サポナリア・オキモイデスは、春から初夏にかけてピンクや白の小さな花を株一面に咲かせるナデシコ科の多年草です。
ロックソープワートやツルコザクラとも呼ばれ、丈夫で乾燥に強くグランドカバーやロックガーデンに適しています。
しかし、この植物は地下茎を伸ばして広がる性質があるため、増えすぎてしまうのが難点で栽培をためらう人もいるでしょう。
そこでこの記事では、サポナリア・オキモイデスの育て方と、増えすぎを防ぐ栽培方法、ハーブとしての魅力についてご紹介します。
植え付けや水やり、剪定などの手入れ方法などを詳しく解説します。増えすぎるのを防ぐ栽培方法もお伝えしているので、是非参考にしてみてくださいね。
サポナリア栽培に適した環境づくり
サポナリア・オキモイデス(ソープワート)は、日照が多く乾燥した気候を好む植物なので、日陰や湿気の多い場所では上手く育ちません。
栽培に適した環境(用土づくり・水やりと肥料の与え方)についてご紹介します。
用土づくり | 土質をあまり選ばない植物ですが、水はけの良い用土を使うことがポイントです。一般の草花用培養土を使う場合は、鹿沼土や軽石などを2割くらい混ぜておきます。また、石灰分を好むので苦土石灰などを混ぜておくとよいでしょう。 |
水やり | 乾燥に強い植物ですが、完全に乾かすと枯れる恐れがあります。庭植えではほとんど水やりは不要ですが、鉢植えでは用土が乾いたらたっぷりと水を与えます。特に発蕾期から開花までは乾かさないように注意しましょう。高温期には水やりを多めにして、蒸れを防ぎます。 |
肥料 | やせ地でもよく育つ植物なので、肥料はあまり必要ありません。庭植えでは数年間は施さなくても大丈夫ですが、鉢植えでは早春と秋に緩効性化成肥料を施しておくと花つきがよくなります。高温期には肥料を施さないほうが安全です。 |
サポナリア・オキモイデス(ソープワート)の種まき時期と方法
サポナリアの種まき時期は秋が最適です。
発芽温度は15~20℃なので春に蒔いても発芽しますが、春に種まきをする場合は発芽までに時間がかかる(40日間くらい)ことがあるので、秋に種まきをして冬を越して春から花が咲かせる方が良いでしょう。直まきでもポットまきでも可能です。
発芽率は高いので、数粒ずつまいて間引くか、良い芽を残して育苗するとよいでしょう。
サポナリア・オキモイデスの種まき方法は以下のとおりです。
- ポットに水はけの良い用土を入れる。
- 種をまいて軽く土で覆う。(種は小さいので、均等にまくことが大切です)
- 水やりをして、日当たりの良い場所に置く。
- 発芽したら良い芽を残して間引きする。
- 土が乾いたら水やりをして管理する。
なお、種まきの用土は赤玉土、鹿沼土、バーク堆肥(腐葉土)を4:3:3程度の割合にし、苦土石灰を少し混ぜたものがおすすめです。
地植えの時期と方法
サポナリアは、日当たりがよく水はけの良い場所で地植えすると丈夫に育ちます。
地植えの時期は、3月や10~11月が適しています。ただし、鉢植えから地植えに移す場合は、根鉢が崩れないように注意しましょう。
地植えの方法は次のとおりです。
- 苗を植え付ける2週間ほど前に、1㎡あたり100~150g程度の苦土石灰をまいてすき込む。
- 堆肥や腐葉土、緩効性化成肥料を混ぜて土壌を改良する。
- 植え穴をあけて苗を入れる。(深植えしないように注意する)
- 根元を軽く押さえて固定する。
- 複数株植える場合は株間は30~40cmくらい空ける。
- 水をたっぷりと与える。
- 乾燥しない程度に水やりを続けて管理する。
サポナリアは地下茎で広がっていくので、あまり密集させないほうがよいでしょう。
鉢植え・プランターで育てる方法
サポナリアは地植えだけでなく、鉢植えやプランターでも育てることができます。
地植えと同様に3月や10~11月が植え付けの適期です。
鉢植え・プランターで育てる方法は次のとおりです。
- 適した鉢やプランターを選ぶ。
- 適した用土を用意する。
- 根を傷つけないように注意しながら植え付ける。
- 日当たりがよく風通しの良い場所に置く。
- 適切に水やりと肥料を与える。
なお、注意点としては次のとおりです。
鉢選び | サポナリアは根が深く伸びるので、深さのあるものを選ぶようにします。 |
用土 | 一般的な草花用培養土に鹿沼土や軽石などを2割くらい混ぜたものや、赤玉土6:腐葉土4の配合土などがおすすめです。 |
日光 | 直射日光が当たる場所が理想的ですが、半日陰でも育ちます。 |
