ステビアは、南米原産のキク科の多年草で、葉に含まれる甘味成分が砂糖の約300倍という特徴を持つハーブです。
ステビアは熱帯から亜熱帯の原産であり寒さに弱く、日本では冬に霜に当たると枯れてしまうことからなかなか育てにくい植物だと感じている方も多いと思います。
しかし、適切な管理をすれば冬越しや室内での栽培も可能ですし、挿し木や株分けなどの方法で簡単に増やすこともできます。
この記事では、ステビアの育て方について、冬越し・室内の栽培方法を中心に、挿し木などによる増やし方などについてご紹介します。
ステビア栽培に適した環境づくり
ステビアは日光を好むので、太陽光がよく当たる場所で栽培するようにします。
ただし、30℃を超すと暑さで弱ることがあるので真夏は直射日光を避けるか日陰に移動させましょう。
用土づくり
ステビアは適湿な土壌環境を好み乾燥がやや苦手ですが、過湿になると根が腐ってしまうことがあるため注意が必要です。
栽培に適した土を作るためには、以下のとおり赤玉土や腐葉土などを混ぜ込んで水はけの良い土を用意すると良いでしょう。
- 赤玉土(小粒か中粒)6:腐葉土4くらいの割合で混ぜる
- 20~30cmくらいよく攪拌しながら混ぜ込む
- 1週間程度土を落ち着かせる
なお、赤玉土は水分を保持しながらも余分な水分を排出する働きあるため水はけのよい土にでき、腐葉土は有機物や微生物を供給して土の肥沃さを高める働きがあります。
この2つを混ぜ合わせることで、ステビアが好む水はけが良く、栄養分が豊富な土が作れます。
水と肥料の与え方
ステビアは湿度が高すぎても低すぎてもダメージを受けるので、土の表面が乾燥し始めたときを目安に水を与えるようにします。
成長期(春から夏)には月に一度、適量の肥料を与えます。肥料は過剰に与えないように注意しましょう。秋から冬にかけては肥料の量を減らします。
有機肥料を使用すると、土壌の健康を保つことができます。コンポストや堆肥も効果的です。
成長が停滞していると感じたら、軽く追肥を行うと良いでしょう。ただし、肥料を与えすぎると逆効果になるので注意が必要です。
種まきの時期と方法
ステビアは、種まきや苗植えの時期によって生育や収穫量に影響が出るので注意が必要です。
春まきと秋まきがあり、春まきは3月~4月頃、秋まきは9月~10月頃に行います。
種まき準備として、種を水に浸して吸水させておきます。充分に水を吸った種を湿った土に蒔いて軽く覆い土をして完了です。ステビアの種の発芽に必要な温度は22℃前後と高いので発芽までは日当たりと温度管理に気をつけます。
ただし、ステビアの種は発芽率が低い(諸説ありますが25%~50%くらい)ので、苗を購入するか親株から茎を挿し木して増やす方が簡単です。
発芽したら混み合ったところを間引きながら、本葉が4枚くらい出た頃に一度小さな鉢に1本ずつ植え替えます。
地植えの時期と方法
苗植え(地植え)に関しては、春から夏(5月~6月)にかけて行います。
植え付ける場所は日当たりが良く風通しの良い場所を選びます。ステビアは日光を好むので、太陽光がよく当たるようにします。
ただし、30℃を超すと暑さで弱ることがあるので、真夏は直射日光を避けるか日陰に移動させます。鉢植えやプランターに植える場合は、草丈が大きくなるので大きめの容器を利用します。
用土は水はけの良い肥えた土が適しています。
苗を植え付ける際には、ステビアの根に付いている土はほぐさずにそのまま植え付けるようにすれば、根が傷むのを防ぐことができます。
ただし、育苗ポットから苗を取り出した際に、根がびっしり廻るようにして伸びて詰まってしまっているような苗ならば、根を軽く少しほぐしてから植え付けを行うようにした方がその後の生育には好ましいです。植え付け間隔は30~40cmくらい空けておくのが望ましいです。
なお、ステビアは種から育てると個体差が大きくなりがち(甘味の強い優秀な株もあれば逆に苦みがある株もできます。)なので、ステビアを増やす際には、甘味成分・ステビオサイドの含有量には品種差・個体差があることを考慮して、含有量の多い良質な個体を選んで挿し木で増やして栽培するようにすると良いでしょう。
プランターや鉢植えで育てる方法
ステビアはプランターや鉢植えでも十分に育てられます。
寒さに弱いので、初めから鉢植えで育てて冬には室内へ移動させて栽培する方が育てやすいと言えます。
