蚊連草(カレンソウ)は、ゼラニウムとシトロネラ草(レモングラスの一種)を交配して作られた植物で、葉に柑橘レモン系のさわやかな香りがあります。
香りには蚊を寄せ付けない効果があり、虫除けとしても人気のあるハーブです(英語では「mosquito reed grass」と名付けられるほどです)。
蚊嫌草、蚊取り草、蚊遣り草、蚊逃げ草、蚊よらずと表現されることもありますが、どれも蚊連草のことを指します。
蚊よけの効果に魅力を感じて、蚊連草を自宅で育ててみたいと感じる人は多いと思いますが、どんな環境を好むのか、冬越しはできるか、増えすぎることはないかと気になる点は多いでしょう。
この記事では、蚊連草が増えすぎるのを防ぐ方法や栽培に適した環境づくりを中心にご紹介します。
蚊連草は増えすぎるのか?
蚊連草は成長が早く放っておくとどんどん伸びてくるため、定期的に剪定して株の大きさを制御する必要があります。
また、蚊の忌避効果の為に挿し木などでたくさん増やした結果、増やしすぎたという人もいますが、簡単に増やせることも増えすぎたと感じる理由の一つでしょう。
とはいえ、ミントなどのように地下茎でどんどんと増殖するような増え方ではないので、育てるのを躊躇するような増え方はしないのでご安心ください。
蚊連草が伸びすぎるのを防ぐ方法
蚊連草は成長が早く、放っておくと徒長してしまいます。
徒長すると見た目が悪くなるだけでなく株が弱ったり、病害虫にかかったりするリスクも高まるだけでなく、香り成分であるシトロネラールの含有量が減少して香りが弱くなったり、花芽がつきにくくなる可能性もあります。
蚊連草が伸びすぎることのないように、徒長を防ぐ方法について詳しくお伝えします。
まず、伸びすぎる原因についてですが、主に以下の3つが挙げられます。
- 日当たりが良すぎる
- 水やりが多すぎる
- 切り戻しや剪定をしない
日当たりを適度にするためには、直射日光の当たらない半日陰の場所に置くか、カーテンなどで日光を遮ることができます。水やりは土の表面が乾いたら水を与える程度にします。
次に、蚊連草の切り戻しと剪定について、具体的な方法と最適な時期についてお伝えします。
蚊連草を剪定・切り戻しする方法と目的・時期
蚊連草の剪定・切り戻しの方法は、以下のとおりです。
- 切り戻しに用いるハサミを消毒する
- 葉を少し残すように草丈の約半分くらいの位置で切る
葉を少し残すように草丈の約半分くらいの位置で切ることで、根や株への負担を減らしつつ成長を促すことができます。切り戻し時に病原菌や虫の感染を防ぐために、ハサミ消毒してから使うと良いでしょう。
剪定の時期と目的は以下のとおりです。
時期 | 目的 |
早春 | 新芽を摘む(摘芯)ことで茎数が増えてフサフサとした草姿になり、沢山の花を咲かせることができます |
初夏 | 夏から秋にかけて再び花を咲かせる準備ができます。風通しや日当たりを改善し、過湿や過乾燥を防ぐことができます |
切り戻しの時期と目的は以下のとおりです。
時期 | 目的 |
梅雨時期 | 春から続いた開花が一段落する梅雨時期に切り戻すことで、夏から秋にかけて再び花を咲かせる準備ができる。また、風通しや日当たりを改善して過湿を防ぎ、病気や虫の被害を予防する。 |
秋 | 乾燥する季節に切り戻すことで、水分の蒸散を減らして乾燥に耐えやすくするほか、株を小さくして冬越ししやすくする。 |
蚊連草栽培に適した環境づくり
蚊連草は日当たりの良い場所で水はけのよい土壌で育てれば、香り豊かな葉と可愛らしい花を楽しむことができます。
用土づくりや水・肥料の与え方のポイントをそれぞれ以下にまとめました。
用土づくり
蚊連草は、水はけがよく適度に肥沃な土壌を好みます。有機物の多い肥沃過ぎる土壌は葉の香りを弱める可能性があるため避けましょう。
また、粘土質な土壌は根腐れや茎葉の腐敗を招きやすいため避けて下さい。花壇に植える場合は、植え付けの前に土壌診断を行うと良いです。
土質が悪い場合は、パーライトや軽石などで通気性を高めたり、堆肥などで肥沃さを調整したりしてください。酸度が高い場合は、石灰などで中和してください。
土壌改良後は耕して表面を平らにして完成です。
水やり