水やり | サポナリアは乾燥に強いですが、鉢植えでは水分が失われやすいので、定期的に水やりを行います。用土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。 |
肥料 | やりすぎると草丈が高くなって倒れやすくなるので、控えめにします。3月と9月に緩効性化成肥料を施してもよいでしょう。 |
サポナリアは生命力が強く、鉢植えでも自然な感じで広がってくれます。ベランダや玄関先などにおすすめです。
植え替え時期と方法
サポナリアはを鉢植えやプランターで育てる場合は、根が混み合って生育が悪くなりやすいので、混み合う前に植え替えを行う必要があります。
植え替えは、春(3月~4月中旬)か秋(10月~11月)が適しています。
なお、庭植えの場合は株が広がりすぎているようなら不要な部分を取り除くようにします。
植え替えの方法は次のとおりです。
- 植え替える前に水やりをしておきおく。
- 植え替える鉢やプランターを用意する。
- 鉢底石を敷いて水はけを良くしておく。
- 新しい用土を入れる。
- 根鉢が崩れないように注意しながら、鉢から株を取り出す。
- 株分けを行う場合は、根鉢を包丁やハサミで切り離す。
- 新しい鉢に植え付ける。
- 株の周囲に用土を入れて固める(根元が埋まらないように注意)
- たっぷりと水やりをする。
以上が植え替えの方法です。鉢から苗を取り出す際は、根鉢が乾いていると崩れやすくなるので水分を含ませておくのがポイントです。
新しい鉢植えを一回り大きなものにする必要がありますが、株分けを行って複数のものに分けても構いません。
サポナリアの花が咲く時期と香り・花言葉
サポナリアは、6月から9月にかけて、かすかに甘い香りがする淡いピンクや白の小さな花を茎の先にまとめて咲かせます。
花は直径2~3cm程度で、5枚の花弁と副花冠と呼ばれる弁状の付属物があります。園芸品種では、八重咲きのものもあります。
花言葉は、「友の思い出」「清らかな二人」「賢明な行動」「清廉」「清い心」などがあります。これらの花言葉は、サポナリアに含まれるサポニンという成分が石鹸のように泡立ち、洗浄効果があることに由来しています。
室内での育て方
サポナリアは、日当たりが良く、水はけの良い場所を好む植物です。
室内で育てる場合は、以下の点に注意してください。
日照 | 日照が多くないと花付きが悪くなります。できるだけ窓際やベランダなど明るい場所に置いてください。夏場は直射日光が強すぎると葉焼けすることがあるので、午前中や午後の日陰に移動させると良いでしょう。 |
水やり | 乾燥に強い植物ですが、室内では乾きやすいので定期的に水やりをしてください。用土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えますが、水はけが悪いと根腐れすることがあるので、鉢底から水が出たら余分な水は捨ててください。冬場は水やりを控えめにします。 |
肥料 | やせ地でも育つ植物ですが、室内では栄養不足になりやすいので花期に向けて肥料を施してください。春と秋に緩効性化成肥料を鉢土に混ぜ込むか、液体肥料を月に1~2回与えます。高温期や冬場は肥料を控えます。 |
植え替え | 根詰まりしやすいので、2~3年に一度は植え替えを行ってください。適期は春か秋です。一回り大きな鉢に植え替えるか、株分けして複数の鉢に分けます。用土は草花用培養土に赤玉土や軽石などを混ぜたものが適しています。 |
剪定・切り戻しする方法と目的・時期
サポナリアは、伸びすぎた枝や茎を切り取って、株を短くし、植物の姿(樹形)を整える切り戻し剪定を行うことで、生長を促し、花付きを良くすることができます。
切り戻し剪定の目的は3つです。
- 株の大きさ・樹形を整える。
- 不要な枝を減らした分、新芽・実・花へ養分をまわして生長を促す。
- 風通しをよくして病害虫を予防する。
切り戻し剪定のタイミングは主に3つあり、それぞれの時期にすべきことは次のとおりです。
花が咲き終わった後 | 花が終わった後、すぐに花のすぐ下(花首)で切り落とすか、枝元から花を切り落とします。咲き終わった後の花も養分を使うため、残しておくと新芽や新しい花の邪魔になります。できるだけ早く切り落とすことで、脇芽が出てボリューム感も増えます。 |
休眠期から目覚める前 | 一度、バッサリ短く切って、再生を図る場合に行います。植物によって休眠期は夏だったり冬だったりしますが、多くは冬に休眠期を迎えます。花が咲きにくい古い枝や弱った枝を一掃できるうえ、休眠期が終わると徐々に植物が生長を始めるので、新たに枝を伸ばし花を咲かせてくれます。 |
