物には、以下のようなものがあります。
- セージ
- タイム
- ローズマリー
- ミント
- バジル
- オレガノ
これらの植物は、ラベンダーの成長阻害物質の影響を受けやすい傾向があります。
ラベンダーを地植えする場合は、他の植物から少なくとも 30 cm 以上離して植えるようにしましょう。また、ラベンダーの周囲に他の植物を植える場合は、成長阻害物質の影響を受けにくい植物を選ぶようにしましょう。
年に2回、剪定をする
ラベンダーの剪定は、年に2回行います。1回目は花後の6月下旬から7月上旬、2回目は秋に枯れた花穂を切り取る作業です。
ラベンダーの選定方法については次の項で詳しくお伝えしていきます。
ラベンダーの剪定方法:美しい花を咲かせるためのコツ
ラベンダーはその美しい紫色と落ち着いた香りで、多くの花好きの心を捉えてきました。そして、その美しい花を長く咲かせるには、適正な剪定が必要なのです。
剪定は難しそうに聞こえるかもしれませんが、正しい手順を踏めば誰でもラベンダーの花を美しく保つことができます。
これからは、ラベンダーの剪定のタイミング、方法、そして剪定後のケアと、美しい花を咲かせるためのコツをご紹介します。
ラベンダーの剪定のタイミング
ラベンダーの剪定のタイミングは年に二回で、春と秋に行うのが一般的です。
春の剪定は主に開花の準備のため、新芽が出始める時期の3月~4月にかけて行います。この時期に剪定を行うことで、枝を誘導し、より美しい花を咲かせることが期待できます。
次に、秋の剪定は主に冬の風雪に備えるため、満開から徐々に花が落ち始める9月~10月にかけて行います。秋の剪定を行うことで枝が冬バテしにくくなり、春に向けて元気に育てることが可能となります。
ラベンダーの剪定方法
ラベンダーの剪定方法は非常に簡単です。
まずは茂っている枝を見つけ、その1/3を剪定します。切る部分は一年前の新しい枝からで、さらに枝全体が光を受けられるようになるよう心掛けましょう。
もし枯れた枝や病気の兆候が見つかった場合は、その枝はすぐに完全に剪除します。
また、剪定は太陽がたっぷりと当たる日中に行うと良いでしょう。これは、剪定した部分が乾きやすく、病気や虫の侵入を防ぐことができるためです。
ラベンダーの剪定後のケア
剪定後のケアはラベンダーの成長を助け、健康な状態を維持するために重要です。
まず、剪定後は十分に水やりを行いますが、過度な水は逆に根腐れを引き起こす危険があるので注意が必要です。
また、剪定後はラベンダーがストレスを感じることがあるので、特に初めの数日は注意深く観察し、栄養が足りているか、病気や虫害の兆候がないかなどを確認します。
手間ひまをかけて育てたラベンダーは、適切な剪定とケアにより美しい花を咲かせることでその労力に報いてくれるでしょう。
ラベンダーの病害虫対策と予防法
優雅な香りと美しい色彩で魅了するラベンダーですが、その美しさを守るためには、病害虫との戦いも避けては通れません。
さまざまな病害虫がラベンダーの元気を奪い、鮮やかな花弁を萎れさせる事があるのです。
ここではラベンダーの病害虫対策についてお伝えしてきます。
ラベンダーによく見られる病害虫と対策法
ラベンダーには、いくつかの典型的な病害虫が見受けられます。
ラベンダーの病害虫対策としては、まずは観察が大切です。虫の種類や被害状況を把握することが、適切な対策を立てる第一歩となります。
アブラムシ | 吸汁性の害虫で、若葉や花芽を好んで吸い取ります。アブラムシは体表が薄いため薬剤の散布が有効です。 |
カイガラムシ | 主に茎や葉を攻撃し、被害をもたらします。シェルで覆われているので薬剤の浸透が難しく、物理的に除去する方法がお勧めです。 |
ダニ | ダニが繁殖すると葉色が変わって萎れ、最悪の場合、枯死してしまう可能性があります。分を好まないため、適度な湿度を保つことで繁殖を防ぐことが可能です。 |
ラベンダーの病害虫の予防法
病害虫の発生を予防するためには、ラベンダーの生育環境を整えることが重要です。
適切な光照射時間や水分供給、養分の摂取に気をつけましょう。また、虫が好むほこりや湿り気の多い環境を避け、清潔に保つことも重要な予防策となります。
定期的にラベンダーを観察し、虫がついているようであれば早急に対策を講じることで、病害虫の被害を最小限に抑えることができるでしょう。
また、アブラムシ等は見掛けたら即座に対応し、ムシムシする季節を漸く前に予防対策を行っておくことも大切です。
ラベンダーを鉢植えで育てるメリットとデメリット
ラベンダーを鉢植えで育てるメリットとデメリットを以下にまとめました。
メリット
- 移動が簡単: 季節や日当たりに合わせて簡単に移動させることができる
- 水はけが良い: 地植えよりも水はけが良いため、根腐れを起こしにくい
- 害虫を防ぎやすい: 地植えよりも害虫を防ぎやすく、管理がしやすい
- 観賞価値が高い: 庭やベランダのアクセントになり、観賞価値が高い
デメリット
- 水やりが必要: 地植えよりも乾燥しやすいため、水やりを頻繁に行う必要がある。
- 肥料が必要: 地植えよりも肥料切れを起こしやすいため、定期的に肥料を与える必要がある。
- 根詰まりを起こしやすい: 根詰まりを起こしやすいので、定期的に植え替えが必要。
- 冬越しが難しい: 地植えよりも冬越しが難しく、防寒対策が必要。
以上のように、ラベンダーを鉢植えで育てるメリットとデメリットはあります。自分の環境やライフスタイルに合わせて、どちらで育てるか検討してみてください。
まとめ:ラベンダーの地植えの注意点と植えてはいけない理由
今回は、ラベンダーの育て方についてご紹介しました。
ラベンダーは日当たりと風通しの良い場所で乾燥気味に育てることがポイントです。また、地植えでラベンダーを育てる場合は、土壌酸度や水はけを調整することが大切です。植えてはいけないと言われる説もありますが、実際には品種や栽培環境によって異なります。自分の庭に合ったラベンダーを選んでみましょう。
ラベンダーは香りや花色が豊富で、四季咲き性を持つものもあります。適切なお手入れをしてあげれば、毎年美しい花を咲かせることができますよ。ぜひこの記事を参考にして、ラベンダー栽培に挑戦してみてくださいね。