水やりは表面の土が乾いてからたっぷりと行いましょう。乾燥を好む植物ですが、水切れさせると枯れてしまう可能性があります。
一方で、水やり過ぎも根腐れや病気の原因になるので注意してください。
肥料の与え方
肥料は3要素(リン、カリ、チッ素)がバランス良く配合された一般的なもので問題ありません。肥料は早春に土質を改善する堆肥と緩効性肥料を与え、秋に再度緩効性肥料の追肥を行います。
1年に2回、時期としては早春(3月中旬から7月下旬)と秋(9月中旬から10月下旬)にすると良いでしょう。
痩せ地の方が香りが強くなるため、肥料はやや控え目にする事をおすすめします。
蚊連草の地植え時期と方法
蚊連草は寒さに弱く、霜に当たると枯れてしまう可能性があるため、地植えする時期は霜が降りなくなった5月頃が適しています。
もし早く植えたい場合は、株元に腐葉土を盛り上げたり不織布やビニールで覆うなどの霜よけ対策をすれば良いでしょう。(もちろん、暖地であれば霜対策は不要です)
地植えの方法は、次の手順で行うようにします。
- ポット苗を水に浸して根をほぐしておく
- 株元から10cm~15cm離して穴を掘って苗を埋める
- 苗の周りの土を固く押さえる
- たっぷりと水やりをする
地植え後の管理としては、蚊連草は乾燥を好む植物なので水やりは控えめにしましょう。目安としては、土の表面が乾いてから水やりを行う程度にします。
蚊連草の植え替え時期と方法
鉢植えの蚊連草は、根が鉢からはみ出したり、水やりが足りなくなったりすると根詰まりや栄養不足になるため、2年~3年に一度は春か秋に植え替えが必要です。
植え替え方法は、以下のとおりです。
- 古い鉢から苗を抜き出す。
- 古い土や枯れた根を取り除く。
- 新しい鉢に用土を入れる。
- 苗を入れて空隙部分に培養土を詰める
- 苗の周りの土を固く押さえる
- たっぷりと水やりをする
以上の手順で、蚊連草の植え替えは完了となります。
蚊連草の夏越しの方法
蚊連草は夏の暑さや乾燥に耐えることができますが、長雨によるジメジメとした過湿環境は嫌います。
過湿による根腐れや灰色カビ病等の病気を防ぐため、長雨が続く場合は雨の当たらない場所に避難させたり、土の排水性を高めておくといいでしょう。
また、初夏に強く切り戻すことで株の風通しと株元への日当たりが良くなり、ジメジメした過湿が防げます。切り戻すと、また新芽が増えて強い香りが続きます。
蚊連草の冬越しの方法
蚊連草は寒さに弱く霜に長く当たったり強い霜に当たると枯れてしまいます。暖地ならば外でも冬越しできますが、寒冷地では室内に取り込んで管理する必要があります。
室内で冬越しする場合は日当たりと風通しの良い場所に置きましょう。温度は10℃以上を保つようにします。
水やりは土が乾いたら少量ずつ与えますが、肥料は必要ありません。
晩秋に強く切り戻すことで、室内への取り込みやビニールを被せることが容易になりますし、枯れた茎や葉を取り除くことで病気や害虫を防ぐ効果もあります。
蚊連草の増やし方
蚊連草は、葉に柑橘系の香りがあり、蚊を寄せ付けない効果があると言われるハーブですが、一つの株だけでは香りが弱く蚊除け効果も期待できません。
蚊連草を増やして効果的に虫除けができるだけでなく花や葉も楽しめるので、インテリアとしても数を多くしたいという人は多いと思います。
ここでは、蚊連草を増やす方法をご紹介します。
増やす方法としては、
- 挿し木で増やす方法
- 水差しで増やす方法
- 株分けで増やす方法
上記3通りがあり、それぞれの方法とポイントについてご紹介します。
挿し木で増やす方法と時期
挿し木とは、茎の一部を切り取って土に挿すことで新しい株を作る方法を指します。
挿し木で蚊連草を増やす手順は以下のとおりです。
- 蚊連草の新芽が伸びた茎(5cm程度)を節から上方向に斜めに切り取る。
- 切り口近くの葉を落とす。(残す葉は2~3枚あれば十分です)
- 切った茎を半日から一日程度日陰で乾燥させる。
- 水はけの良い土を用意して、切った茎を半分ほど埋め込む。
- 水を与えて湿らせた後、日陰か半日陰の場所に置く。
- 土が乾いたら水を与える。
約1ヶ月ほどで根が出てくるので、その後は普通に育てます。なお、挿し木の時期は春から夏が適しています。