不要な枝が育ってきたら | 風通しを悪くしたり他の枝や茎の生長の邪魔になったり、樹形を乱す枝を「不要枝」と呼ぶことがあります。休眠期以外の期間であれば、不要枝が伸びてきたら切り取ることで樹形を保ちます。 |
切り戻し剪定の方法は以下のとおりです。
- 清潔なハサミやナイフを用意する。
- 切り口が乾燥しやすい時間帯(晴れた日の午前中など)に作業する。
- 新芽のすぐ上で切り取る。(新芽とは、枝の途中で少し膨らんでる次の枝が伸びてくる場所です)
なお、不要枝には以下のようなものがあります。
徒長枝 | 他の枝よりも生長が早く、勢いよく出た枝のことです。枝元から切ってもいいですが、全体の枝数が少ないときは1/3ほどの長さに切ります。 ひこばえ:株元から出てくる、細い枝をひこばえといいます。見つけ次第、株元から切り取ります。 |
ひこばえ | 株元から出てくる、細い枝をひこばえといいます。見つけ次第、株元から切り取ります。 |
内向枝 | 幹(主茎)の方へ向かって伸びる内向きの枝を、内向、逆さ枝といいます。美観を損ね、葉っぱをもっていると他の枝の邪魔になるので、枝元から切り取ります。 |
車枝 | 同じ位置から、複数の枝が車輪のように伸びている枝を車枝と呼びます。日当たりや通風に影響しますから、1~2本を残して切り取ります。 |
立ち枝、下がり枝 | 真上、真下に向かって生えている枝のことです。樹形を乱し、景観を損なうため枝元から切り取ります。 |
胴吹き枝 | 一番太い幹から生えてくる細い枝です。突然生えてくる枝で、「幹吹き」とも呼ばれます。胴吹き枝よりも上部分が弱っているときに発生することもあるので、警告だと思って弱っていないか観察しましょう。枝は、枝元から切り取ります。 |
絡み枝 | 交差している枝のことです。どちらかを残して、もう一方を枝元から切り取ります。 |
平行枝 | 平行に伸びる枝のことです。生長の妨げになるので、一本だけ残して枝元から切り取ります。 |
ふところ枝 | いずれは枯れる、枝の内部から出てくる小枝です。全体的に枝数が少ない場合は、切り取らなくても問題ありませんが、茂っているようであれば枝元から切り取ります。 |
夏越しは根腐れや白絹病に注意する
サポナリアは耐暑性が強い植物ですが、高温多湿の環境には弱く、根腐れや白絹病などの病気にかかりやすくなります。
夏越しをする際には、以下の点に注意してください。
水やりは控えめに | サポナリアは乾燥に強く、水やりはほとんど必要ありません。庭植えの場合は、降雨だけで十分です。鉢植えの場合は、用土が乾いたらたっぷりと水を与えますが、水切れを起こさない程度にします。水やり過ぎると根腐れの原因になります。 |
日陰に移動させる | サポナリアは日当たりが良い場所を好みますが、真夏の直射日光は避けるようにします。日中は日陰に移動させたり、日よけをしたりして暑さを和らげます。特に鉢植えの場合は、鉢が熱くなって根が傷むことがあります。 |
風通しを良くする | サポナリアは湿気に弱く、白絹病などの病気にかかりやすくなります。風通しを良くすることで葉や茎の乾燥を促し、病気の予防になります。他の植物との間隔をあけたり枝葉を間引いたりして、空気の流れを確保します。 |
肥料は施さない | サポナリアはやせ地でも育つ植物で、肥料を必要としません。夏場に肥料を施すと生育が旺盛になりすぎて倒れやすくなったり、病気や害虫に弱くなったりします。肥料は春と秋に施すだけで十分です。 |
耐寒性と冬越しの方法
サポナリアは耐寒性が強い植物で、日本のほとんどの地域では冬越しできます。
多くの種類は半常緑性で、冬の間は葉を地面に密着させてロゼット状になります。一部の葉が枯れることもありますが、春になると新芽を出して成長します。
冬越しをする際には、以下の点に注意してください。
水やりは控えめに | サポナリアは乾燥に強く、水やりはほとんど必要ありません。庭植えの場合は、降雨だけで十分です。鉢植えの場合は用土が乾いたらたっぷりと水を与えますが、水切れを起こさない程度にします。水やり過ぎると根腐れの原因になります。 |
霜や雪から守る | サポナリアは寒さに強いですが、霜や雪に当たると葉が傷んだり枯れたりすることがあります。霜や雪が降る前に、枯れた茎や花を切り落としたり藁や落ち葉などで覆ったりして保護します。鉢植えの場合は、鉢底から凍結しないように鉢を持ち上げたり、屋内や温室などに移動させたりします。 |