適した土壌や環境、水やりや肥料は地植えの時と同じで問題ないので、上記の項を参考にして最適な環境で栽培してみてくださいね。
ただ。夏場の室内は特に高温になりやすいので日陰に移すなど気をつけたいところです。
室内での育て方
ステビアは日本では鹿児島以南でしか露地栽培できないほど寒さに弱いため、室内で鉢植えやプランターで育てられることが多いです。
室内の優しく日光の差し込む場所で育てると、葉がやわらかくて甘味の強いステビアに育つのが特徴です。
室内で鉢植えで育てる場合は地植えの時と同様の育て方で良いですが、夏の暑さとエアコンの風に長く当てると葉が乾燥して枯れ込んでしまう点には注意が必要です。
水耕栽培のやり方
水耕栽培で種から育てる場合は、湿らせたスポンジに種まきして発芽を待ちますが、前述したとおりステビアの種の発芽率は低いので少し多めに種まきをしておいた方が無難です。
水耕栽培のやり方の手順は次のとおりです。
- 水耕栽培キット、ネットポット、水耕栽培液、発泡スチロールを用意する
- ネットポットにステビアの苗を植え、根が水に浸かるように調整する
- 発泡スチロールにネットポットの穴を開けて、水耕栽培液を入れた容器にセットする
- 水耕栽培液の水位とpHを定期的にチェックして、必要に応じて補充や調整を行う
- ステビアの葉が十分に成長したら収穫する
水は2日〜3日に1回は交換し、新しい水で育てて株を清潔に保つのがポイントです。
収穫時期
ステビアの収穫時期は、草丈が20cm以上に伸びてくる7月〜11月に行います。
生育旺盛で株がよく茂るので、生育期は随時葉を収穫して利用できます。
甘味成分のステビオサイドが一年のうちで一番高くなるのは花が終わったあと(10月下旬から11月の上旬)なので、保存目的の場合はこの時期に収穫すると良いです。
収穫は株元から刈り取って束にし、風通しの良い日陰でよく乾燥させた後保存しましょう。
冬越しの方法
ステビアは寒さに弱いですが霜や寒風に当てなければ0℃くらいまでは耐えられ、多年草でもあり宿根草でもあるので、冬に枯れても根は残り春に新芽が出てきます。
地植えのまま冬越しをする場合は、霜や凍結の心配がある場合ではマルチング(株元をワラや落葉堆肥、ピートモスなどで覆う)などの防寒対策が欠かせません。
なお、ステビアは冬に休眠期に入るので水や肥料を少なめに施しましょう。
前述したとおり、無事に冬越しできていれば春になると新芽が出てくるので、その時期に剪定や植え替えを行います。
剪定・摘心のやり方
ステビアは、適切な剪定・摘芯を行えば、枝数や葉の量を増やし収穫量をアップさせることができます。
春に新芽が出てくると急速に成長しますが、この時期に茎の先端の芽を摘む(摘心)ことで、茎のワキから新しい芽が伸びてきて枝分かれし、株がふさふさと茂ってくれます。摘心は株全体が均等になるように行うのがコツです。
ステビアは、夏から秋にかけて白い小さな花を咲かせますが、この花は葉の収穫には不要なものであり、むしろ栄養を奪って葉の成長を阻害します。
そのため、花芽が出たら茎ごと切り落とし、株に余分なエネルギーを消費させずに葉の成長を促進します。
また、収穫を兼ねて定期的に剪定をして樹形を整えるようにすることも大切です。剪定することで風通しが良くなり、株の蒸れ防止にも繋がります。
ステビアの増やし方
ステビアは種まきでも増やせますが、発芽率が低いだけでなく個体差が大きい(甘さもバラつきがある)ため、挿し木や水挿しで増やす方が一般的です。
初夏(6月頃)に挿し木をすると発根率が比較的高いので、この時期に行うのが良いでしょう。
種から増やすと品質に違いが出やすいですが、新芽を利用して挿し木をすることで同じ品質のステビアを増やすことができます。
挿し木で増やす方法
ステビアの挿し木での増やし方は以下のとおりです。
- 生き生きとした充実している部分の茎を選ぶ
- わき芽の上を1cmほど残して切る
- 下葉を落として節の下は2cmほど切る
- 水に1時間程度挿して、吸水させる
- 湿らせたさし床に穴を開け、垂直に挿す
3週間くらいするとわき芽が伸びてきているのが確認出来たら、発根したことがわかります。
根を傷つけないように株を掘り上げて、鉢上げを行います。
水差しで増やす方法