水差しで増やす方法と時期
水差しとは、茎の一部を水に浸けて根を出させる方法を指します。
- 蚊連草のの新芽が伸びた茎(5cm程度)を節から上方向に斜めに切り取る。
- 切り口近くの葉を落とす。(残す葉は2~3枚あれば十分です)
- 切った茎を透明なガラス瓶などに入れて、節より下の部分が水に浸かるようにする。
- 日陰か半日陰の場所に置く。
- 水が減ったら足す。
約2~3週間ほどで根が出てくるので、その後は土に植え替えて普通に育てます。なお、水差しの時期も挿し木と同様に春から夏が適しています。
株分けで増やす方法と時期
株分けとは、一つの株をいくつかに分割して新しい株を作る方法を指します。
- 蚊連草の鉢から株を抜き出す。
- 根球を手で崩しながら、茎や根が絡まっていない状態にする。
- 株を2~4個程度に分割し、それぞれに茎と根があることを確認する。
- 分割した株をそれぞれ新しい鉢や土に植え付ける。
- 水を与えて湿らせた後、日陰か半日陰の場所に置く。
- 土が乾いたら水を与える
約1ヶ月ほどで新芽が出てくるので、その後は普通に育てます。なお、株分けの時期は春か秋が適しています。
蚊連草の花が咲かない時の原因と対策
蚊連草は夏には桃色の花を咲かせて魅力的な植物ですが、花が咲かないという悩みを持つ方もいるかもしれません。
ここでは、蚊連草の花が咲かない時の原因と対策について紹介します。
花が咲かない原因 | 対策 |
肥料の種類や量が不適切 | 肥料は窒素よりもリン酸やカリウムが多めのものを選ぶようにします。これらは花芽形成や開花を促進する効果があります。与える頻度としては1~2週間に1回程度が適切です。 |
日光不足 | 蚊連草は直射日光が6時間以上当たる場所が適していますが、真夏は日光が強すぎると葉焼けや水分不足になる恐れがあるので、午後から半日陰に移動させるのが望ましいです。地植えの場合は日陰を作るようにします。 |
水やり過多 | 土の表面が乾いてきたら、鉢底から水がしたたり落ちるくらいたっぷりと与えましょう。雨水で土が湿っている場合は水やりを控えます。 |
蚊連草の育て方に関するQ&A
ここでは、蚊連草の育て方に関するQ&A(質問&回答)を紹介します。
- 枯れる原因は何がある?
- 注意したい病害虫は?
- 苗はホームセンターに売ってる?
- 木質化する原因は?
- 猫だけでなく犬も寄せ付けない?
- ローズゼラニウムと蚊連草の違いは?
上記の問いについて詳しく回答していますので、参考にしてみてくださいね。
枯れる原因は何がある?
蚊連草に枯れるという時には、以下のような原因が考えられます。
- 水やり過多
- 日光不足
- 肥料の種類や量が不適切
- 病気や害虫によるもの
1から3の対策については、上記の「蚊連草の花が咲かない時の原因と対策」を参照してみてください。
病気や害虫の予防については、土が湿ったままにならないように注意することと、定期的に茎葉の状態をチェックして、病気や害虫の兆候があれば早めに対処することが大切です。
なお、蚊が寄ってこない蚊連草ではありますが、カイガラムシやアブラムシなどの虫は付く可能性があります。
病害虫については、次に詳しくお伝えしています。
注意したい病害虫は?
蚊連草は病害虫に強いと言われていますが、完全に免疫があるわけではありません。
特に湿気や水はけの悪い環境では、カイガラムシやアブラムシなどの害虫が発生しやすくなります。
そこで、蚊連草栽培で注意したい病害虫とその対策についてご紹介します。
主な害虫 | 害虫の特徴 | 対策 |
カイガラムシ | 茎や葉に小さな茶色や黒色の殻をつけた虫で、殻の中から吸汁針を出して植物の汁を吸って生育を阻害する。 | 日当たりの良い風通しの良い場所に植える。また、適度な水やりと肥料を与えて植物を健康に保つことが重要。 |
アブラムシ | 茎や葉の裏側に集団で付着する小さな緑色や黒色の虫で、植物の汁を吸って生育を阻害する。 | 弱った植物に付きやすいので、植物を健康に保つことが重要。虫は強めの水流で茎や葉の裏側を洗い流す。除去できない場合は洗剤水やニームオイルなどの殺虫剤を散布します。(夕方に行うのが効果的) |
苗はコメリなどのホームセンターに売ってる?
