ローゼルはジャムやジュース、お茶などに加工できるほか生食も可能で、酸味があってさわやかな味わいが楽しめます。
また、ビタミンCやアントシアニンなどの栄養素も豊富で、美容や健康にも良いと言われています。
そんなローゼルを自宅で育ててみたいと思う方も多いですが、ローゼルは熱帯原産の植物で日本では冬に耐えられないことが多く育てるには注意すべき点があります。
この記事では、ローゼルの育て方について、種まき時期や発芽条件、収穫や挿し木の方法などについてわかりやすく紹介しているので、ローゼルを育ててみたいという方はぜひ参考にしてみてくださいね。
ローゼルとは?
ローゼルとは、西アフリカやインドからマレーシアにかけた地域が原産地のアオイ科フヨウ属の植物で、地域によって一年草または多年草として育てられます。
赤紫色の茎とクリーム色の花を咲かせますが、食用になるのは花ではなく、花が散った後に肥大する赤い萼と苞です。
萼と苞には酸味があり、ビタミンCやクエン酸などの栄養成分が豊富に含まれています。ハーブティー、ジャム、ゼリー、酒、清涼飲料などに加工されて利用されます。
また、葉は野菜として炒め物やスープに使われたり、茎からは繊維が取れたりします。ローゼルは、美しい花や実だけでなく、食用や薬用にも優れた植物です。
ローゼル栽培に適した環境づくり
ローゼルは暑さに強く耐寒性が低い植物なので、日当たりと風通しの良い場所で育てるのが適しています。
日照時間が足りないと花が咲かないことがあるので、できるだけ太陽の光を当てるようにしましょう。また、ローゼルは短日植物なので日照時間が短くなると花芽を作る性質があります。そのため、夜は暗くして育てる必要がありますのでご注意ください。
ローゼル栽培に適した環境づくりのポイントを以下にまとめます。
用土づくり
ローゼルは水はけのよい土壌を好む植物です。鉢植えの場合は、市販の草花用培養土を使うか赤玉土(小粒)と腐葉土を6:4の割合で混ぜた配合土を使うと良いです。地植えの場合は、事前に植える場所を耕して腐葉土や堆肥を混ぜ込んでおきましょう。
また、連作障害が出やすい植物なので昨年と同じ場所には植えないようにします。
水やり
ローゼルは夏場は日照時間が長く日差しも強いので、日光を浴びてぐんぐん成長します。そのため、水やりもこまめに行う必要があります。
地植えの場合は土の表面が乾燥していれば水やりを行います。鉢植えの場合は、土の表面が乾燥していればたっぷり水をやるようにしましょう。土が乾燥するまでは水やりは不要です。
冬場はローゼルにとっては休眠期に当たり、開花や果実が終わり枯れてしまうことも多いので、あまり水やりは必要ありません。
肥料
ローゼルは生育が旺盛な植物なので、肥料切れに注意しましょう。
地植えの場合、元肥として用土に腐葉土や堆肥を混ぜておくと良いです。追肥は生育期である6月から11月に月に1度程度行います。肥料はゆっくりと効果が現れる緩効性肥料を使用するのがおすすめです。鉢植えの場合は月に1~2度やるようにします。
種まき時期と方法と直播きのメリット
ローゼルの発芽温度は20度前後なので、種まきは気温が上がってから行います。地域によっても違いますが一般的には4月~5月が適期です。
気温が寒いと発芽しないので十分に気温が上がってから種まきをするのが良いですが、早めに種まきをして、室内等の温度管理ができる場所で育てるのもおすすめです。
種まき前に種を水に浸けておくと発芽しやすくなるのでおすすめです。水に浮く種は発芽率が低いので、沈んだ種を選んで蒔くと良いでしょう。
種まきは次の手順で行います。
- ポットに草花用の培養土を入れる。
- 表面を平らにする。
- 上に種をまんべんなく散らす。
- 種が隠れるくらいにそっと覆土する。
- 発芽まで水を切らさないように管理する。
- 1週間から2週間で発芽する。
発芽しても暫くの間はそのままポットで育てます。ポットに根が回ってきたら、根の部分を壊さないように気をつけながら定植してやりましょう。
なお、定植は5〜6月が適期です。夏にかけて育ち、秋に花を咲かせて果実を実らせる植物なので、初夏の陽気がローゼルの定植に適しています。
また、ローゼルは直播きも可能です。直播きのメリットは、苗づくりや植え替えの手間が省けることや、根が傷つかない点が挙げられます。気温が発芽条件を満たすのであれば、直播きをしても良いでしょう。直播きの場合でも、前述したとおりの種蒔き方法と同じで構いません。