水挿しで増やす場合は、以下のとおり発根させるようにしましょう。
- 上記の挿し木の手順1~3を行う
- 切った茎を一輪挿しやコップなどに水を入れて挿す
- 日当たりと風通しの良い場所に置く
- 水を数日おきに取り替えます
- 約2週間ほどで発根するので根の先を確認する
発根しているのが確認出来たら鉢上げを行います。
挿し木も水挿しも難易度が高くないので、適切な増やし方を行えば一株から何株も増やすことができます。
寄せ植えで相性の良いハーブ
砂糖の200~300倍の甘味を持つ天然の甘味料として使えるステビアは、寄せ植えにしてキッチン周りに置いておくと、摘みたてで最も美味しい状態で楽しむことができます。
そんなステビアとの寄せ植えに相性の良いハーブは、以下のようなものがあります。
相性の良いハーブ | 補足 |
ミント | ミントを一緒に植えると、爽やかな香りと甘みが楽しめます。ミントはステビアと同じく日当たりを好みますが、水やりは少なめで大丈夫です。ミントはステビアよりも草丈が低いので、寄せ植えでは前方に配置すると良いでしょう。 |
ローズマリー | ローズマリーを一緒に植えると、芳醇な香りと甘みが楽しめます。ローズマリーはステビアと同じく日当たりを好みますが、乾燥に強いので水やりは控えめで大丈夫です。ローズマリーはステビアよりも草丈が高いので、寄せ植えでは後方に配置すると良いでしょう。 |
ハニーステビア | ハニーステビアを一緒に植えると、軽やかな甘味と花のような香りが楽しめます。ハニーステビアはステビアの仲間で、同じような育て方ができます。ハニーステビアはステビアよりも小ぶりなので、寄せ植えでは中央に配置すると良いでしょう。 |
以上のように、ステビアと相性の良いハーブは、香りや甘みを引き出すものや、育て方や草丈が合うものがおすすめです。
ステビア栽培(農法)について
ステビア栽培とは、キク科植物のステビアの抽出物を農作物に与えることで、土壌の改良や作物の品質向上を図る農法です。(ステビア農法とも呼ばれます)
ステビアにはダイオキシンやニコチンなどの有害物質を分解する作用や、微生物の活性化、病原菌の抑制などの効果があります。ステビア栽培では、ステビアの品種や栽培方法、抽出方法などによって、農作物の甘味や生育、日持ちなどに違いが出ることが報告されています。
ステビア栽培は、環境と健康に配慮した農業として注目されています
中でも、いちご(やよいひめなど)・トマト・みかん・メロンなどの生産に用いられているのが有名です。
ステビアの育て方に関するQ&A
ステビアの育て方に関するQ&A(質問&回答)を紹介します。
- ステビアの栽培は危険?
- 花は食べられる?
- 枯れる原因は?
- かかりやすい病害虫と対策は?
上記の問いについて詳しく回答していますので、参考にしてみてくださいね。
ステビアの栽培は危険なの?
海外では一部の国で禁止されたり、安全性に疑問が持たれたりすることもあったことから、ステビアの栽培は危険なのか気になる人は多いでしょう。
栽培自体に危険性は全くありませんが、ステビアを栽培して利用することによる危険性を危惧している声については、結論から言うと注意点を守る上では大きな危険性はありません。
まず前提として、日本では1971年に商品化されて以来、食品添加物として認められています。その上で注意点としては摂取量が挙げられます。
甘味成分のステビオシドやレバウディオサイドによって性ホルモンが減少した事例がありますが、海外でステビアを摂取した子供の「テストテロン」という男性ホルモンが減少したという報告に基づいているものです。
また、体内に蓄積しやすい性質を持つため、長期間摂り続けると何らかの症状が出るのではないかと懸念されています。
そのため、ステビアを摂取する際には、適量を守ることが大切です。日本ではステビア抽出物の1日摂取許容量(ADI)は4mg/kgと定められていますが、これは体重50kgの人なら200mgまでということです。
参考:食品安全委員会 食品安全総合情報システムのページ
以上のことから、ステビアは性ホルモンや血糖値に影響を与える可能性があるため、妊娠中や授乳中の女性や、糖尿病や高血圧などの持病がある人は避けた方が良いでしょう。
ステビアの危険性についてはこちらのページで詳しくお伝えしています。
花は食べられる?