蚊連草はポット苗は、園芸店やコメリなどのホームセンターで販売されていることがありますが、季節や店舗によって品揃えが異なります。また、「蚊嫌草」や「蚊取り草」「蚊遣り草」「蚊逃げ草」「蚊よらず」などの別名で販売されていることもあるので、探す際の参考にしてみてください。
ホームセンターで蚊連草の苗を探す場合は、以下のポイントに注意してみてください。
- 春から夏にかけて出回りやすい
- 冬は寒さに弱いため販売されていない場合が多い
- 小型店舗や地域性によっては取り扱っていない場合も多い
- ローズゼラニウムと同じとして出回っていることもある
ローズゼラニウムは香りが似ていますが、観賞用ではなく食用として用いられることもあるため、注意が必要です。
木質化する原因は?
蚊連草に木質化という現象が起こるときには、以下のような原因が考えられます。
木質化する原因 | 補足 |
年数が経過した | 蚊連草は多年草ですが、年数が経過すると茎や枝が硬くなり、木質化してしまいます。これは自然な老化現象であり、避けることはできません。 |
日光不足 | 蚊連草は日向を好む植物です。日光が十分に当たらない場合は光合成が不十分になり、茎や枝が細く弱くなります。 |
肥料不足 | 蚊連草は痩せ地を好むため、肥料はやや控えめにする必要があります。しかし、肥料が不足すると栄養分が不足し、茎や枝が細く弱くなります。 |
対策としては、年数が経過した株や木質化した茎は切り戻して捨ててしまうのが良いです。
増やすのは簡単なので、新しい株や挿し芽から新鮮な蚊連草を育てるのが最も簡単な対策です。
日光や肥料については、上記の蚊連草栽培の環境の項を参考にしてみてください。
以上のように、挿し木や株分けや日光や肥料といった基本的な管理を見直すことで、蚊連草が木質化する可能性を低減できます。
猫だけでなく犬も寄せ付けない?
蚊連草の香りは猫だけでなく犬も嫌います。
犬や猫が蚊連草の香りを嫌う理由は、犬や猫の嗅覚が人間よりもはるかに優れているからです。
人間にとっては爽やかで心地よい香りでも、猫や犬にとっては強烈で不快な臭いに感じられることもあり。特に柑橘系の香りは神経系に刺激を与えてストレスを引き起こすと言われています。
また、犬や猫はハーブを分解する酵素を持たないため、ハーブを食べると消化不良や中毒症状(軽度の場合で口内や喉の灼熱感、重度の場合で読級困難や心臓麻痺)を起こす恐れがあります。そのため、本能的にハーブ類を避ける傾向があると考えられます。
ローズゼラニウムと蚊連草の違いは?
ローズゼラニウムと蚊連草は見た目や香りが似ているハーブですが、実は異なる品種です。ローズゼラニウムは、バラのような香りがするゼラニウムの一種で、ピンク色の花を春から秋にかけて咲かせます。
一方で蚊連草は、ローズゼラニウムとシトロネラ(レモングラスの一種)を交配して作られた品種で、レモンのような香りがします。花は薄いピンク色で、春に一季咲きです。
両者の最大の違いは、蚊よけ効果にあると言われています。ローズゼラニウムには、蚊が嫌がる成分であるゲラニオールが含まれています。蚊連草には、ゲラニオールに加えて、蚊の二酸化炭素探知能力を鈍らせる成分であるシトロネラールも含まれています。そのため、蚊連草の方が蚊よけ効果は大きいとされています。
どちらも日当たりと水やりに気を付ければ育てれば良いので育てやすいハーブという点は共通しています。
まとめ:蚊連草の増えすぎる性質と適切な育て方
この記事では、蚊よけハーブとして話題にあがることが多い、蚊連草(カレンソウ)の育て方や冬越しや挿し木の方法などをご紹介しました。
蚊連草は、ピンク色の小さな花を咲かせる可愛らしいハーブで、葉からする柑橘レモン系のさわやかな香りには蚊よけ効果があります。
蚊連草は日当たりと水やりに気を付ければ、比較的簡単に育てられますが、冬は寒さに弱いので冬越しには注意が必要です。
また、挿し木でも簡単にできるので、蚊が嫌いなハーブを増やしてべランダや窓際に置くのも良いですね。
蚊よけハーブを上手に活用して、快適な住環境づくりをする際の参考にしていただけたらと思います。