ローゼルが発芽しない時の対処法
ローゼルが発芽しない理由の多くは、気温が低いのが主な原因なので、気温の高い室内に移動させると発芽する可能性が高まります。
気温以外の理由として考えられるのは以下の3点が挙げられます。
土の乾燥 | 発芽するまで水を切らさないように管理する必要があります。土が乾燥すると発芽しないことがありますので、霧吹きなどで適度に湿らせるようにします。 |
日照時間 | 短日植物なので、日照時間が長すぎると発芽しないことがあります。特に室内や鉢で育てる場合は、夜に電柱の明かりや照明が当たるとまだ昼だとローゼルが勘違いしてしまい、なかなか発芽しないことがあります。そのため、夜は暗くして育てる必要があります。 |
種の古さ | 種は新鮮な方が発芽率が高いです。収穫した種は冷暗所で保存し、早めに蒔くようにしましょう。 |
苗の地植えの時期と方法
ローゼルは暑さに強く耐寒性が低い植物なので、5~6月に地植えするのが適しています。
夏にかけて育ち秋に花を咲かせて果実を実らせる植物なので、初夏の陽気がローゼルの植え付けに適しています。
地植えする場合は、事前に植える場所を耕して腐葉土や堆肥を混ぜ込んでおきましょう。また、連作障害が出やすい植物なので、昨年と同じ場所には植えないようにします。
2つ以上の株を植える場合は、株間を60センチメートル程度あけて植えると良いです。そうすることで、互いの株が支え合うので、風などで倒れるといったトラブルを未然に防ぐことができます。
鉢植え・プランターで育てる方法
ローゼルは寒さに弱い植物なので、暖地以外では鉢植え・プランターで育てると冬越ししやすくなります。
その際は、ローゼルは根が深く伸びるので根が回らないようにするために深めの鉢やプランターを選ぶようにします。
鉢植え・プランターで育てる場合は、以下の点に注意しましょう。
- 用土は水はけが良く保水性もあるものを選ぶ。市販の草花用培養土で問題ありません。
- 日当たりと風通しの良い場所に置く。
- 水やりは土が乾いたらたっぷり行う。
- 冬場は乾燥気味に水やりをする。
- 肥料は5月~10月頃に緩効性肥料を適量与える。
- 猛暑が続く時や冬は肥料を控える。
- アブラムシやハダニなどが付くことがあるので、見つけたらすぐに対処する。
ローゼルは鉢植え・プランターでも十分に育ちますが、寒さに注意して管理するのがポイントです。
ローゼルの花が咲く時期と香り・花言葉
ローゼルは9月~11月にかけてハイビスカスやオクラに似た花を咲かせます。
花は透明感のある淡い黄色や白っぽいピンク色で、花径は約10cmです。花は咲いたその日に萎れてしまう一日花ですが、毎日新しい花が咲きます。
ちなみに、ローゼルの花には香りはありません。
ローゼルの花言葉は「新しい恋」「華やか」です。これは毎朝新しい花が美しく咲くことからイメージして付けられたという説があります。またローゼルの果物には「乙女の真心」という果実言葉がつけられています。
ローゼルは花だけでなく、果実もジャムやお茶などに利用できます。ビタミンCやクエン酸などを多く含み女性に嬉しい効果が期待できます。
室内での育て方
ローゼルは寒さに弱い植物なので、暖地以外では冬は室内で管理する必要があります。
室内で育てる場合は、以下の点に注意しましょう。
置き場所 | 日当たりの良い窓際などに置きます。ローゼルは日照時間が足りないと花や果実をつけません。日中は外に出すなどして、できるだけ太陽の光を当てるようにすると良いです。 |
夜は暗くする | 短日植物なので、日照時間が短くなってから花芽を作ります。夜に電柱の明かりや照明が当たると昼だと勘違いしてしまうことがあるのでご注意ください。 |
水やり | 水やりは乾燥気味にします。ローゼルは多湿は嫌うので、土の表面が乾いてから水やりをします。冬場は特に水やりを控えめにしましょう。 |
肥料 | 肥料は与えないか少量だけ与えます。ローゼルは冬場は休眠期に入るので、肥料切れになることはありません。肥料を与えすぎると根腐れや病気の原因になることがあります。 |
乾燥対策 | 乾燥に弱く、葉が枯れたり落ちたりすることがあるため、暖房の風が直接当たらないようにします。湿度を保つために霧吹きをしたり加湿器を使ったりすると良いです。 |
剪定・切り戻し・摘心する方法と目的・時期