ステビアの花は食べられます。
ステビアの花は白い小さな花が集まった穂状の花序で、9月から11月にかけて咲きます。花にも甘味成分が含まれており、葉よりもさらに甘い味がします。そのため、食べるときは少量で十分です。
そのまま生で食べたり、サラダやデザートにトッピングしたりすることができます。また、ドライフラワーにしてハーブティーに入れたり、シロップやジャムに煮詰めたりすることもできます。色も香りも控えめなので、他の食材やハーブと組み合わせやすい特徴があります。
また、抗酸化作用や抗菌作用などの効果もあることから、美肌効果や免疫力アップといった健康や美容にうれしい効果も期待できます
その一方で、ステビアの花を食べるときも前述したとおり、摂取量には注意して楽しむようにしましょう。
枯れる原因は?
ステビアを育てていると枯れてしまうことがありますが、その原因は何でしょうか?
枯れる原因として考えられるのは、以下のようなものです。
枯れる主な原因 | 補足 |
水やりの不足 | 乾燥に弱いので、水やりを怠ると葉がしおれて枯れてしまいます。 |
水やりの過剰 | 水やりが多すぎると根腐れや病気の原因になりますが、水やりをしすぎると葉が黄色くなって枯れてしまいます。 |
寒さ | 耐寒性がないので冬場は霜や雪から守ってください。寒さに当たると葉が茶色くなって枯れてしまいます。 |
病害虫 | アブラムシやハダニなどの害虫にやられやすいので、定期的に葉をチェックして害虫が見つかったら自然農薬などで駆除してください。害虫に食べられると葉が穴だらけになって枯れてしまいます。 |
以上のように、枯れる原因は様々ですが、基本的な管理をしっかり行えば防ぐことができます。
かかりやすい病害虫と対策は?
ステビアを育てていると病気や害虫にやられることがありますが、その原因と対策は何でしょうか?
かかりやすい病気としては、根腐れや灰色カビ病などがあります。根腐れは水やりの過剰や排水の悪さが原因で、根が腐って枯れてしまいます。
灰色カビ病は湿度の高さや通気の悪さが原因で、茎や葉に灰色のカビが発生して枯れてしまいます。
これらの病気の対策としては、水やりは適度に行い、土が乾いたら水やりをするようにします。また、鉢底に穴を開けて水はけを良くし、風通しの良い場所に置きます。
かかりやすい害虫としては、アブラムシやハダニなどがあります。
アブラムシは茎や葉の裏側に集まって吸汁し、葉がしおれたり穴だらけになったりします。
ハダニは乾燥した環境で発生しやすく、葉の表面に白い斑点を作ったり、細い糸を張ったりします。これらの害虫の対策としては、定期的に葉をチェックして、害虫が見つかったら自然農薬などで駆除するほか、葉水を与えて湿度を保ちます。
以上のように、ステビアがかかりやすい病害虫と対策は様々ですが、基本的な管理をしっかり行えば防ぐことができます。
まとめ:ステビアの育て方について
ステビアは甘味料として人気のあるハーブですが、寒さに弱いために日本では冬に霜に当たると枯れてしまいます。
冬越しする場合は、鉢植えにして室内や温室に移動させるか、マルチング(株元をワラや落葉堆肥、ピートモスなどで覆う)などの防寒対策が欠かせません。(暖かい地方に限り地植えで冬越し可能)
この冬越しさえできれば、ステビア栽培はそれほど難しいことはなく、ステビアの好む環境を整えれば地植えでも室内でも問題なく栽培できるはずです。
また、ステビアは挿し木や水挿しなどの方法で簡単に増やすことができますが、ベストのタイミングの夏から秋にかけて挿し木などで増やしてみても良いでしょう。ステビアを上手に育てて、自家製の甘味料を楽しむのも良いですね。