ムスクマロウ ‘アップルブロッサム’は、淡いピンク色の花を咲かせるムスクマロウの品種でとても可憐で清楚な雰囲気があります。
葉からは、ほのかに麝香(じゃこう)の香りがするので爽やかな香りを楽しむのにも魅力的なハーブです。
あまり育て方に関する情報も多くないので、自宅でも育てられるかと心配される方も多いかもしれませんが、ムスクマロウの育て方はそれほど難しいことはありません。
栽培に適した環境づくりと夏越しなど、ムスクマロウを育てる際に知っておきたい点をまとめましたので、参考にしてみてください。
ムスクマロウ栽培に適した環境づくり
ムスクマロウは日光を好む植物なので、日当たりの良い場所を選ぶことが重要です。十分な光がないと、成長が遅れたり花が少なくなったりすることがあります。
用土づくりや水・肥料の与え方のポイントは次のとおりです。
用土づくり
排水性の良い土壌を好みます。水はけが悪い土地では根腐れの原因になることがあるため、砂を混ぜるなどして土壌を改良することが推奨されます。
水やり
土壌が乾いたら水やりを行いますが、過剰な水やりは避けるべきです。特に暖かい季節には、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えるようにしましょう。
肥料の与え方
肥料はほどほどに。過剰な肥料は花よりも葉の成長を促すため、花の発生を妨げることがあります。開花期に向けて、適度に低窒素の肥料を施すことが推奨されます。
ムスクマロウの種まき時期と方法
ムスクマロウの種は比較的大きく、まきやすいです。種は新鮮なものを選び、種まきの前に一晩水に浸しておくと発芽率が向上することがあります。
発芽温度は一般的に15-20℃とされているので、種まきの時期は春か秋が適しています。春に蒔く場合は霜が終わった後、秋に蒔く場合は霜が降りる前が理想的です。
種をまく前に、土壌をよく耕しておきます。排水性と通気性を良くするために、腐葉土や砂を混ぜると良いでしょう。土の表面に種をまき、軽く土で覆います。種が土にしっかりと接触していることを確認してください。種を覆う土は、種の大きさの約2-3倍の厚さが適切です。
1つずつ適切な間隔(約30-40cm)でまくと管理がしやすくなります。
地植えの時期と方法
ムスクマロウは夏の暑さに弱い宿根草なので、寒冷地では秋か春に苗を植えるとよいでしょう。中間地や暖地では、秋に苗を植えて春に開花させると割り切った方が無難です。
地植えの方法は簡単で、掘った穴の半分ほどの土を戻して苗を入れて、隙間に土を入れて最後に水をやって完成です。
苗の土は崩さず、根を触らずに植え付けます。複数株を植える場合は株同士は40cm〜50cm空けて植えましょう。
鉢植え・プランターで育てる方法
ムスクマロウは、庭植えだけでなく鉢植えやプランターでも育てることができます。
鉢植えやプランターで育てる場合は、以下の点に注意しましょう。
- 9号〜10号程度の鉢植え・プランターを用意する。
- 用土を入れる。(市販の草花用培養土がおすすめ)
- 日当たりと風通しの良い場所に置く。
- 真夏は直射日光を避けて半日陰に置く。
- 冬は霜よけをして室内に取り込む。
- 水やりは、土の表面が乾いたらたっぷりと行う。
- 春と秋に緩効性化成肥料を置き肥するか、液体肥料を月に2回程度与える。
なお、草花用培養土を使わない場合は、赤玉土小粒5:腐葉土3:軽石2などの割合で配合して作ることもできます。
室内での育て方
ムスクマロウは、日当たりと水はけのよい場所で育てることが大切です。室内で育てる場合は、南向きや東向きの窓辺に置き、直射日光が当たらないようにカーテンなどで調節しましょう。夏は暑さに弱いので、涼しい場所に移動させるか、エアコンなどで室温を下げることが必要です。
鉢植えの場合は、水はけと通気性に富み適度な保水性のある土が適しています。赤玉土小粒5:腐葉土3:軽石2などの割合で配合したものがよいでしょう。
ムスクマロウは直根性で移植を嫌うので直まきかポットまきとし、本葉が3~4枚になったら定植します。こぼれダネでもよくふえるので、周囲に発芽した苗を鉢上げしてもよいでしょう。
水やりは、鉢土の表面がよく乾いたらたっぷりと行うようにし、乾燥や過湿に注意しましょう。肥料は、春と秋に緩効性化成肥料を置き肥するか、液体肥料を施します。多肥にすると倒れやすくなるので注意しましょう。
害虫では、ハマキムシやアブラムシなどが発生することがあります。見つけたら早めに駆除しておいた方が良いでしょう。ハマキムシは葉を巻いたりつづり合わせたりして中にいます。巻いた葉の上から押しつぶすか、葉を開いて幼虫を捕殺します。アブラムシは数が少ないうちならつぶして退治します。
植え替え時期と方法
ムスクマロウは直根性で植え替えが苦手な植物です。鉢植えの場合は、株が鉢いっぱいになったときだけ、株分けを兼ねて植え替えを行います。
庭植えの場合は、植えっぱなしにするのがよいでしょう。
それでも、鉢が小さくなった時など植え替えが必要となった場合は、春(3月上旬から5月上旬)か秋(9月下旬から11月上旬ごろ)に行います。
鉢底網と鉢底石を敷いた一回り大きな鉢に、市販の草花用培養土を入れます。株を鉢から抜き出し、土を落とさないように注意して新しい鉢に移します。