ローゼルは生育が旺盛な植物なので、剪定や切り戻し、摘心をすることで、樹形を整えたり、花数を増やしたり、冬越しをしやすくしたりすることができます。
剪定や切り戻し、摘心には、以下のような方法と目的があります。
間引き剪定 | 5〜10月の生育期に混み合ってきた枝や枯れ込んできた枝を根元から取り除きます。熱帯の植物という印象があるローゼルですが、日本の蒸し暑い夏には弱い性質です。夏は風通しをよくするためにも定期的に観察して剪定を行いましょう。 |
強剪定(切り戻し) | 株全体を大きくカットして、株の高さを2分の1〜3分の1ほどに仕上げます。弱ったローゼルを元気にしたい時や株を大きくせずコンパクトに育てたい時、冬を迎える前などに行います。強剪定は生育期間中ならいつ行っても問題ありませんが、剪定後はしばらく花が咲かなくなりますので、花が少なくなり始める10月下旬頃までに行うのがおすすめです。 |
摘心 | ローゼルの草丈が1m以上になったら摘芯を行います。果実を収穫したい場合は花芽は切らないようにします。 |
夏越しの注意点
ローゼルは暑さを好む植物ですが、日本の蒸し暑い夏には弱い性質です。
夏越しする場合は、以下の点に注意しましょう。
- 気温や日照時間によって水やりの回数を調整する。
- 真夏の直射日光を避ける
- 間引き剪定を行う
中でも適切な水やりは大切で、土の表面が乾いてから水やりをするようにします。
水やりが不足すると葉がしおれたり落ちたりする一方で、水やりが過剰になると根腐れや病気の原因になることがあるので、水やりの調整は必要不可欠です。
耐寒性と冬越しの方法
ローゼルは耐寒性が低い植物のため、日本の冬は寒すぎる場合が多いです。
そのため、ローゼルは本来は多年草ですが冬越しは難しいとされており、一年草として扱うことが一般的です。
しかしながら、冬越しに成功すれば翌年も花や果実を楽しむことができるので冬越し対策をする価値は十分にあります。
ローゼルの冬越しの方法は以下のとおりです。
鉢植えの場合
鉢植えのローゼルは寒くなる前に室内に取り込みます。乾燥気味に水やりを続け、明るく暖かい場所かつ暖房の風が直接当たらない場所に置き、春になったら外に出して日光を当ててやります。
また、根が鉢からはみ出している場合は植え替えを行います。 植え替えの際は、新しい土を使ってひと回り大きい鉢に植え替えましょう。 鉢を大きくしたくない場合は、根を整理して同じ鉢に新しい土を使って植え替えると良いです。
地植えの場合
温暖地で地植えのまま冬越しをする場合は、株元を覆って保温します。株元に落ち葉や枯れ草などを敷き詰めて厚めに覆い、その上からビニールや不織布などで覆って風雨から守ります。春になったら、覆っていたものを取り除きます。
冬の間は水やりは控えるのがポイントです。冬越しした株は弱っていることが多いので、強剪定(切り戻し)を行います。
ローゼルを挿し木で増やす方法
ローゼルは耐寒性が低く日本では冬越しできないことが多いので、挿し木ではなく種まきで増やすのが一般的です。
とはいえ、挿し木で増やせないことはないので、挿し木で増やすことに挑戦してみてはいかがでしょうか。
ローゼルの挿し木の適期は、気温が高くなり発根が促されやすくなる4月中旬から6月頃です。
具体的な手順は以下のとおりです。
- 古い茎は発根しにくいので、新しい茎を選ぶ。
- 茎の先端を切り取る。(切る長さは10~15cm程度が良いです)
- 上の葉は1~3枚ほど残して下の葉を取り除く。
- 切った茎を清潔な水に挿す。(水には発根促進剤を加えると効果的です)
- 水を毎日取り替える。
- 水に挿した茎を日陰で管理する。
2~3週間くらいで根が出てくるので、根が5cmくらいになったら鉢に植え替えます。
鉢に植え替えたら日当たりと風通しの良い場所におき、水や肥料を適宜与えてながら管理します。
ローゼルの実(萼と苞)と葉の収穫時期・方法
ローゼルは10月中旬~11月が収穫時期です。花が咲いてから45~60日後に果実がぷっくりと熟してきたら収穫できます。
収穫する際は、ギザギザした萼のすぐ下をハサミで切ります。
収穫したローゼルは丸ごと水洗いして、内側に入っている実は除いて萼と苞を分けます。尖っていないほうの下半分を包丁で切り、中に入っている種を取り出します。切った断面に割り箸を当てて、尖っているほうに向かって押し出すと作業が簡単です。
ローゼルの萼と苞はそのまま生食したりハーブティー、ジャムや塩漬けにして楽しむことができます。