肥料は施さない | サポナリアはやせ地でも育つ植物で、肥料を必要としません。冬場に肥料を施すと生育が旺盛になりすぎて倒れやすくなったり、病気や害虫に弱くなったりします。肥料は春と秋に施すだけで十分です。 |
サポナリアの増やし方
サポナリアは種まき以外にも、
- 挿し木で増やす方法
- 株分けで増やす方法
この2通りの増やし方があります。
いずれも種まきほど簡単ではありませんが、具体的な方法と適期についてお伝えしていきます。
挿し木で増やす方法と時期
サポナリアを挿し木で増やすのは、春から夏にかけてが適しています。
実際の手順は以下のとおりです。
- 挿し穂として新芽が出たばかりの若枝を選ぶ
- 枝を10~15㎝程度に切り、葉を半分ほど取り除く。
- 切り口を斜めにカットして吸水しやすくする。
- 挿し穂を水に浸して(水揚げ)水分を吸収させる。(1~2時間程度)
- 用土は水はけの良いものを用意する。
- 挿し穂の切り口に発根促進剤をつける。
- 挿し穂の下部を用土に挿す。
- 水やりは乾燥しない程度に行い日陰で管理する。
- 根が出てきたら鉢に植え替える。(1ヶ月程度で発根します)
株分けで増やす方法と時期
サポナリアを株分けで増やすのは、春から夏にかけてが適しています。
サポナリアは、地下茎を伸ばして広がる性質があるので、株分けで簡単に増やすことができます。
実際の手順は以下のとおりです。
- 株分けする前に枯れた茎や葉を切り取っておく。
- 根を傷めないように株を掘り上げて、傷んだ根を取り除く。
- ナイフや鋏などを使って、地下茎の節の部分を数株に切り分ける。
- 切り分けた株を深植えしないように注意して植え付ける。
- 植え付け後にたっぷりと水を与える。
なお、切り分ける際は、株を小さく分けると育ちが悪くなりますのでご注意ください。
サポナリアは地下茎が長く伸びて周囲に広がるので、不要な部分は抜き取って管理しましょう。
サポナリアが増えすぎるのを防ぐ方法
サポナリアはこぼれ種以外にも増えていく手段があるため、放っておくと増えすぎて庭を占領してしまうこともあります。
サポナリアが増えすぎる原因は主に以下の3つです。
こぼれ種 | 4~8月に花を咲かせますが、その後に種子ができます。種子は風や鳥などによって飛散し、庭のあちこちに落ちて発芽します |
地下茎の伸長 | 地下茎を伸ばして広がっていきます。地下茎は根元から切り離されても生き残り新しい株を作ります |
株分けや植え替え | 株分けや植え替えをすることで増やすことができます。しかし、その際に根や茎の一部が残ってしまうと、そこから新たな株が発生します。 |
これを踏まえて、サポナリアが増えすぎる対策は以下のようなものがあります。
花がら摘み | 花がらを摘むことで種子の飛散を防ぐことができます。花が終わったら早めに花茎ごと切り取りましょう |
根際の掘り返し | 地下茎は浅い場所にあります。根際を掘り返して地下茎を切り取ることで、広がりを抑えることができます |
鉢植えやコンテナ植え | 鉢植えやコンテナ植えにすることで、地下茎の伸長を制限することができます。鉢やコンテナは底穴を開けて水はけを良くしましょう。 |
収穫時期と方法
サポナリアは、葉や根に含まれるサポニンを利用して石鹸の代わりにすることができるハーブです。
収穫時期は、花が終わった後の秋から冬にかけてです。収穫方法は以下のとおりです。
根の収穫 | 根は地上部が枯れた後に掘り起こします。根は太くて長く、地下茎として広がっています。根を掘り起こしたら泥を洗い流して切り分けます。切り分けた根は日陰で乾燥させます。 |
葉の収穫 | 葉は地上部が枯れる前に摘み取ります。葉は新芽から成長したものがよく、古くなったものは避けます。葉を摘み取ったら、水洗いして水気を切ります。葉は日陰で乾燥させるか生のまま冷凍保存します。 |
まとめ:サポナリア・オキモイデス(ソープワート)の育て方のポイント
サポナリア・オキモイデス(ソープワート)は、春から初夏にかけてピンクや白の小さな花を株一面に咲かせるナデシコ科の多年草です。
ロックソープワートやツルコザクラとも呼ばれ、丈夫で乾燥に強く、グランドカバーやロックガーデンに適しているハーブです。
夏越しも冬越しもそれほど手間はかからず育てやすい植物ですが、剪定はしっかりと行っておく必要があります。
また、地下茎を伸ばして広がる性質があるため、増えすぎてしまうこともある点に注意が必要です。
収穫した葉や根を利用して石鹸の代わりにもできるので、ご自宅でも育ててみたいという方は挑戦してみてくださいね。