隙間に土を入れて、最後にたっぷり水やりをします。
庭植えの植え替えは、株分けと同じ要領で行います。地上部が枯れる10月~11月頃に、株を掘り上げて上からナイフやハサミなどで途中まで切り込みを入れたあとで、手で裂くように2~3分割します。
分割した株は日当たりと風通しの良い場所に50~100cmくらいの間隔をあけて植え付けます。用土は市販の草花用培養土か、赤玉土小粒5:腐葉土3:軽石2などの割合で配合したものがよいでしょう。
ムスクマロウの花が咲く時期と香り・花言葉
ムスクマロウは5~9月にかけて直径5cmほどの白色や淡いピンク色の花を咲かせます。花はフヨウやタチアオイに似ており、清楚で優しい風情があります。
名前の由来は、葉にほのかに麝香(じゃこう)の香りがすることからです。この香りは、花や茎にも感じられます。
ムスクマロウはハーブとしても利用されており、花や若葉をハーブティーやサラダなどに使うことができます。また、のどの痛みなどに効果があると言われています。
花言葉は「柔和な心」です。この花言葉は、ムスクマロウの優しい色合いや香りから連想されたものと思われます。穏やかで温かい気持ちを表現する花として贈ることができるでしょう。
剪定・切り戻しする方法と目的・時期
ムスクマロウは、花がら摘みをしながら咲かせることができます。
咲き終わった花は随時摘み取り、花茎の花全体がほぼ咲き終わったら、花茎の根元で切り戻します。これにより、株の見栄えをよくし、風通しを良くして病気や害虫の発生を防ぎます。また、種子散布を防いで株の活力を保ちます。
ムスクマロウは、春から秋にかけて何度も花を咲かせることがあります。その場合は、花後に切り戻すことで再開花を促すことができます。
切り戻しの時期は、春(3月下旬~4月上旬)、初夏(5月中旬~6月)、秋(9月中旬~10月中旬)などが適しています。切り戻しの方法は、株全体を半分から三分の一程度に切り詰めるか、枝先から10~15cmほど残して切り落とします。
夏越しの方法
ムスクマロウは、夏の暑さに弱く、関東以西の温暖地では夏に枯れてしまうことが多いため、夏越しはポイントになります。
夏越しの方法は、以下のとおりです。
- 鉢植えの場合は、涼しい半日陰に移動する。(真夏は明るい日陰に置く)
- 庭植えの場合は、午後日陰になるような場所に植えるか、日除けをする。
- 水切れに注意しながら水やりをして管理する。
- 肥料は控えめにする。
- 風通しをよくするため、花後に切り戻しをする。
- ハマキムシなどの害虫が発生したら、早めに駆除する。
冬越しの方法
ムスクマロウは冬に地上部が枯れる多年草です。
冬越しの方法は、以下のとおりです。
- 冬になる前に、地上部を根元から切り取る。
- 鉢植えの場合は、霜が降りるときは鉢を室内や温室に移動する。
- 庭植えの場合は、根元に腐葉土や落ち葉などで覆って保温する。
冬越しで特に注意すべき点はありませんが、関東以西の温暖地では宿根できないことも多いのでその点は留意しておくと良いと思います。
ムスクマロウを株分けで増やす方法
ムスクマロウは、株分けで増やすことができます。
株分けを行うのは地上部が枯れた10月から11月が適しています。実際のやり方については次にとおりです。
- 地上部が枯れたムスクマロウの株を掘り上げる。
- 根が太いので、鍬やスコップなどを使って丁寧に掘る。
- 株を2~3個に分割する。
- 1個の株には3~5個の芽がついていることを確認する。
- 分割した株を植え直す。
- 水やりと肥料を適宜行う。
株分けの際には、ナイフやハサミなどで途中まで切り込みを入れたあと、手で裂くようにします。その後の植え付けについては前述の手順を参考にしてみてください。
収穫時期と方法
ムスクマロウは、花と葉を収穫できます。それぞれの時期と方法は、以下のとおりです。
収穫物 | 収穫時期と方法 |
花 | 5月中旬~8月下旬に花を咲かせるので、開花したその日に摘み取る。花はサラダやハーブティーに利用できます。 |
葉 | 7月上旬から9月下旬頃が適期。若い葉を摘み取り、ゆでて野菜として食べたり、化粧品や咳止めシロップなどに加工できます。 |
まとめ:ムスクマロウ ‘アップルブロッサム’(ジャコウアオイ)の育て方
ムスクマロウ ‘アップルブロッサム’(ジャコウアオイ)は、淡いピンク色の花を咲かせるムスクマロウの品種です。
ヨーロッパ南部などが原産の宿根草で、日本では本州以北の冷涼な地域に生えています。耐寒性は強いですが耐暑性は弱いので、夏の暑さに注意する必要があります。
酸性土壌を避け。有機物と化成肥料を混ぜた用土を使って、日当たりと水はけの良い場所に植えます。
水やりは鉢植えの場合は鉢土が乾いたらたっぷりと行い、庭植えの場合は根が張ったあとはほとんど必要ありません。
肥料は春と秋に緩効性化成肥料や液体肥料を施しますが、多肥にすると倒れやすくなるので注意します。
風通しをよくするため、花後に切り戻します。タネから育てる場合は春播きがおすすめです。
これらのポイントを押さえれば、ムスクマロウ ‘アップルブロッサム’を美しく咲かせることができるでしょう。