また、ローゼルの葉も食用にでき、葉は若いうちに摘んで食べると良いです。生のままサラダやスムージーにしたり、茹でて和え物やお浸しにしたりします。
収穫後はジャムやハーブティーとして楽しむことができます。
かかりやすい病気・害虫
ローゼルは比較的病気に強い植物ですが、水やりや肥料の管理が不適切だと葉が枯れたり黄色くなったりすることがあります。
その場合は、水やりや肥料の量を調整して土の状態を改善しましょう。
ローゼルにつきやすい害虫としては、アブラムシやハダニが挙げられます。特徴や駆除方法を以下にまとめました。
害虫 | 特徴 | 駆除方法 |
アブラムシ | 春先から発生しやすく、茎や葉の裏側に集まって吸汁します。アブラムシは緑色や黒色などの小さな虫で、目視で確認できます。 | 水圧でアブラムシを洗い流すか手で取って駆除します。アブラムシが付いた部分をティッシュペーパーなどで挟んで取り除くようにします。 |
ハダニ | 夏に乾燥すると発生しやすく、葉の裏側に巣を作って吸汁します23. ハダニは赤色や黄色などの極小の虫で、目視では確認しにくいです | 水洗いや殺虫剤で駆除します。殺虫剤は市販のものを使用しますが、ハダニに効果的なものを選ぶ必要があります。また、殺虫剤は植物にも影響を与える可能性があるので、使用前に注意書きをよく読みましょう。 |
ローゼルの育て方に関するQ&A
ここでは、ローゼルの育て方に関するQ&A(質問&回答)を紹介します。
- 背丈はどれくらいに成長する?
- 間引きした苗は植え替えできる?
- ハイビスカスローゼルとローゼルは同じ植物?
- 連作障害が起きやすい?
上記の問いについて詳しく回答していますので、参考にしてみてくださいね。
背丈はどれくらいに成長する?
ローゼルの草丈は栽培環境によって変わりますが、1~2メートルになります。
日当たりの良い場所で育てるとよく成長しますが、背が高くなりすぎると強風で倒れやすくなったり花や実が付きにくくなったりすることもあります。
その場合は、てっぺんの生長点を摘むことで横枝を増やし樹勢のバランスを整えることができます。
また、葉が茂りすぎて株間の風通しが悪くなると病気や害虫の発生につながることもあるので、適度に葉を間引いてあげると良いです。
間引きした苗は植え替えできる?
間引きした苗は植え替えることができます。ただし、根が弱いので根を傷つけないように注意しながら移植しましょう。
また、移植後は水やりや肥料を切らさないようにして苗の成長を促進させるようにします。
ハイビスカスローゼルとローゼルは同じ植物?
ハイビスカスローゼルとローゼルは同じ植物です。ハイビスカスローゼルはローゼルの別名の一つで、ハイビスカスティーの原料となる植物です。学名はHibiscus sabdariffaでアオイ科フヨウ属に属します。
ただし、ハイビスカスとは別の植物です。ハイビスカスとは、フヨウ属の総称で、約200種類以上の植物が含まれます。ハイビスカスは観賞用の常緑低木で、花びらが赤やピンクなどの鮮やかな色をしています。
一方のローゼルは一年草または多年草で、花びらは淡い黄色や白っぽいピンク色をしており花が咲き終わると萼や苞が肥厚して赤くなります。
連作障害が起きやすい?
連作障害とは、同じ植物を何年も同じ場所に植えると土壌の栄養分が不足したり病原菌や害虫が増殖したりして、生育が悪くなる現象ですが、ローゼルは連作障害を起こす可能性があります。
そのため、前年と異なる場所に植えるようにしましょう。
まとめ:ローゼルの育て方のポイント
この記事では、ローゼルの育て方について、種まき時期や収穫・挿し木の方法などをわかりやすく紹介しました。
熱帯原産の植物で日本では冬に耐えられないことが多いので、鉢植えで管理するか、冬場は室内に移動する必要があります。
また、種まきは春から夏にかけて行い、発芽後は日当たりと水やりに気を付けます。収穫は秋から冬にかけて行い、赤く膨らんだ部分を摘み取ります。挿し木は夏から秋にかけて行い、水栽培か土栽培で根付かせます。
ローゼルは食用だけでなく、観賞用としても楽しめる植物です。自宅で育てることで、新鮮なローゼルを収穫して加工したり食べたりすることができます。
また、ビタミンCやアントシアニンなどの栄養素は、美容や健康にも効果が期待できます。ぜひこの記事を参考にして、ローゼルの育て方に挑戦してみてくださいね。